Database Watch 2008年7月版
solidDB登場でますます熱くなるインメモリデータベース
加山恵美
2008/7/25
いよいよ夏本番、暑くなってきましたね。今月はIBMから登場したsolidDBを皮切りにインメモリデータベースに目を向けてみましょう。
IBMからインメモリデータベース solidDB登場
IBMは6月24日からインメモリデータベース管理ソフトウェア製品「IBM solidDB V.6.1」を出荷すると発表しました(関連記事:IBMが初のインメモリデータベース「solidDB」を出荷 ―@IT)。
その後、7月7日開催の「IBM DB2 Star Festival 2008」ではDB2 on Railsやエンタープライズマッシュアップなどと並んで超高速インメモリデータベース(solidDB)の紹介が目玉の1つとなっていました(関連記事:「DB2 on Rails」も紹介、IBMが考えるDB2の方向性は ―@IT)。
solidDBは、元は2007年にIBMが買収したSolid Information Technologyのもので、IBMとしては初めてのインメモリデータベース製品となります。知名度はさほど高くはないかもしれませんが、海外では携帯電話などの組み込みで普及しています。またOEMでの供給も多く、例えばHPの「OpenView」にも組み込まれています。知らない間にsolidDBに触れたことのあるエンジニアは多いことでしょう。
注目すべきところは、solidDBは単体で組み込みなどに使うほかに、IDSやDB2のキャッシュとして使うこともできるという点です。
類似した製品を挙げるなら、2007年3月から出荷が開始されているオラクルの「Oracle TimesTen In-Memory Database」があります(参考:Database Watch 2007年3月版)。
インメモリデータベースの特性
基本的なことですが、インメモリデータベースとはメモリ上で処理するタイプのデータベースです。これと比較して従来のものを「ディスクベースの」と区別することもあります。
ディスクベースのものと違うのはストレージへのRead/Writeが発生せず、またキャッシュの有無を確認することもないので、処理がとても速くできる点です。よく処理の高速化を実現するために高価で高速なストレージを使うことがありますが、インメモリデータベースならディスクを使わないのですからディスクのI/O速度は問題になりません。ただし、当然ながら扱えるデータ量は物理メモリのサイズに制限されることになるのが特徴です。
solidDBも同様で、データとインデックスをメモリ上に展開するので、応答時間がとても早くなります。一般的にデータベースのチューニングでは、バッファプールを調整することがありますが、インメモリデータベースはバッファプールを使うのとは仕組みが違います。適応領域としてはこれまでディスクのI/Oに時間がかかっていたところが狙い目で、ここにインメモリデータベースを導入すると処理が格段に速くなると期待できます。
そうはいっても、インメモリデータベースも万能ではありません。いくら高速化を狙うとしても、例えば時間がかかっているのがディスクではなくアプリケーションロジックにあるならば、インメモリデータベースに切り替えてもさほど効果は見いだせないかもしれません。また、先に述べたように、物理メモリの制限があります。いくらメモリの大容量化が進んでいるとはいっても、メモリに載る範囲のデータしか扱えません。
キャッシュサーバとしての利用に注目
ただし、です。IDSやDB2のキャッシュとして用いるsolidDBは、テーブルを複数のsolid Cacheインスタンスに分割して複数のサーバにスケールアウトすることが可能です。こうした使い方をすれば、メモリ制限をクリアできるシステムも増えてくることでしょう。
これまでインメモリデータベースというと、組み込み分野での利用が一般的でした。しかし、近年ではIBMのsolidDBやオラクルのTimes Tenのように、大規模な商用データベースのキャッシュサーバとしての用途も目立つようになってきました。
大規模な商用データベースにインメモリデータベースを組み合わせて処理の高速化を図るというソリューションは今後有力な選択肢の1つとして期待できそうです。
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Database Watch 2008年7月版 solidDB登場でますます熱くなるインメモリデータベース |
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Page 1 ・IBMからインメモリデータベース solidDB登場 インメモリデータベースの特性 キャッシュサーバとしての利用に注目 |
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