Database Watch 8月版 Page 2/2

Oracle Database 11gはどこが新しくなったのか


加山恵美
2007/8/16

データの多様化とセキュリティ

 パフォーマンスに続けて次はデータに焦点を絞ってみましょう。データに関する観点には多様化、セキュリティ、保護などがあります。まずは多様化です。11gでは多くの非定型データに対応できるようになりました。XMLもその1つです。11gではXMLデータをネイティブで格納および操作が可能となるだけではなく、スキーマの有無やデータサイズといった状況に応じてXMLの保存形態を選ぶことが可能になるとオラクルは示しています。さらに医療画像、RFIDタグ、空間的なデータ(3次元の空間情報)までも11gでは統合的に扱えるようになるとオラクルはアピールしています。

 空間的なデータについてはPB(Parsons Brinckerhoff)が11gの3D Spatial機能を試したそうです。ちなみにPBとはインフラ設備の建設を数多く手掛けた実績があり、マンハッタンにあるグラウンド・ゼロ(世界貿易センターの跡地)の再建プロジェクトも手掛けている企業です。PBのような建設会社にとって、3次元の空間情報をいかに効率よく扱えるかどうかは重要です。実際にPBでは大規模な開発を行う際には、3次元のレーザースキャンや画像データなど管理すべきデータが膨れ上がるそうです。

 PBのGeospatial Services Leader、ティム・ケース氏は「Oracle Database 11gの3D Spatial機能は標準規格準拠であり、Webサービスによるアーキテクチャ上において一連の高度な空間機能を実現し、それにより単一のリポジトリに格納された情報を使用して輸送のモデリングや建設のシミュレーションを行うことを可能にします」と述べていました。

 もう1つ、データで重要な話題にはセキュリティおよび内部統制への対策があります。11gの新機能には表領域レベルの暗号化、ハードウェアベースのマスターキー保護、バックアップの暗号化や圧縮が挙げられています。また認証でいえば、Kerberos認証や強固なパスワードへの対応もあります。こうした機能はOracle Database Vaultとの組み合わせで実現していくことになるでしょう。

 最後にデータの保護となる「Oracle Data Guard」機能は、自然災害や人為的ミスなどによるデータベースサーバの障害対策ソリューションです。11gで拡張された機能には、スタンバイ側のサーバに対しリアルタイムのクエリを発行してレポーティングなどの目的に使用できたり、本番データベースへと移行する過程をなだらかに行えるローリング・アップグレードなどがあります。

ベータテストで好評のテスト機能

 さてかなり大回りしてしまいましたが、冒頭のオラクルが「特筆すべき3つの新機能」とした最後の項目「Oracle Real Application Testing」を見てみましょう。これはアプリケーションのテストが飛躍的に簡略化できる機能です。

 まず一般論ですがアプリケーションを開発し、本番稼働するまでには数多くの検証が必要となることは周知のとおりです。例えば数千人規模のユーザーが使用する大規模なアプリケーションの検証を2人の担当者で実施すると、従来はトータルで149日ほどの作業日数が必要になるとオラクルは見積もっています。これにはテスト環境の構築、使用量の見積もり、テスト環境用のデータ生成といった準備段階からテストの実行までの作業をすべて含みます。

 しかしオラクルは11gのReal Application Testingを使えば149日を11日に短縮できると胸を張っています。ここまで作業日数が短縮できるのは、準備段階の作業工程が大幅に圧縮可能となるからのようです。なおこのReal Application Testing機能はベータプログラムの中でも特に好評を博した機能だったそうです。

 さて今回はローンチイベントでオラクルが発表した内容をお伝えしましたが、11gリリースの予定は8月後半となっています。正式なリリースの際には、また新しい話題が提供されるかもしれません。待ち遠しいです。

今後の注目イベント

 先月の7月版で紹介したイベントもありますが、8月後半以降に開催のデータベース関連イベントをいくつか紹介します。事前登録するとお得な場合もありますので、気になるイベントは早め早めに登録しておきましょう。興味深いのはDB2の「Club DB2(ナイトサークル)」とオラクルの「ORACLE Twilight」が定着してきたことです。どちらもエンジニア向けの勉強会兼交流会となっており、仕事帰りに立ち寄れるようになっています。

 ではまた来月、お会いしましょう。

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 Index
連載 Database Watch 8月版
Oracle Database 11gはどこが新しくなったのか
  Page 1
・オラクル創業30周年のコンセプトは「変革の加速」
・さらなる可用性向上へ
Page 2
・データの多様化とセキュリティ
・ベータテストで好評のテスト機能
・今後の注目イベント


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