特集 Windows Azure Platform実用に向けて 安い? 高い? Windows Azure Platformの料金体系 デジタルアドバンテージ 一色 政彦2009/12/08 2010/01/12 更新 2010/02/07 更新 | |
|
■Windows Azure Platformの料金体系(Prices)
各購買モデルの料金体系を説明する前に、その前提知識としてWindows Azureコンピュート・インスタンスの種類について説明しておきたい。なお、ここでいうコンピュート(Compute)とは、コンピューティング資源のことである。Windows Azureコンピュート・インスタンスとは、コンピューティング資源となる1つの仮想マシン(=VM:Virtual Machine)を指す。
●4つのサイズのWindows Azureコンピュート・インスタンス
現時点で、Windows Azureコンピュート・インスタンスは次の4種類が提供されている。
4種類のWindows Azureコンピュート・インスタンス |
標準はSmallコンピュート・インスタンスである。 |
※以降、「X-Large」と記述した場合は「Extra Large」を指す。
いずれもOSは、64bit版のWindows Server 2008で、現時点では.NET Framework 3.5 SP1が利用可能だ。それぞれのインスタンスでは、CPUの数やメモリ・サイズなどの違いによりパフォーマンスが異なる(下の表を参照)。当然ながら、どれを利用するかで料金は変わってくる(詳細後述)。
コンピュート・インスタンスのサイズ | CPU | メモリ | インスタンス・ストレージ | I/Oパフォーマンス |
Small | 1個×1.6GHz | 1.75GBytes | 225GBytes | 中 |
Medium | 2個×1.6GHz | 3.5GBytes | 490GBytes | 高 |
Large | 4個×1.6GHz | 7GBytes | 1,000GBytes | 高 |
X-Large | 8個×1.6GHz | 14GBytes | 2,040GBytes | 高 |
各インスタンス・タイプのスペックの違い | ||||
インスタンス・ストレージというのは、ローカル(=インスタンス内)のファイル・システムに格納可能な容量のことである(※Windows Azureストレージとは異なる)。具体的には「Windows Azureクラウド・サービスの配置/運用」で説明したRoleEnvironment.GetLocalResourceメソッドで取得できるキャッシュ領域のことである。 |
●従量課金の料金体系
購買モデルの中で最も標準的な支払い方法が、従量課金である。従量課金における各月の料金は、基本的にクレジット・カードやデビット・カードで支払う(※ただし、事前に請求書払いが承認されている場合には、請求書払い(=口座取引)もあり得る)。
従量課金の標準レートの料金体系は、下の表のとおりだ(※料金表に変更が発生する場合は、その変更の最低30日前には通知される)(マイクロソフトの公式説明ページへ)。
課金対象 | 料金 |
Windows Azure | |
コンピュート(Compute) | |
Smallインスタンス(標準) | 11.76円/時間 |
Mediumインスタンス | 23.52円/時間 |
Largeインスタンス | 47.04円/時間 |
X-Largeインスタンス | 94.08円/時間 |
ストレージ(Storage) | |
GBytesごとに | 14.7円/月間 |
10,000ストレージ・トランザクションごとに | 0.98円/月間 |
コンテンツ配信ネットワーク(CDN) | |
現在CTPとして利用可能なため | 無償 |
SQL Azure | |
Web Edition | |
データベースごとに | 979.02円/月間 |
Business Edition | |
データベースごとに | 9,799.02円/月間 |
AppFabric | |
アクセス・コントロール(Access Control)*1 | |
100,000トランザクションごとに | 195.02円/月間 |
サービス・バス(Service Bus)*1 | |
接続ごとに | 391.02円/月間 |
5接続のパック | 975.10円/月間 |
25接続のパック | 4,875.50円/月間 |
100接続のパック | 19,502円/月間 |
500接続のパック | 97,510円/月間 |
データ転送 | |
北アメリカ地域 | |
受信:GBytesごとに | 9.8円 *2 |
送信:GBytesごとに | 14.7円 |
ヨーロッパ地域 | |
受信:GBytesごとに | 9.8円 *2 |
送信:GBytesごとに | 14.7円 |
アジア太平洋地域 | |
受信:GBytesごとに | 29.40円 *2 |
送信:GBytesごとに | 44.10円 |
従量課金(標準レート)の料金体系(2010年1月12日現在) | |
