特集
Windows Azure Platform実用に向けて

安い? 高い? Windows Azure Platformの料金体系

デジタルアドバンテージ 一色 政彦
2009/12/08
2010/01/12 更新
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課金モデル&割引サービスのまとめ/総所有コスト(TCO)の分析

Windows Azure Platformの課金モデルと割引サービスのまとめ

 以上をまとめると、Windows Azure Platformの開始時点では、3つの課金モデルと3つの割引サービスが提供される。課金モデルや割引サービスの配下のオプションも含めると、以下のようになる。

【正式サービス開始時点で利用可能】

  • Consumption:従量課金

  • Subscription:サブスクリプション
    Development Accelerator Core:コア
    Development Accelerator Extended:拡張

  • Introductory Special Offer:初回限定の特別割引サービス

  • MSDN Premium Offer:MSDN Premiumサブスクライバー向けの割引サービス
    Introductory MSDN Premium Offer:期間限定のMSDN Premiumサブスクライバー向け割引サービス
    Ongoing MSDN Subscription Benefits:期間後のMSDNサブスクライバー向け割引サービス

【現時点で日本では利用不可】

  • BizSpark One Offer:BizSpark Oneプログラム向けの割引サービス

【現時点で詳細未発表】

  • Additional Licensing:追加ライセンス

 なお、Windows Azure Platformのサブスクリプション、注文方法、課金などの技術的でない質問については、Microsoft Online Servicesカスタマー・ポータルでメールにより質問できる。

Windows Azure Platformの総所有コスト(TCO)の分析

 以上のような課金体系になっているが、特に従量課金の場合に、「やはりなかなか実際に掛かる費用が想像できない」という人も少なくないかもしれない。そういう人のために、マイクロソフトは「TCO&ROI計算機(TCO and ROI Calculator)」を無償で提供している(なお、TCOは総所有コストのことで、ROIは投資回収率を意味する)。

 TCO算出機能としては、Windows Azure Platformの使用予定を入力していくことで月額や年額のコストを予測できる。ROI計算機能では、Windows Azure Platformとオンプレミスを比較してどれくらい費用の節約が行えるかを予測できる。

 TCO&ROI計算機は、こちらのページ(英語)からWebページ上で実行できる。次の画面は実際に実行してみたところだ。まだ日本語版がないため、ここでは使い方の説明は割愛する。

TCO&ROI計算機(TCO and ROI Calculator)

Windows Azure Platformの使用量制限とSLA(サービス・レベル契約)とサポート

Windows Azure Platformの使用量制限

 標準では、月々で下記の使用量制限が設定される。これらの制限は、すべての利用合計で計算される。これらの制限以上に利用したい場合は、適切な制限値をいつでもカスタマー・サポートに連絡してほしいとのことだ。

制限対象 制限
Windows Azure
 コンピュート(Compute)
  同時実行できる数 20個のSmallインスタンス、
もしくは、その相当時間数のMedium/Large/X-Largeインスタンス(=コンピュート・インスタンス換算レート表を使って算出する)
 ストレージ(Storage)
  同時実行できる数 5個のストレージ・アカウント
 コンテンツ配信ネットワーク(CDN)
  CTP期間中の月間データ転送量 1TBytes
SQL Azure
 Web Edition
  データベース数 150個
 Business Edition
  データベース数 15個
AppFabric
 アクセス・コントロール(Access Control)
  トランザクション数 100,000,000(=1億)
 サービス・バス(Service Bus)
  接続数 500接続
データ転送
 北アメリカ地域
  月間データ転送量 10TBytes
 ヨーロッパ地域
  月間データ転送量 10TBytes
 アジア太平洋地域
  月間データ転送量 3.5TBytes
Windows Azure Platformの月間使用量制限(2010年1月12日現在)

 上記の月間使用量制限を超過した場合、マイクロソフトによりアカウントが停止される可能性がある。実際にそのようなペナルティが下される前に、メール通知など、顧客に対しさまざまな手段による連絡が試みられる。また、料金を支払わなかった場合も、アカウントが停止されることがある。Windows Azure Platformにおいてマイクロソフトが執行可能な権限の詳細については、「資料:Microsoft Licensing Online Services Use Right」(英語)を参考にしてほしい。

