特集:ASP.NET 4概説(前編)

ASP.NET開発者のためのVisual Studio 2010新機能

山田 祥寛
2010/06/30
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 2010年4月21日、「Visual Studio 2010日本語RTM版」(以降、VS 2010)の開発が完了した。同日よりMSDNサブスクライバー・ダウンロードで公開されているので、すでに導入されている諸氏も少なくないだろう。さらに6月18日より、一般ユーザーに対するパッケージ販売が開始されているので、いよいよVS 2010への移行にも弾みがついていくことだろう。

 VS 2010の新機能については、「次期Visual Studio 2010と.NET Framework 4.0の新機能」や「現場開発者から見たVisual Studio 2010」などが詳しいので、併せて参照していただきたい。

 本稿では、VS 2010におけるあまたの新機能の中でも、ASP.NETアプリケーション開発に関係する機能にフォーカスして解説を行うものだ。ASP.NETは、ASP.NET 2.0(VS 2005)でサーバ・コントロールが大幅に追加された後、さほどの変化はないままに現在に至っている*1。そうした意味では、VS 2010に含まれるASP.NET 4は、実質、VS 2005以来のメジャー・バージョン・アップであるといってもよい。5年ぶりに変革したASP.NET 4の新機能を、開発環境、ASP.NET本体、そして、周辺ライブラリという点から見ていこう。

*1 ASP.NET 3.5(VS 2008)は、外部ライブラリであったASP.NET AJAXが合流したことを除けば、ほとんど変化のない小幅のバージョン・アップであった。詳細は、「ASP.NETアプリ開発者のためのVisual Studio 2008新機能」を参照。

Visual Studio 2010の新機能

 まずは、VS 2010におけるASP.NET関連の新機能からだ。

初学者にも優しい「スターター・テンプレート」

 次の画面は、[ASP.NET Web アプリケーション]テンプレートでプロジェクトを新規作成した直後の、ソリューション・エクスプローラだ。

プロジェクト作成直後のソリューション・エクスプローラ

 このように、ASP.NET 4のテンプレートには、マスター・ページを始め、JavaScriptファイル(jQuery)、スタイルシート、Home/Aboutページなど、認証機能などなど、アプリケーションに最低限必要な要素があらかじめ含まれている。

 実際、そのままアプリケーションをデバッグ実行してみると、次の画面のような、それなりに見栄えのするトップページが起動するはずだ。

デフォルトで用意されたサンプル・アプリケーション

 もちろん、実際のアプリケーション開発では、これをそのまま利用するわけにはいかないが、最初から動作しているアプリケーションを確認できるというのは、初学者にとって精神的なハードルを下げるものだろう。そもそもデザイン面を考慮しないプロトタイプであれば、スタイルなどはそのままに、コンテンツ本体の作成に注力できるのもメリットだ。

 もしサンプル・アプリケーションが必要ないなら、[ASP.NET 空の Web アプリケーション]あるいは[ASP.NET 空の Web サイト]テンプレートを利用すれば、余計なファイルを含まないプロジェクトを用意することもできる。

HTMLやJavaScript、ASP.NETタグまでをサポート「コード・スニペット」

 コード・スニペットとは、あらかじめ用意されたコードの断片(=スニペット)を、エディタ上で挿入するための機能のこと。もともとはVS 2005で導入された機能であるが、従来の守備範囲はVisual Basic、C#に限定されていた。しかし、VS 2010ではHTMLやJavaScript、ASP.NETタグにまで大幅に拡張されている。

ASP.NETタグの入力にも対応したコード・スニペット

 もともとASP.NETは、できる限りフォーム・デザイナとウィザードで処理を完結させ、HTMLやASP.NETタグを意識させないことに重点を置いたフレームワークだ。しかし、近年、スタイルシートによるデザイン設計は当たり前のものとなり、さらにはAjaxの浸透に伴い、JavaScript開発の比重も増している。このような理由から、昨今の開発には、ASP.NETの考え方そのものがそぐわなくなってきつつあった。

 ASP.NET 4は、そうした近年の傾向に対応したバージョンであるともいえる。コード・スニペットもその一環として考えると分かりやすいだろう。コード・スニペットを利用することで、(例えば)コード・エディタでの作業が中心になるであろうASP.NET MVCのビュー開発などは、大幅に省力化できる。

すっきりと読みやすくなったアプリケーション構成ファイル

 ASP.NET 3.5のアプリケーション構成ファイル(Web.config)は、とにかく複雑で読みにくかった。ASP.NET 2.0以降の追加機能に関する設定が、(Machine.configではなく)アプリケーション構成ファイルですべて吸収されていたためだ。

 これらの設定はデフォルトで適用されるので、自分で設定する手間は不要である。しかし、設定ファイルを編集する際に、誤って関係ない個所まで編集してしまう危険を常にはらんでいた。

 ASP.NET 4では、CLR(Common Language Runtime)のバージョン・アップに伴い、従来、Web.configファイルに記述されていた設定も、新しいバージョン4対応のMachine.configファイルに吸収されている。以下は、[ASP.NET 空の Web アプリケーション]テンプレートで新規にサイトを作成した場合のWeb.configファイルである。

<?xml version="1.0" encoding="utf-8"?>
<configuration>
  <system.web>
    <!---->
    <compilation debug="true" targetFramework="4.0" />
  </system.web>
</configuration>
[ASP.NET 空の Web アプリケーション]テンプレートのデフォルトの構成ファイル(Web.config)

 ターゲット・フレームワークの宣言を含む、最小限の構成になっていることが見てとれるだろう。

 次にサーバ・コントロールの新機能について見ていこう。


 INDEX
  [特集]ASP.NET 4概説(前編)
  ASP.NET開発者のためのVisual Studio 2010新機能
  1.Visual Studio 2010の新機能
    2.サーバ・コントロールの新機能
    3.クライアントサイド開発の変更点
 
  [特集]ASP.NET 4概説(後編)
  ASP.NET 4/ASP.NET MVC/Dynamic Dataの新機能
    1.ASP.NET 4コアの新機能
    2.ASP.NET MVCの新機能
    3.ASP.NET Dynamic Dataの新機能


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