Windows Azureコンピュートへの課金が発生するのは、(最新の情報によると)Windows Azureポータルにロール・インスタンスが配置(Deploy)されている時間である(※ただし、課金発生は筆者が試して検証したわけではない。正確には、Microsoft Online Servicesカスタマー・ポータルにお問い合わせいただきたい)。 SQL Azure Web Editionは、1GBytesまでのリレーショナル・データベースが利用可能。Business Editionは、10GBytesまでのリレーショナル・データベースが利用可能。 Windows Azureストレージ(Storage)の(2010年1月以降に提供予定の)ドライブ(Drive)ストレージの場合、ローカル・ドライブ・キャッシュを活用する読み取りトランザクションに対しては、当然、課金されない。 データ転送には、コンテンツ配信ネットワーク(CDN)におけるデータ転送量は含まれない。 データ転送の「北アメリカ地域/ヨーロッパ地域/アジア太平洋地域」とは、利用するロール・インスタンスの所在地(=データセンターの場所)を表している(※つまり、どの地域のデータセンターを選ぶかにより、日本に居住しているからアジア太平洋地域というわけではない)。 |
|
*1 2010年4月9日までは課金されない。 *2 「【コラム】オフピーク時間帯の受信(Inbound)データ転送について」を参照。 |
標準レートのほか、パートナー企業向けの割引(Partner Discount)も用意されている。ここでいうパートナー企業とは、Microsoft Partner Networkに参加している企業のことである(Microsoft Partner Networkは、参加費や年会費は無料で、Webで簡単に登録できるので、まだ参加していない企業はいますぐ参加登録するとよい)。
従量課金のパートナー企業向けレートの料金体系は下の表のとおりだ(マイクロソフトの公式説明ページへ)。全体的に5%の割引になっている(※ただし、ストレージとデータ転送は除く)。
課金対象 | 料金 |
Windows Azure | |
コンピュート(Compute) | |
Smallインスタンス(標準) | 11.172円/時間 |
Mediumインスタンス | 22.344円/時間 |
Largeインスタンス | 44.688円/時間 |
X-Largeインスタンス | 89.376円/時間 |
ストレージ(Storage) | |
GBytesごとに | 14.7円/月間 |
10,000ストレージ・トランザクションごとに | 0.98円/月間 |
コンテンツ配信ネットワーク(CDN) | |
現在CTPとして利用可能なため | 無償 |
SQL Azure | |
Web Edition | |
データベースごとに | 930.02円/月間 |
Business Edition | |
データベースごとに | 9,309.022円/月間 |
AppFabric | |
アクセス・コントロール(Access Control)*1 | |
100,000トランザクションごとに | 185.269円/月間 |
サービス・バス(Service Bus)*1 | |
接続ごとに | 371.469円/月間 |
5接続のパック | 926.345円/月間 |
25接続のパック | 4,631.725円/月間 |
100接続のパック | 18,526.90円/月間 |
500接続のパック | 92,634.50円/月間 |
データ転送 | |
北アメリカ地域 | |
受信:GBytesごとに | 9.8円 *2 |
送信:GBytesごとに | 14.7円 |
ヨーロッパ地域 | |
受信:GBytesごとに | 9.8円 *2 |
送信:GBytesごとに | 14.7円 |
アジア太平洋地域 | |
受信:GBytesごとに | 29.40円 *2 |
送信:GBytesごとに | 44.10円 |
従量課金(パートナー企業向けレート)の料金体系(2010年1月12日現在) | |
*1 2010年4月9日までは課金されない。 *2 「【コラム】オフピーク時間帯の受信(Inbound)データ転送について」を参照。 |
●サブスクリプションの内容
予測可能な支払い方法として利用できるのが、サブスクリプションである。サブスクリプションにおける各月の料金は、クレジット・カードやデビット・カードでの支払い、もしくは請求書払いが可能である。ただし、請求書払いを選択するには条件がある。具体的には、初月に米国ドル換算で250ドル以上の支払いが必要となる。
サブスクリプションでは、ある程度の使用量がセットになった「基本ユニット(Base Unit)」を購入する。正式サービス開始時には、開発促進施策(Development Accelerator)として、下記の2種類の基本ユニットが提供される予定だ。これらのサブスクリプションの受け付けは、2010年6月30日までとなっている。
開発促進施策(Development Accelerator)の2種類の基本ユニット(2010年1月12日現在) |
各基本ユニットが提供する機能は以下のとおりだ(※基本ユニットのサービス内容は、サブスクリプション期間中は変更されない。サブスクリプション期間は後述)。
