Database Watch 7月版 Page 2/2

頑張れニッポン! のデータベースたち


加山恵美
2007/7/18

富士通、Symfoware V9をリリース

 日立のHiRDBに続けて国産RDBMSの話題をもう1つ。2007年5月に富士通はSymfoware V9の提供を発表しました。こちらもV8の発表からほぼ1年です。近年では国産データベース群はほぼ1年間隔でバージョンアップをしているということになりそうです。

 一般的にRDBMSというと製品分野としては目新しさがない領域ですが、HiRDBやSymfowareを見るとXMLやセキュリティなど、技術の進展や社会的な必要性の影響を受けながら着実に進化していることを実感させられます。

 新バージョンとなるV9のポイントは運用性向上とセキュリティの強化にあるといえそうです。まず運用性に関しては、ディザスタリカバリ機能により不測の事態が起きるとプライマリーサイトからバックアップサイトへ運用を継続できるようにします。もしシステムを運用する建物ごと被災した場合でも、別の場所にあるシステムへと運用を継続する道が開けるということです。

 データの同期にはメインセンターで稼働しているデータベースの更新ログから、リアルタイムでバックアップセンターへとデータ転送を行います。富士通独自の論理ログシッピング方式を採用しており、これは特許出願中だそうです。この方式により転送データ量を少なく抑え、ひいてはネットワークへの負荷を抑えることができるようになっています。

 また運用面では同社のSystemwalker Service Quality Coordinatorというシステムの品質や性能を監視するツールとの連携も強化しています。これによりSymfowareの性能が可視化され、より的確に運用の状況を把握し、不測の事態でも素早い対応が期待できます。

 もう1つ、セキュリティ面でいえばコンプライアンス(法令順守)を意識した機能強化が加えられています。特に監査証跡を強化し、誰がどのようなSQLを実行したかなどをログから取得することが可能となりました。

 またHiRDB同様、SymfowareもISO/IEC 15408に準拠していることがアピールポイントとなっています。これは情報技術セキュリティの観点からシステムを評価する国際標準規格で、これに準拠していることは経済産業省の情報基盤強化税制の対象となる条件の1つとなっています。それ故に日本でISO/IEC 15408準拠であることは、製品をアピールするうえで「マストアイテム」となりつつあります。

 なおV9新発売に伴い、富士通のミドルウェア技術者認定制度「富士通ミドルウェアマスター」では新バージョンに対応した試験が始まります。Symfoware V9に関する試験は2007年8月以降に順次開始となります。

オープンソースご三家の近況

 オープンソースの方に目を向けてみましょう。PostgreSQLは前回もお伝えしたとおり、8.3のリリースに向けて着々と準備中です。6月23日に開催された「Open Source Conference 2007 .DB」のアップデートセッションでは、日本PostgreSQLユーザ会の板垣貴裕氏が8.3の目玉は「更新が速い」「性能が安定」「データロードが速い」「VACUUMが手間いらず」とアピールしていました。正式な8.3のリリースが楽しみですね。

 Firebirdは6月30日にFirebird 2.1 Beta 1をリリースし、現在そのテスト中です。Firebird 2.1ではCREATE TRIGGER構文などSQL標準への対応を進め、Fyracle機能を取り込みOracleとの互換性を強化するなど、細かな機能拡張が予定されています。正式版のリリース時期はまだ不透明ですが、「なんとか年内」となる見込みのようです。そのほかのバージョンはFirebird 2.0.2が2007年第3四半期、Firebird 3.0が2008年以降にリリースされる予定です。

 MySQLに関しては少し気が早いですが2007年9月11日から「MySQL Users Conference Japan 2007」が予定されています。当日入場だと有料ですが事前申し込みなら入場料は無料ですので、足を運ぶなら事前申し込みが有利です。事前申し込みはじきに始まるようです。

萌え萌えのMoSQLがお目見え

 加えてMySQLではありませんが、それに近いものとしてMoSQLが興味深い話題となっています。日本MySQLユーザ会はOpen Source Conference 2007 .DBにてMoSQLのバイナリおよびソースコードを公開しました。

 MoSQLはMySQL互換で、デフォルトの文字コードはUTF-8となっているなど日本語の使いやすさを追求した独自のものとなっています。こうしたものが登場する背景には、かねてよりMySQLでは日本語の扱いで苦労があったためでしょうか。

 ちなみにMoSQLは「もえすきゅーえる」と読むそうです。マスコットは「萌」ちゃんです。本家のMySQLではイルカがマスコットですが、MoSQLではイルカに似た姿を持つ日本語がぺらぺらな人魚をマスコットにしたようです。

商用RDBMSの気になる次期版

 米オラクルは7月11日(現地時間)ニューヨークで開催したイベントにてOracle Database 11gを発表しました。11gでは顧客からの要望の強い機能を搭載し、より強力なパフォーマンスを実現しそうです。

 例えば注目を浴びている新機能の1つにReal Application Testing(RAT)があります。これはアプリケーションの検証を自動化する機能で、作業日数の短縮が見込めるそうです。ほかにもクラスタ機能やデータ圧縮機能の強化、またXMLや3次元オブジェクトなど多様な巨大データを格納するOracle Fast Filesなど、11gでは400以上の新機能があります。

 ただし11gの提供開始時期は「Linuxプラットフォーム版は8月」という発表のみです。追って詳しい日程が明らかになることでしょう。来月には11gの詳しい内容とともにお伝えできると思います。

 一方、IBMのDB2からも次期版の話があります。米国のIBMサイトDB2 pureXML technologyでは6月15日からDB2 Viper 2 Open Betaとして、DB2 9の次期版のベータを公開しています。

 最後にマイクロソフトのイベントを紹介しましょう。毎年恒例の「Microsoft Tech・Ed 2007 Yokohama」は8月21〜24日開催となったようです。7月20日までなら早期割引です。お早めに。

 ではまた来月、お会いしましょう。

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 Index
連載 Database Watch 7月版
頑張れニッポン! のデータベースたち
  Page 1
・日立、HiRDB V8.2をリリース
Page 2
・富士通、Symfoware V9をリリース
・オープンソースご三家の近況
・萌え萌えのMoSQLがお目見え


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