SQL Server 2005 CTPレビュー(CIO編) Page 2/3
HA、BI、64bitは
SQL Server 2005の殺し文句
株式会社システムインテグレータ
石橋 潤一
2005/11/2
パフォーマンス
昨今、ネットワークインフラやクライアント環境の進化によって、ECサイトからERPなどの基幹システムまで各種システムの負荷はますます増大しています。このような状況の中でデータベースには日々の負荷に耐え、いざというときにはシステムを拡張できるようなパフォーマンスとスケーラビリティが求められています。
パフォーマンスという点でSQL Server 2005の大きなトピックは、やはり前述の64bit CPUのネイティブサポートとなります。
一般的な32bit環境では、通常ユーザーアプリケーションが利用できるメモリ空間は2Gbytesまでに制限されています。Windows 2003 Enterprise EditionなどのOSを利用すればより大きなメモリ空間へのアクセスが可能ですが、32bit版のSQL Serverではメモリへのアクセスに制限があり、そのすべてを生かせるわけではありませんでした。
さまざまなデータがデータベースに格納され1つ1つのデータが大きくなる中で、このメモリ空間の制限はシステムのボトルネックともいえる部分でした。SQL Server 2005では64bitのネイティブサポートによってこのような制限は取り払われ、最大512Gbytesという非常に広大なメモリを利用することが可能となります。数Gbytesにも及ぶようなデータにアクセスするアプリケーションを構築する場合は、もはや必須の機能ともいえるでしょう。
スケーラビリティ
64bit環境が魅力的なのは分かるが、システム構築当初はそこまでの規模は必要としない、というユーザーもいるでしょう。このようなユーザーに対しても、SQL Server 2005では十分な拡張性を提供しています。
32bit版SQL Server 2005から64bit版SQL Server 2005へのデータの移行は非常に簡単に行うことが可能です。具体的には、32bit環境のデータファイルをコピーし、64bit版SQL Server 2005の環境でファイルをアタッチするだけで完了します。後は、データベースを利用するアプリケーションの呼び出し部の設定やデータベースユーザーの設定などを行えば、64bit環境に拡張されたSQL Server 2005を利用することが可能です。これまでは、32bitか64bitか、という二者択一の状態でしたが、SQL Server 2005では、当初は32bit環境で運用し必要となれば64bit環境に移行するという選択が可能になります。この拡張性は、大きな利点といえるでしょう。
機能 | Express | Workgroup | Standard | Enterprise |
サポート可能な CPUの最大数 |
1 | 2 | 4 | 制限なし |
サポート可能な RAMの最大数 |
1Gbytes | 3Gbytes | 制限なし | 制限なし |
64bitサポート | Windows on Windows (WOW) |
Windows
on Windows (WOW) |
○ | ○ |
データベースの 最大容量 |
4Gbytes | 制限なし | 制限なし | 制限なし |
表3 エディション別最大プロセッサ数と最大物理メモリの比較(詳細はマイクロソフト社のWebページ「SQL Server 2005エディション別機能比較表」を参照) |
個人情報保護法が施行され、企業データの漏えいや紛失が日常的に報じられる中、個人情報や企業の機密情報が集まるデータベースのセキュリティは、ユーザーにとって死活問題ともいえます。
データベースのセキュリティを検討するうえでは、データの保護とデータベース利用状況の監視といった2方面からの検討が必要となります。
データの暗号化
SQL Server 2000での暗号化対象は、ストアドプロシージャやビューのTransact-SQL定義であり、データそのものの暗号化は行うことはできませんでした。この問題に対し、SQL Server 2005では、対称暗号化や非対称暗号化アルゴリズムなどによるデータの暗号化、復号が可能となっています。
対称暗号化アルゴリズムではRC4やRC2、DESといったアルゴリズムがサポートされ、非対称暗号化アルゴリズムではRAS(Remote Access Service)を利用できるようになっています。セキュリティの強度という点では、非対称暗号化アルゴリズムが勝りますが、暗号化・復号の際にはより大きな処理能力を必要とします。データの暗号化を行う場合は状況に合わせてアルゴリズムを選択する必要があります。
利用状況の監視
SQL Server 2005に標準で付属するSQL Serverプロファイラでは、データベースに対して起こったアクションログの保存と確認を行うことができます。ログインの失敗や成功、データの読み出しや削除をだれがいつ行ったかなど、非常に幅広い事象をトレースすることが可能です。特定のテーブル、例えば「顧客テーブル」をだれが読み出したか、といったトレースを設定しておけば、ログを取ることによるオーバーヘッドを抑えながら、効果的に監査の体制を築くことが可能です。
図1 トレースイベントの選択(クリックすると拡大します) すべてのイベントのログを取得しているとシステムに大きな負荷を与えるため、必要なデータを取捨選択する必要がある。 |
(次ページに続く)
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連載:SQL Server 2005 CTPレビュー(CIO編) HA、BI、64bitはSQL Server 2005の殺し文句 |
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