- コア(Core)基本ユニットの提供機能:Windows Azureのコンピュート、ストレージ、ストレージ・トランザクション、データ転送と、AppFabricのメッセージ・オペレーション
- 拡張(Extended)基本ユニットの提供機能:コアの提供機能+SQL Azure Business Edition
それぞれの基本ユニットの月額価格は以下のとおりで、従量課金の標準レートで計算した料金よりも54%もしくは52%オフという割安な料金に設定されている(※米ドル−日本円の為替レート「1ドル−98円」として計算。基本ユニットの価格は、サブスクリプション期間中は変更されない)。
- コア(Core)の月額単価:5,876円(=59.95米ドル)<54%オフ>
- 拡張(Extended)の月額単価:10,776円(=109.95米ドル)<52%オフ>
サブスクリプション(=購読)の期間は、常に6カ月単位になる。6カ月間の期間終了後には、サブスクリプションを契約更新できる。デフォルトでは、サブスクリプションは自動的に更新される。というのも、Microsoft Online Servicesカスタマー・ポータル(MOCP)で自動的に更新するように設定されるからだ(自動更新の設定はいつでも解除できる)。更新時期が来ると、更新される旨がメールで通知される。
更新されたサブスクリプションの基本ユニット価格は、更新時期の従量課金の標準レートを15%割り引いた金額になる予定だ(※従量課金の標準レートは時期により変動する可能性がある)。仮に、更新サブスクリプションの価格を現在の標準レートを使って計算すると、54%や52%引きが15%引きになってしまうため、更新時の2種類の基本ユニットの月額は最初の開発促進施策字の月額よりも当然高くなる(※恐らく、15%引きというのがサブスクリプションの正規料金で、上記の54%や52%引きは開発促進施策による特別な割引ということである)。
- サブスクリプション更新時のコア(Core)の月額単価:10,412.5円(=106.25米ドル)<15%オフ>
- サブスクリプション更新時の拡張(Extended)の月額単価:18,752.3円(=191.35米ドル)<15%オフ>
これらの基本ユニットは複数購入できる。もちろんサブスクリプションの6カ月の期間中に、基本ユニットの数をいつでも買い足すことができる。増やした基本ユニットは、次の請求サイクルで(つまり次月で)有効になる。ただし、基本ユニットを減らせるのは、次回のサブスクリプション更新のときのみであるので、注意してほしい。
注意点として、基本ユニットの使用量制限を超過した場合、その超過分に対して標準レートの従量課金が課される。なおパートナー企業の場合は、パートナー企業向けレートの従量課金になる。基本ユニットに未使用分が残っていても、次月分に繰り越すことはできない。
サブスクリプション期間の最初の30日以内であれば、罰則なしでサブスクリプションをキャンセルできる(もちろん最初の1カ月分の基本ユニット代とその超過分は支払う必要がある)。最初の30日以降にサブスクリプションをキャンセルする場合は、6カ月間の残りの月すべてで基本ユニット代とその超過分を支払わなければならない。
【コラム】従量課金の契約やサブスクリプションの購入を行う方法 |
Windows Azure Platformの従量課金の契約やサブスクリプションの購入は、「Microsoft Online Services カスタマー ポータル」で行える。 まずWindows Live IDに対応するカスタマー・ポータル用のアカウントを作成してログインすると、[サービス]タブの[サービス フィルター]欄の[Windows Azure Platform]からサブスクリプションを購入できる。 なお、請求内容は[ホーム]タブの[アクション]欄の[課金内容の表示]から確認できる(「当月サービス利用料金」がサブスクリプションの基本ユニットの料金で、「利用料金」が基本ユニットを超過した分の従量課金の料金である)。 |
以下では、サブスクリプション購買モデルにおける2種類の基本ユニットそれぞれの内容について見ていこう。
●コア(Core)基本ユニットの使用量制限
コア(Core)基本ユニットの使用量制限は、下の表のとおりだ(マイクロソフトの公式説明ページへ)。
課金対象 | 無償枠の使用量制限 |
Windows Azure | |
Smallコンピュート・インスタンス | 750時間まで |
ストレージ | 10GBytesまで |
ストレージ・トランザクション | 1,000,000(=100万)まで |
AppFabric | |
アクセス・コントロール・トランザクション | 1,000,000(=100万)まで |
サービス・バス接続 | 5接続のパックを1つまで |
データ転送 | |
北アメリカ地域 | |
受信 | 7GBytesまで |
送信 | 14GBytesまで |
ヨーロッパ地域 | |
受信 | 7GBytesまで |
送信 | 14GBytesまで |
アジア太平洋地域 | |
受信 | 2.5GBytesまで |
送信 | 5GBytesまで |
コア(Core)基本ユニットの内容(2010年1月12日現在) |
