アーキテクチャ・ジャーナル

デバイスの世界におけるアーキテクチャ上の検討事項

Atanu Banerjee
2008/08/25

ユーザー エクスペリエンスとはどのようなものでしょう。

 デバイスがより一般的になると、Web に接続したデバイスのネットワーク全体にまたがり、インターネットの普及に対応するソフトウェアが必要になります。これが、Tim O’ Reilly によって「単一デバイスのレベルを超えたソフトウェア」として表現された Web 2.0 のコア パターンです。デバイスは複数の物理空間および仮想空間で使用されます ( 下の図 2)。

図 2 : 接続されたデバイスの世界におけるユーザー エクスペリエンスは、複数の物理および仮想空間にまたがります。青色のドットはそれぞれ物理環境 ( 部屋、自宅、職場)、社会環境 ( 友人、家族、同僚)、仮想環境 ( プロファイル ページ、仮想世界、オンライン ゲーム) または購読しているオンライン サービスを表します。

自分に関連するエクスペリエンス

 これらのシナリオのデバイスは通常、通信 ( 電話、電子メール)、コンテンツの収集 ( モバイル サーチ)、コンテンツの消費 ( パーソナル メディアプレーヤー)、健康管理 ( 心拍数モニタ) などに使用します。これらのシナリオにおけるアプリケーション スコープは、ユーザー自身について収集または作成された情報、またはユーザーによって直接消費される情報を中心としています。関連性のある情報には、資格 (Live ID)、連絡先、メッセージ、プレゼンス情報、パーソナル コンテンツ ( オーディオ、ビデオ) などがあります。重要なデバイスのタイプには、携帯電話、スマートフォン、PDA、ウルトラモバイル PC (UMPC)、ラップトップ、ヘルスモニタなどがあります。Bluetooth Personal Area Networks (PAN)、ヘルス センサーなどの接続が必要になります。

ローカル環境に関連するエクスペリエンス

 前述のように、スマート デバイスの急増により、個人の環境とその環境内のコンピューティングデバイスとの間の境界が不鮮明である空間ができます。これは、ネットワーク接続された、センサー内蔵のデバイス (GPS、加速度計、周囲照明センサーなど) などによります。これらのデバイスは、ユーザー コンテキストを認識し、目立たない方法で動作するため、ユーザーは環境によって支援されているように感じます。

 そのような環境の例として、Microsoft Auto ソリューションがあります。このソリューションはユーザーのデバイス ( 携帯電話やポータブル メディア プレーヤーなど) を、運転手の声または自動車のハンドル上のボタンによって操作できる 1 つの車載システムに接続します。Ford Motor Company は 2008 年に Ford Sync というソリューションを展開する予定です。これにより、次世代のモバイル ユーザー エクスペリエンスが可能になります。たとえば、携帯電話で通話中に車に乗り、ハンドル上のボタンを押すことにより、通話を中断することなく Sync に携帯電話を接続できます。また、デバイスによる自動車環境拡張の別の事例として、セキュリティおよび路上支援を提供する OnStar があります。OnStar の場合、車内で、車載のネットワーク ( またはバス) を介して通信デバイスがラジオ、GPS アンテナ、およびマイクに接続されています。

 会議室もデバイスによって機能拡張されています。Microsoft RoundTable は、ビデオ会議カメラとマイクを組み合わせたもので、サウンドとモーション検知を使用して現在の話し手に焦点を移します。話を始める前に、話し手が固定したカメラに向かうために移動する必要がなくなるのでユーザーはデバイスを気にしなくてすむようになります。

 デバイスがユーザーの使用範囲内の他のデバイスや、インターネットベースのサービスと情報を共有することが必要な場合もあり、検出、ハンドシェイク、ユーザー ID やコンテキストについての理解の共有などの問題が持ち上がります。

リモート環境に関連するエクスペリエンス

 リモート環境は、デバイスが情報を収集し動作する空間であるという意味では、ローカル環境と似ています。ただし、リモート環境はデバイスのユーザーの直近ではありません。つまり、ユーザーのリモート環境に関連するシナリオやエクスペリエンスでは、ユーザーは別の場所にあるデバイスに接続したり、それを監視したり、操作したりすることができます。これは、リモートの場所にある環境を、犯罪防止その他の理由で監視したり制御するために行います。たとえば、自宅や職場、または家族( 子供や高齢の親など) をリモートで監視したいと考えるユーザーもいるでしょう。このようなデバイスの単純な例としてベビー モニターがあります。企業は、リモートの場所を監視する必要がある場合があります。このカテゴリでは、RFID デバイスを使用したロジスティックス関連のシナリオが多数あります ( たとえば、偽の医薬品を排除するために使用する、医薬品がサプライ チェーン内を移動する際の電子追跡など)。

ソーシャル ネットワーク関連のエクスペリエンス

 図 3 は、パーソナル コンピュータと同様にモバイル デバイスもソーシャル ネットワークに適合することを示しています。ユーザーは、デバイスを使用して人探しをしたり、そのコンテンツを検索します。また友人や親戚と連携したり、コンテンツを他人と共有したりすることができます。

図 3 : デバイス上のソーシャル ネットワーク

 ただし、デバイスの影響と規模は、パーソナル コンピュータよりもはるかに大きく、社会的な交流も無意識に発生します ( たとえば動き回るユーザーの場合、カメラ付き携帯電話を常に所持しています)。アプリケーションとサービスは、ユーザーの注意持続時間が大きく減少するこのようなシナリオに対応する必要があります。


 INDEX
  [アーキテクチャ・ジャーナル]
  デバイスの世界におけるアーキテクチャ上の検討事項
    1.デバイスがもたらす新しいチャンス
  2.ユーザー エクスペリエンスとは
    3.モビリティ ソリューション アーキテクチャ
    4.デバイス上で実行されるソフトウェア
    5.デバイスをサポートするサービス
    6.まとめ

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