各月のサービス・レベル契約(Service Level Agreement:SLA)

 SLAとは、例えばWindows Azureコンピュート・サービスでは、インターネットへの接続性やロール・インスタンスのアップタイム(Uptime:動作可能時間)の割合が月ごとに、ある特定の数値以上であることを保証する契約だ。その保証(=サービス・レベル)が守られない場合には、サービス料金の返金であるサービス・クレジット(Service Credit)が受けられる。

 以下では、2010年1月12日現在のSLAが規定するサービス・レベルと、それに対するサービス・クレジットを表で示す(SLAのサービス・レベルは、サブスクリプションの期間中は変更されないが、サブスクリプションを更新するときには、更新サブスクリプションで最新版のSLAが適用される)。

 各種SLAの最新版は、以下のリンク先からダウンロードできる(SLAは更新されることがあるので、常に最新版を確認すること)。

 まず、Windows Azureコンピュート(Compute)の月間接続稼働時間と月間ロール・インスタンス稼働時間に関するサービス・レベルについて。

 Windows Azureコンピュートの月間接続稼働時間に関するサービス・レベルでは、2つ以上のロール・インスタンスを起動しなければ、このSLAが適用されないことに注意してほしい。つまり1つしかロール・インスタンスを起動していない場合、SLAが適用されないのだ。

月間稼働率 サービス・クレジット
99.95%未満 10%
99%未満 25%
Windows Azureコンピュートの月間接続稼働時間に関するサービス・レベル(2010年1月12日現在)
ここでいう「接続性(Connectivity)」とは、インターネットに面するすべてのロールに対し、データセンターの出口から直近のインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)への接続性を保証するのみで、必ずしも世界中のインターネットから必ずアクセスできることを保証するものではない。

月間稼働率 サービス・クレジット
99.9%未満 10%
99%未満 25%
Windows Azureコンピュートの月間ロール・インスタンス稼働時間に関するサービス・レベル(2010年1月12日現在)

 次に、Windows Azureストレージ(Storage)とSQL Azureの月間稼働時間に関するサービス・レベル。

月間稼働率 サービス・クレジット
99.9%未満 10%
99%未満 25%
Windows Azureストレージの月間稼働時間に関するサービス・レベル(2010年1月12日現在)

月間稼働率 サービス・クレジット
99.9%未満 10%
99%未満 25%
SQL Azureの月間稼働時間に関するサービス・レベル(2010年1月12日現在)

 最後に、AppFabricの月間稼働時間と月間メッセージ処理可能時間に関するサービス・レベルについて。

 AppFabricとは、(PDC09で新たに発表された)「Windows AzureプラットフォームAppFabric」(Windows Azure platform AppFabric:以前は「.NET Services」と呼ばれていた)のことである。現時点で、AppFabricでは「アクセス・コントロール(Access Control)」と「サービス・バス(Service Bus)」の2種類のクラウド・サービスを提供している。

月間稼働率 サービス・クレジット
99.9%未満 10%
99%未満 25%
AppFabricアクセス・コントロールの月間稼働時間に関するサービス・レベル(2010年1月12日現在)

月間稼働率 サービス・クレジット
99.9%未満 10%
99%未満 25%
AppFabricアクセス・コントロールの月間メッセージ処理可能時間に関するサービス・レベル(2010年1月12日現在)

月間稼働率 サービス・クレジット
99.9%未満 10%
99%未満 25%
AppFabricサービス・バスの月間稼働時間に関するサービス・レベル(2010年1月12日現在)

月間稼働率 サービス・クレジット
99.9%未満 10%
99%未満 25%
AppFabricサービス・バスの月間メッセージ処理可能時間に関するサービス・レベル(2010年1月12日現在)

