連載:XAMLの基礎知識第2回 XAMLとWPFの関係デジタルアドバンテージ 遠藤 孝信2008/02/15 |
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前回ではXAML版Hello Worldプログラムを作成し、そのビルド方法までを解説しました。今回はHello Worldプログラムをいろいろと修正しながら、XAMLとWPFの関係について探っていきます。
ここでポイントとなるのは、「XAMLの要素はWPFクラス・ライブラリのクラスと対応している」という点です。今回で利用するXAMLの要素と、それに対応したクラスを次の表にまとめておきます。
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今回で利用するXAMLの要素とそれに対応したWPFのクラス |
ボタンの追加
前回のHelloWorldプログラムのように、ウィンドウに「Hello World」のメッセージを出すだけでは少し寂しいので、今回はまず、メッセージの代わりにボタンを追加してみましょう。ボタンは<Button>要素で記述し、その内容がボタンのキャプションとなります。
前回で作成した、ウィンドウを定義しているwin.xamlを次のように書き換えます。
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リスト1 メッセージの代わりにボタンを表示するwin.xaml |
このビルドには前回で作成したアプリケーション定義の「app.xaml」とプロジェクト・ファイル「hello.prj」が必要になります。以下にこの2つを再掲します。
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リスト2 アプリケーションを定義したapp.xaml(再掲) |
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リスト3 プロジェクト・ファイルhello.proj(再掲) |
前回解説したように、以上の3つのファイルのあるフォルダでMSBuild.exeを実行すれば、HelloWorld.exeが出来上がります。リスト1の実行時のウィンドウは次のようになります(以降、すべてWindows Vista上で実行しています)。
ボタンを配置したウィンドウ |
リスト1の<Button>要素では、その属性としてボタンの幅と高さしか指定していませんが、<Window>要素の子要素は自動的にセンタリングされるようになっています。
ちなみに、ボタンを2つ表示しようとして<Button>要素を2つ並べても、ビルド時にエラーとなります。これは<Window>要素が1つの子要素しか持てないためです。次回以降で解説しますが、通常はコンテナとなるパネル系のコントロールを<Window>要素の直下に配置し、その中にアプリケーションに必要なコントロールを配置していくといった形になります。
さて、ボタンは表示しただけでは意味がありません。続いてはボタンが押されたときの処理(ボタンのイベント・ハンドラ)を追加しましょう。
ボタンのイベント・ハンドラ
ボタンがクリックされたらアニメーションを開始するといった動作はXAMLの「イベントトリガ」を使ってXAMLのみで記述できますが、XAMLは基本的にGUIの定義を記述するものであり、イベント・ハンドラやそれに起因するロジックはC#やVBで記述します。
まずXAMLの方を修正して、ボタンがクリックされたときにC#/VBのメソッドが呼び出されるようにしておきます。具体的には、<Button>要素のClick属性に、ボタンがクリックされたときに呼び出されるメソッドの名前を記述しておきます。
さらには、XAMLによるウィンドウの記述から暗黙的に作成されるクラスの名前を指定するために、<Window>要素に対して「x:Class属性」でクラス名を指定します(この属性のプリフィックス「x:」については後述の「[コラム]プリフィックス「x:」について」を参照)。
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リスト4 イベント・ハンドラの指定を追加したwin.xaml |
ここではx:Class属性で「HelloWorldWindow」という値を指定していますので、<Window>要素は最終的にはHelloWorldWindowクラスとしてコンパイルされることになります。
XAMLの要素がWPFのクラスと対応するのであれば、<Window>要素は「Windowクラス」としてインスタンス化されるのではと思われるかもしれませんが、<Window>要素についてはWindowクラスを継承したクラス(子クラス)としてHelloWorldWindowクラスが作成されます。これは従来のWindowsフォーム・アプリケーションで、フォームが実際にはFormクラスの子クラスとしてプログラミングされるのと同じ構造ですね。
また、<Button>要素のClick属性では「HelloWorldWindow_Click」という値を指定していますので、これによりボタンがクリックされたときには、HelloWorldWindow_Clickメソッドが呼び出されます。
以上により、リスト4のwin.xamlからはHelloWorldWindowクラスが作成され、ボタンがクリックされると、そのHelloWorldWindow_Clickメソッドが呼び出されるようになりました。続いては部分クラスを使ってHelloWorldWindow_Clickメソッドを追加します。
[コラム]プリフィックス「x:」について 例えばリスト4では、要素名である「Window」や「Button」や、その属性名である「Width」や「Height」の名前空間は、<Window>要素のxmlns属性で指定されている、 http://schemas.microsoft.com/winfx/2006/xaml/presentation です。これは「WPF名前空間」と呼ばれ、この名前空間に属する要素や属性はWPFのクラス・ライブラリの項目と対応付けられます。 これに対して、<Window>要素で指定するClass属性の名前空間はそれとは異なり、 http://schemas.microsoft.com/winfx/2006/xaml として定義されています。これは「XAML名前空間」と呼ばれ、XAMLのコードを記述するのに必要な要素や属性のための名前空間です。これら2つの名前空間がXAMLで主に使用される名前空間です。 既定の名前空間(XAMLの場合にはWPF名前空間)と異なる名前空間の要素や属性を記述するには、プリフィックスが必要になります。プリフィックスとして用いる文字列は何でもよく、例えば次のように「xaml」などにしてもよいのですが、XAML名前空間用には「x」を付ける決まりになっており、リファレンス・マニュアルなどもその前提で記述されています。
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コードビハインド・ファイルによるイベント・ハンドラの記述
ここではC#/VBを使って、ボタンがクリックされたときのイベント・ハンドラを記述します。ボタンがクリックされたときにはメッセージボックスを表示することにしましょう。
部分クラス(partialキーワード)を使えば、本来は(暗黙的に作成される)HelloWorldWindowクラス内に存在しなければならないHelloWorldWindow_Clickメソッドを、外部から追加できます。そのメソッドを含む部分クラスは次のようになります。
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リスト5 イベント・ハンドラとなるメソッドを含む部分クラス(上:win.xaml.cs、下:win.xaml.vb) |
このクラス定義は、最終的にはリスト4のXAMLの定義から生成されるクラスと合体して実行されることになります。
リスト5を記述したファイルは、GUIを記述したリスト4のXAMLファイルの「コードビハインド・ファイル」となります。通常、ファイル名はXAMLファイルに「.cs」や「.vb」を付けたものにします。
リスト4とリスト5をコンパイルするためにプロジェクト・ファイルも修正しましょう(リスト6)。リスト5のファイルを<Compile>要素により指定する必要があります。
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リスト6 プロジェクト・ファイルhello.proj(上:C#用、下:VB用) | ||
リスト4とリスト5からHelloWorld.exeを作成するためのプロジェクト・ファイル。 |
リスト4〜6の3つのファイルを用意してMSBuild.exeを実行すれば、実行ファイルであるHelloWorld.exeが出来上がります。これを実行して[Click Me!]ボタンをクリックしたときの画面は次のようになります。
[Click Me!]ボタンをクリックしたときの画面 |
INDEX | ||
XAMLの基礎知識 | ||
第2回 XAMLとWPFの関係 | ||
1.コードビハインドによるイベント・ハンドラの記述 | ||
2.ウィンドウをXMALではなくC#/VBで記述 | ||
3.アプリケーション定義をC#/VBで記述 | ||
「XAMLの基礎知識」 |
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