Database Watch 4月版 Page 2/2
DBエンジニアに必須の情報源をアップデート
加山恵美
2006/4/15
■イルカとゾウとカメと火の鳥と
コミュニティというと最近ではSNS(Social Networking Site)を連想する人もいるかもしれませんが、オープンソースのコミュニティというと特定のソフトウェアについて興味関心を持つ人の集まりであり、開発の場でもあります。世界中の開発者がメーリングリストで意見を出し合い、Linuxなど素晴らしいソフトウェアが次々と誕生しています。オープンソースのRDBMSはどれも驚くほど長い歴史があり、さらに有名なWebサイトで採用されるなど素晴らしい能力も持ち合わせています。侮れません。
まずはMySQLです。元は1979年にスウェーデンのTCX社で社内向けデータベース開発ツールとして作られたUNIREGが原点にあります。後に軽量なmSQLでUNIREGを刷新し、1995年にはMySQL 1.0が登場しました。以来着々と開発が進められ、昨年はMySQL 5.0の発表がありコミュニティは大いに盛り上がりました。
今年初めにはMySQL日本法人が立ち上がり、日本語の技術情報公開や日本におけるコミュニティ(日本MySQLユーザ会)の活性化を促進することが期待できそうです。ちなみに日本のコミュニティはMyNA(MySQL Nippon Association)なので「マイナ」と呼ばれています。マスコットはイルカです。
次にPostgreSQL、略して「ポスグレ」ともいいます。こちらも長い歴史があります。原点はアメリカのカリフォルニア大学バークレー校で開発されたINGRESです。ここからいくつか枝分かれし、1986年にPOSTGRESと改名したものが現在のPostgreSQLへと進化していきます。枝分かれしてほかの道を歩んでいるものの中にはInformixもあります。昨年PostgreSQLはV8.0とV8.1、2回もメジャーバージョンアップを達成しました。その開発の速さには驚きです。処理速度も見事に向上したと評判です。
さらにPostgreSQLは日本国内のコミュニティが活発であることも特徴です。今年は日本PostgreSQLユーザ会が非営利団体(NPO)として再出発しました。こちらのコミュニティはJPUG(Japan PostgreSQL Users Group)なので「ジェイパグ」と呼ぶようです。ちなみに本家PostgreSQLのマスコットはゾウですが、日本のコミュニティではカメとなっています。実は名前を募集中だそうです。
もう1つ、忘れてはならないのがFireBirdです。日本ではやや目立ちませんが、海外では根強い人気を誇っています。1983年に登場したボーランドの商用InterBaseを起源に持ち、2001年に枝分かれしてFireBirdとなりました。最新版はFireBird 1.5ですが、いまはFireBird 2.0のRC(リリース候補版)をテスト中で正式版はもうすぐ発表になりそうです。
もちろん日本のコミュニティも活動しています。マスコットはその名のとおり、火の鳥です。そういえばブラウザのFireFoxと名前が似ています。実はブラウザのFireFoxは開発の過程で一時はFireBirdという名前が付きましたが、オープンソースRDBMSと同じ名前になるのでいまのFireFoxに変えた経緯があります。さらにその前はPhoenixでしたが他社の商標と衝突してFireBirdに変えたそうです。ブラウザは不死鳥から火の鳥へ、さらに火の鳥から火のキツネへ。燃えている様子からはどれも開発者の熱意が伝わってくるようです。
■商用にもコミュニティ
コミュニティが存在するのはオープンソースだけではありません。商用RDBMSにもコミュニティがあります。近年では開発者が集い情報交換する場を、ベンダ側も加わって支援する動きが活発です。開発者にとって喜ばしいことです。ベンダ側にとってはコミュニティが開発者にとって居心地がよく、情報収集しやすいとなれば競合他社への移動を食い止めることができるという狙いもあるかもしれません。
マイクロソフトのSQL ServerのユーザーグループはPASSJです。オンラインだけではなくオフラインでの講座開催にも熱心で、いつも満員御礼で盛況のようです。
オラクルの公式なコミュニティというとOracle Technology Network(OTN)があります。ここには技術資料が豊富にあります。オフラインでは日本オラクルの支社ごとに地元の名にちなんだ倶楽部があり、そこで交流が行われているようです。例えば北海道なら「どさんこオラクル倶楽部」、北陸なら「ほ!Clickオラクル倶楽部」などがあります。
IBMのDB2となると、DB2 Developer Domainという技術情報ポータルがあります。ここやアメリカのdeveloperWorksなどから理解を深めるための解説資料を入手することができます。
■認定試験で得しよう
最後に技術認定試験も一通り見ていきます。もうすぐ春期の情報処理技術者試験の本番で、テクニカルエンジニア(データベース)も実施されます。テクニカルエンジニアとなるとどれも狭き門ですが、国家試験でありメリットも比較的大きいと考えていいでしょう。合格すると企業から報奨金や技術手当が出る可能性が高く、またスルガ銀行エスイーバンク支店のように合格者に優遇金利を提供する金融機関もあります。
商用RDBMSでも技術者認定制度があります。どれもほぼワールドワイドの認定試験となっています。オラクルのORACLE MASTERは技術者の中で知名度が高く、日本だけでも取得者は15万人近くいます。その最高峰がPlatinumで、試験は2日間みっちりと実技を行い精神的にも体力的にもかなり過酷だそうです。
マイクロソフトの技術者認定プログラムはMCAやMCPなど体系的に組まれています。データベースに関連する試験となると、MCAデータベース(MCA Database)やMCPのマイクロソフト認定データベース アドミニストレータ (MCDBA)があります。MCPの方が上位資格です。6月末までならマイクロソフト資格取得アタックキャンペーンを行っていて、2試験目が無料となります。
IBMにも技術者認定制度があり、DB2ではグローバルマスターがあります。レベルはアドバイザーからアドバンスト・エキスパートまで4段階あり、さらにInfomix試験なども用意されています。
オープンソースRDBMSにも技術者試験があります。PostgreSQLにはPostgreSQL CEがあり、現在はPostgreSQL 7.4.xに対応した資格が2レベル提供されています。最新版 8.0.xに対応した試験はまだ準備中です。MySQL認定試験もありますが、まだ英語版のようです。
ではまた来月、お会いしましょう。
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