特集:ASP.NET 4概説(前編) ASP.NET開発者のためのVisual Studio 2010新機能 山田 祥寛2010/06/30 |
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■クライアントサイド開発の変更点
前述したように、近年、クライアントサイド開発の重要性はいや増している。以下ではクライアントサイド開発に直接かかわる変更点をまとめた。
ただし、ASP.NET 4におけるそのほかの新機能も、多くが実はクライアントサイド開発を強く意識している。その視点で新機能を概観してみると、ASP.NET 4の特性がよりくっきりと見えてくるはずだ。
●オープンソース・ライブラリjQueryに一層のコミット
クライアントサイド開発のアプローチについては、(マイクロソフトの)当初の予定からやや複雑に推移しているので、経緯をまとめておきたい。
「ASP.NETプログラマーのためのjQuery入門」でも触れたように、2008年9月からマイクロソフトはオープンソースのJavaScriptライブラリであるjQueryを正式にサポートしている*3。jQueryは、JavaScriptライブラリとしては比較的後発の部類であるが、構文のシンプルさと高機能さとが人気を集め、現時点ではJavaScriptライブラリのデファクト・スタンダードといってもよい地位を占めている。
当初、ASP.NET 4はjQueryサポートの第1弾として、従来から提供してきたMicrosoft AJAX Libraryを強化し、jQueryとの連携を強めたASP.NET AJAX Libraryの開発を進めていた。サービスから取得したデータをレイアウト展開するクライアント・テンプレートやデータ・バインディングの機能も、ここで追加されている(参考記事として「ASP.NET AJAX 4.0を予習する」なども参照されたい)。
ところが、この路線に大きな転換があったのが、2010年3月にラスベガスで開催されたWeb制作者向けイベント「MIX 10」である。MIX 10では、jQueryサポートのさらなるサポートが告知され、ASP.NET AJAX Libraryで開発が進められてきた機能の多くが、jQueryプロジェクトに提供されることとなった。これに伴い、ASP.NET AJAX Libraryの利用は実質、非推奨の扱いとなっている。
従来のASP.NET AJAX Libraryがすぐになくなるというわけではないが*4、少なくとも新規の開発ではjQueryの利用を検討すべきであるし、ASP.NET AJAX Library依存のコードも速やかにjQueryベースのものにシフトすることを強くお勧めする。
jQueryベースのクライアント・テンプレートやデータ・バインディングは、現在、提案段階にある。詳細は今後、本格的にリリースが近づいたころに、あらためて解説することにしたい。
*3 冒頭のスターター・テンプレートで作成されたプロジェクトに、標準でjQueryライブラリが含まれている点にも注目してほしい。 |
*4 Ajax Control Toolkitの一部として残されている。ただし、Microsoft Ajax CDN(Content Delivery Network)(後述)からはすでに削除されており、ドキュメントも残されていないことから、暫定的な措置と思われる。 |
●Microsoft Ajax Content Delivery Networkの提供
コンテンツ・デリバリ・ネットワークとは、コンテンツ配信のために最適化されたネットワークのこと。コンテンツを要求するクライアントのネットワーク位置に応じて、最適なキャッシュ・サーバを選択し、コンテンツを配信することで、配信のパフォーマンスを改善できる。
Microsoft Ajax Content Delivery Network(以降、MS Ajax CDN)は、Ajax Control ToolkitやjQuery、ASP.NET Ajaxに含まれる一連のリソース(スクリプト・ファイルやスタイルシート、画像など)を配信するためのコンテンツ・デリバリ・ネットワークである。執筆時点では、利用に当たって特別な制約は見当たらないので、クライアント開発を行う場合には積極的に利用していくとよいだろう。
MS Ajax CDNを利用するには、下記のコードのような<script>タグで直接にインポートしても構わないし、ASP.NET Ajaxを利用しているならば、ScriptManagerコントロールのEnableCdnプロパティをTrueに設定することで、必要なライブラリをMS Ajax CDN経由で取得することもできる。
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jQueryライブラリをCDN経由で利用するコード |
そのほか、MS Ajax CDNで公開されているリソースは、公式サイトのリストを参照いただきたい。
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以上、前編の今回は、ASP.NET 4の新機能を開発環境、サーバ・コントロール、クライアントサイド開発という点から概観した。もちろん、ここで紹介したものが新機能のすべてというわけではない。ここで触れられなかったもの、また、ここで触れたもののより詳細については、今後、.NET TIPSで解説の予定である。
次回は、引き続きASP.NET 4のコア機能、そして、ASP.NET MVC、Dynamic Dataなど周辺技術の新機能について紹介の予定である。
INDEX | ||
[特集]ASP.NET 4概説(前編) | ||
ASP.NET開発者のためのVisual Studio 2010新機能 | ||
1.Visual Studio 2010の新機能 | ||
2.サーバ・コントロールの新機能 | ||
3.クライアントサイド開発の変更点 | ||
[特集]ASP.NET 4概説(後編) | ||
ASP.NET 4/ASP.NET MVC/Dynamic Dataの新機能 | ||
1.ASP.NET 4コアの新機能 | ||
2.ASP.NET MVCの新機能 | ||
3.ASP.NET Dynamic Dataの新機能 | ||
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