上記の表を見ると、31日×24時間分(=744時間)よりも多い、月750時間が提供されると記述されている。つまり、Windows AzureでSmallコンピュート・インスタンスを1つだけ、1カ月間ずっと起動できるという時間である。
なお、Small以外のMedium/Large/X-Largeサイズのコンピュート・インスタンスを利用することもできる。そうする場合、そのコンピュート時間は、(課金内容に表示される際には)Smallインスタンスの値に変換される。その変換されたコンピュート時間を計算する方法は、下記の「【コラム】コンピュート時間の計算方法について」を参照してほしい。
【コラム】コンピュート時間の計算方法について | ||||||||||||||||||||||||
すべてのサイズのインスタンスのコンピュート時間は、Smallコンピュート・インスタンスに換算される。Medium/Large/X-Largeサイズのコンピュート時間は、下の表のように、Smallインスタンスの2/4/8倍の時間に換算される。
|
●拡張(Extended)基本ユニットの使用量制限
拡張(Extended)基本ユニットの使用量制限は、下の表のとおりだ(マイクロソフトの公式説明ページへ)。拡張は、前述のとおりコアの提供機能+SQL Azure Business Editionなので、SQL Azure Business Editionの部分だけが異なる。
課金対象 | 無償枠の使用量制限 |
Windows Azure | |
Smallコンピュート・インスタンス | 750時間まで |
ストレージ | 10GBytesまで |
ストレージ・トランザクション | 1,000,000(=100万)まで |
SQL Azure | |
Business Edition | |
10GBytesまでのリレーショナル・データベース | 1つ |
AppFabric | |
アクセス・コントロール・トランザクション | 1,000,000(=100万)まで |
サービス・バス接続 | 5接続のパックを1つまで |
データ転送 | |
北アメリカ地域 | |
受信 | 7GBytesまで |
送信 | 14GBytesまで |
ヨーロッパ地域 | |
受信 | 7GBytesまで |
送信 | 14GBytesまで |
アジア太平洋地域 | |
受信 | 2.5GBytesまで |
送信 | 5GBytesまで |
拡張(Extended)基本ユニットの内容(2010年1月12日現在) |
●追加ライセンスの料金体系
追加ライセンスとは、すべてのマイクロソフトの製品&サービスを一括して購入/調達/請求決済する購買モデルで、ボリューム・ディスカウント(=まとめ買いによる割引)が受けられる。詳細は2010年に明らかになる予定。
INDEX | ||
Windows Azure Platform実用に向けて | ||
安い? 高い? Windows Azure Platformの料金体系 | ||
1.Windows Azure Platformの購買モデル(Purchasing Models) | ||
2.Windows Azure Platformの料金体系(Prices) | ||
3.Windows Azure Platformの割引サービス(Offers) | ||
4.Windows Azure PlatformのSLA(サービス・レベル契約)とサポート | ||
更新履歴 | |||||
|
- 第2回 簡潔なコーディングのために (2017/7/26)
ラムダ式で記述できるメンバの増加、throw式、out変数、タプルなど、C# 7には以前よりもコードを簡潔に記述できるような機能が導入されている - 第1回 Visual Studio Codeデバッグの基礎知識 (2017/7/21)
Node.jsプログラムをデバッグしながら、Visual Studio Codeに統合されているデバッグ機能の基本の「キ」をマスターしよう - 第1回 明瞭なコーディングのために (2017/7/19)
C# 7で追加された新機能の中から、「数値リテラル構文の改善」と「ローカル関数」を紹介する。これらは分かりやすいコードを記述するのに使える - Presentation Translator (2017/7/18)
Presentation TranslatorはPowerPoint用のアドイン。プレゼンテーション時の字幕の付加や、多言語での質疑応答、スライドの翻訳を行える
|
|
キャリアアップ
未来展望台コーナースポンサーからのお知らせ
- - PR -
- - PR -
転職/派遣情報を探す
「ITmedia マーケティング」新着記事
「TikTok禁止」は結局、誰得? どうするトランプ氏――2025年のSNS大予測(TikTok編)
米国での存続を巡る議論が続く一方で、アプリ内ショッピングやAI機能の拡大など、TikTok...
ネットの口コミを参考に8割超が商品を購入 最も参考にした口コミの掲載先は?
ホットリンクは、口コミ投稿の経験や購買への影響を調査した結果を発表した。
「生成AIの普及でSEOはオワコン」説は本当か?
生成AIの普及によりSEOが「オワコン」化するという言説を頻繁に耳にするようになりました...