データウェアハウス用DBエンジンにもなるPostgreSQL
加山恵美
2008/12/16
ニューヨーク証券取引所からケータイサイトまで
11月28日に毎年恒例の日本PostgreSQLユーザ会主催の「PostgreSQL事例紹介セミナー」が開催されました。
いきなり余談ではありますが、最近の金融危機でオープンソースソフトウェアへの関心が高まっているように感じます。PostgreSQLではありませんが、とあるオープンソースソフトウェア関係者が「やはり(オープンソース系プロダクトは)安いですから。商用ソフトウェアと比べると(予算が)1けたは違います。顧客の決裁も早いですよ」と話していました。確かに商用ソフトウェアに比べれば、企業が販売していてもオープンソースソフトウェアをベースにしたものなら格段に値段が安くなります。
ただし注目は高まっていても、まだ導入に慎重なところも少なくありません。端的にいえば「安かろう、悪かろうでは困る」ということでしょうか(決してプロダクトとして悪いわけではありません)。導入をためらう企業が気にしているのが「事例」だそうです。オープンソースソフトウェアに目を付けると、次は「うちと同じようなシステムで導入して成功した会社はあるの?」という質問になるケースが多いとか。オープンソースソフトウェア陣営が最近の金融危機をチャンスに変えられるかどうかは、事例の豊富さと説得力にかかっているのかもしれません。
閑話休題。さて、そんなことを思いつつ、PostgreSQL事例紹介セミナーです。毎年恒例とはいえ、いいタイミングだったかもしれません。もともとPostgreSQLは多機能さに特徴があり、近年では性能強化に力を入れており大規模システムでの導入事例が増えてきています。
セミナーではニューヨーク証券取引所Euronextやフィリピン・ロング・ディスタンス・テレフォンの名前も上がりました。これらのケースは厳密にいえば、Sun DWアプライアンスで、データベースはGreenplum Databaseを使用していますが、Greenplum DatabaseはPostgreSQLをベースとしたDWH用のデータベースエンジンなのです。
PostgreSQLをベースにしているので低価格でありつつも高可用性を実現できています。個人的にはテラバイト当たりの消費電力が120Wしかかからないところに驚きました。エコですね。
次に紹介されたのが、携帯電話向けCGMサイト「フォレストページ」です。月間ページビューは25億、月間ユーザー訪問数200万、ユーザーの8割が10代の女性です。サイトアンケートによると、相当数のケータイのヘビーユーザーが集うサイトです。
質問「1日のケータイ利用時間は?」に対する回答の1位が6〜8時間、質問「(パケット定額にしなかった場合の)パケット代の平均は?」の回答が60〜80万とあり、まさに1日中ケータイに向かっている様子がうかがえます(ほぼ同じ時間、筆者はパソコンに向かっていますが)。
このWebサイトを運営するビジュアルワークスの落水恒一郎氏はPostgreSQLを採用した理由について「当初サイトを開設する際にはどの規模までWebサイトが広がるか見えていなかったため、商用のデータベースを採用することはあり得ませんでした」と話していました。
後にWebサイトのユーザー数やコンテンツが増大し、可用性対策としてSlony-Iを採用したことが述べられました。このSlony-IとはPostgreSQLのコアメンバーが開発した非同期・シングルマスタ方式のレプリケーションソフトウェアです。セミナーではSlony-I導入に関する詳しい検討内容や経緯が語られました。ほかにも医療分野での診断画像、自治体への導入など幅広い分野の導入事例が紹介されました。
Slony-I開発グループが運営するプロジェクトのWebページ話を少し変えて、 、PostgreSQLとオープンソースソフトウェアに関する有益なWebサイトをいくつか紹介しましょう。PostgerSQLの新しいポータルサイト「Let's Postgres」が公開されました。このポータルサイトではPostgreSQLの開発者から導入を決定する人までを対象に、幅広く情報を発信しています。今後さらに内容を拡充していくそうなので、要チェックです。
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