 なお、実際にサービス・クレジットを請求する場合、顧客はカスタマー・サポートに連絡し、請求を行う意思を通知しなければならない。顧客は、インシデント(=保証の不履行)の詳細な説明、発生期間、ネットワーク・トレースルート、影響を受けたURL、ならびに顧客がインシデント解決のために講じた措置など、請求に関する合理的な詳細をすべて、請求の対象インシデントが発生した月の翌月末までにカスタマー・サポートに提出しなければならない。

Windows Azure Platformのカスタマー・サポート&パートナー・サポート

 障害時やSLAのサービス・クレジット請求時には、カスタマー・サポートに連絡を取る必要がある。電話やメールなどによるカスタマー・サポートは、マイクロソフト・カスタマー・サポート&サービスで提供されている。また、その配下のマイクロソフト・サポート・オンラインの下記のリンク先のページでは、Windows Azureに関するサポートが受けられる。

 また、サブスクリプション、注文、課金などに関する質問は、Microsoft Online Servicesカスタマー・ポータルの下記のリンク先のページで投稿できる。

 ちなみにWindows Azure SDKやWindows Azure Tools for Visual Studioのバグ報告や機能要望などを投稿したい場合は、Microsoft Connectの「Visual Studio&.NET Framework Product Feedback Center」を開いて、「Visual Studio 2010」か「Visual Studio 2008」かを選び、バグ報告(Report a Bug)や機能要望(Submit a Suggestion)のページの[Version Currently Used]コンボボックスで「Windows Azure SDK」もしくは「Windows Azure Tools for Visual Studio」を選択すればよい。

 以上、Windows Azure Platformの購買モデル、割引サービス、料金体系について、ご理解いただけただろうか?

 筆者はその全容を理解するのにかなり時間が掛かった。特に「Introductory Special Offer」と「Introductory MSDN Premium Offer」は名前が似ていて分かりにくいし、「サブスクリプション」(購買モデル)と、MSDN Premiumサブスクライバー向けの「MSDN Premium Offer」(割引サービス)は「サブスクリプション」という概念が共通しているため、言葉に惑わされてしまい、なかなか頭の整理が付かなかったからだ。

 要は、これらすべては別物と考えなければならない。もし本稿を読んでもそれがよく分からなかったならば、まずは「課金モデルと割引サービスのまとめ」の節の内容を完全に頭の中に入れてから、もう一度それぞれの項目を読んでみてほしい。

 実運用で使える課金方法のポイントは、以下の3つだ(と筆者は考える)。

  • MSDN Premiumサブスクライバーか?
    → Introductory MSDN Premium Offer(割引サービス)

  • 使った分だけ支払いたいか?
    → 従量課金(購買モデル)

  • セット購入して割安にしたいか?
    → サブスクリプション:コア/拡張(購買モデル)

 サブスクリプションはセット購入になるため、未使用分が多ければ従量課金より高くつくことに注意が必要だ。さらに、サブスクリプションの基本ユニットの使用量を超過した分は、従量課金が掛かることに注意してほしい。逆にいえば、基本ユニット以上に利用するのが確実な場合は、利用枠内分の基本ユニットを購入すれば、費用を割安に抑えられる。サブスクリプションは計画的に利用することが望ましい。

 以上、本稿がWindows Azure Platformの実運用を検討する際の一助になればうれしい。End of Article

筆者による.NET/Azure関連の情報共有ついて

はてなブックマークやTwitterで、主に.NET/Windows Azure開発関連の情報共有を行っています。はてなブックマークでは、主に英語のブログへのリンク共有を行っています。Twitterでは、リンク共有に加え、簡単な投稿も行っています。どちらもフォローしたり、RSSフィードを購読したりできます。


 

 INDEX
  Windows Azure Platform実用に向けて 
  安い? 高い? Windows Azure Platformの料金体系
    1.Windows Azure Platformの購買モデル(Purchasing Models)
    2.Windows Azure Platformの料金体系(Prices)
    3.Windows Azure Platformの割引サービス(Offers)
  4.Windows Azure PlatformのSLA(サービス・レベル契約)とサポート

更新履歴
【2010/01/12】 最新の状況に合わせて、使用量制限の記述を修正しました。

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