Database Watch 3月版 Page 1/2
PostgreSQLの開発者が来日し“8.1”の次を語る
加山恵美
2006/3/16
今月はオープンソースRDBMSの「PostgreSQLカンファレンス」とベンダRDBMSの「Oracle Open World」に足を運びました。どちらも有名なRDBMSのイベントでしたが、舞台演出から参加者の顔ぶれまであらゆる意味で対照的でした。
■日本経済の転換点とオラクルのビジョンは交差するか
オラクルは3月1日から3日間、「Oracle OpenWorld Tokyo 2006」を開催しました。250セッションのセミナー、158社の出展企業、述べ1万5000人の来場者という大規模なものでした。これほど大量にセッションが用意されていると、どれを聞くか選ぶのに苦慮した方も多かったのではないでしょうか。でも大丈夫。基調講演のもようはストリーミング配信されていますし、イベント公式サイトにてセッション資料(PDF)のダウンロードも可能です。聞きそこねたセッションは後から資料だけでも入手しておくといいですよ。
イベントの副題は「TURNAROUND JAPAN」。日本経済がデフレを乗り越えて景気回復への転換点を迎えているいま、企業の事業再生にITをどう役立てていくか、そこでどのような製品が有効か、こうしたことを中心にオラクルはメッセージを発信していました。
オラクルが2006年に注力するテクノロジーは4つ。グリッド・コンピューティング、SOA、セキュリティ&コンプライアンス、ビジネス・インテリジェンスです。中でもグリッド・コンピューティングはオラクルでは象徴的な技術といえます。基調講演でラリー・エリソン氏は「オラクルが得意とする高パフォーマンス、高信頼性、低コストはグリッド・コンピューティングだからこそ実現する」と話していました。
またオラクルの製品分野で見ると現在はデータベース、ミドルウェア、アプリケーションといった3層の分野があり、加えてこれらを縦断するようにシステム運用管理の分野があります。オラクルはデータベースの分野では余裕すら見えますが、ミドルウェアについては意欲的です。独立系ソフトウェア・ベンダを対象に「Ready! Fusion Middlewareプログラム」の提供を開始するなど、ミドルウェア系の戦略には熱が入っています。IBMを追い越そうという野心を燃やしているようです。
■オラオラ・ニュース連発
イベントに伴い、多くのニュースリリースが発表になりました。まさにオラオラとニュース連続パンチといった勢いです。目を引かれるニュースも多くありましたが、データベースに関係するニュースを中心に見ていきます。
まずは全製品向けの無期限サポートから。オラクルはデータベース製品を含むテクノロジー製品向けの永続的なサポート・サービス「ライフタイム・サポート・ポリシー」を発表しました。これは原則としてライセンスとサポート契約を保持する限り、全オラクル製品のサポートとアップグレードを無期限に享受できるサービスです。
それから「KeySQL」。Oracle DatabaseのデータをExcelのワークシートに取り込んでSQL文を意識することなく検索や更新ができるものです。発売開始から12年、累計100万本以上を出荷している根強い人気のツールです。オラクルはこのKeySQLの最新版 Release 6.0を2006年3月末から提供を開始するそうです。
またSleepycat Software買収のニュースもありました。Sleepycat Softwareとはオープンソースのソフトウェア企業で、「Berkeley DB」や、それのネイティブXML版の「Berkeley DB XML」などが有名です。このSleepycat Softwareを買収し、オラクルはこれまで「Oracle Lite」と「Oracle TimesTen In-Memory Database」が並んでいた組み込み型データベース群の顔ぶれにBerkeley DBも追加すると発表しました。ところでSleepycat Softwareのロゴにある眠っている猫ですが、日光東照宮の「眠り猫」とよく似ていませんか。
Sleepycat Software買収により、オープンソースでXMLネイティブのデータベースがオラクル製品のラインアップに並びました。オラクルは近ごろオープンソース系の企業を精力的に買収しており、昨年はMySQLの主要なデータベースエンジンである「InnoDB」も買収しました。そうしたことを受け、記者会見ではある記者が「MySQLは買わないのですか?(買おうと思えば)買えるでしょう」と質問すると、エリソン氏は「買収の優先度では最上位ではない」と返事をしていました。ということは、上位のものを買い尽くしたらいつかMySQLも買ってしまう日が来るのでしょうか。
■オラセレブの社交場
オラクルの技術者認定制度の話もありました。現在日本でのORACLE MASTER取得者はもう少しで15万人に届きそうなほどいます。最高峰の証しはご存じのようにPlatinumです。2006年2月17日現在で「ORACLE MASTER Platinum Oracle9i Database」または「Oracle9i Database Administrator Certified Master」の有資格者は全世界で350人、日本では145人いるそうです。このレベルとなるとオラクル技術者の中の技術者、最高峰のオラクル技術者です。
こうした最高峰の技術者限定のコミュニティ「Platinum Club」がこのたび設立になるとか。オラクルの発表によると対象者は「ORACLE MASTER Platinum」取得者、ならびに「ORACLE MASTER」資格推進企業の技術者育成にかかわる責任者だそうです。とても狭き門です。Platinum Clubという名前の響きからすると、入会できたらオラクルのセレブになれそうですね。略してオラセレブでしょうか。Platinum Clubでは企業の枠を超えて交流する場となるそうですが、どんな会話が交わされるのでしょうね。
1/2 |
Index | |
連載 Database Watch 3月版 PostgreSQLの開発者が来日し“8.1”の次を語る |
|
Page
1 ・日本経済の転換点とオラクルのビジョンは交差するか ・オラオラ・ニュース連発 ・オラセレブの社交場 |
|
Page 2 ・セキュリティも考慮して探します ・コンテンツ合戦、マイクロソフトとIBM ・PostgreSQL 8.1とその先 |
Database Watch |
- Oracleライセンス「SE2」検証 CPUスレッド数制限はどんな仕組みで制御されるのか (2017/7/26)
データベース管理システムの運用でトラブルが発生したらどうするか。DBサポートスペシャリストが現場目線の解決Tipsをお届けします。今回は、Oracle SE2の「CPUスレッド数制限」がどんな仕組みで行われるのかを検証します - ドメイン参加後、SQL Serverが起動しなくなった (2017/7/24)
本連載では、「SQL Server」で発生するトラブルを「どんな方法で」「どのように」解決していくか、正しい対処のためのノウハウを紹介します。今回は、「ドメイン参加後にSQL Serverが起動しなくなった場合の対処方法」を解説します - さらに高度なSQL実行計画の取得」のために理解しておくべきこと (2017/7/21)
日本オラクルのデータベーススペシャリストが「DBAがすぐ実践できる即効テクニック」を紹介する本連載。今回は「より高度なSQL実行計画を取得するために、理解しておいてほしいこと」を解説します - データベースセキュリティが「各種ガイドライン」に記載され始めている事実 (2017/7/20)
本連載では、「データベースセキュリティに必要な対策」を学び、DBMSでの「具体的な実装方法」や「Tips」などを紹介していきます。今回は、「各種ガイドラインが示すコンプライアンス要件に、データベースのセキュリティはどのように記載されているのか」を解説します
|
|