Visual Studio.NETファースト・インプレッション
6.Webアプリケーション開発環境として見たVS.NETとC#槙邑 恭介 |
すでに説明したように、Visual InterDevという開発ツールは(少なくとも今回のTech Preview版には)存在しない。これはWebアプリケーションが、プログラミング言語を使って実現するソリューションの1つとしての位置づけに変化していることを表わしている。VS.NET上でC#やVBでWebアプリケーションを作成すると、ASP+によるWebアプリケーションのひな形(テンプレート)が生成される。これをベースにWebアプリケーションを作成していくわけだが、従来のASPベースの開発をどのようにフォローしていくのかについては、今回のTech Preview版ではまだ明らかではない。
ASP+によるアプリケーション作成については、ビジネス・ロジック以降の層がCLRに移されることで、ロジックの記述やデータベース接続などはこれまでよりも容易に実装できるようになっている。ビジネス・ロジックの中からWeb Serviceを利用することで、多階層の分散処理が容易に実現できるようになる。
C#でのアプリケーション作成
C#については、今後、本フォーラムでも詳しく解説する予定なので、ここであらためて詳細を説明することはしない。ただ、C#はCLR上で動作するアプリケーションを記述するためのプログラミング言語のリファレンス的な存在であることには間違いない。そしてVS.NETによって、CLR上で動作するさまざまなアプリケーションの形態が示されたことで、C#を使うべき状況(理由)が鮮明になったように思われる。コンソール・アプリケーションとして“Hello World”と表示するプログラムも、C#というプログラミング言語を紹介する上では重要だが、C#は分散アプリケーションを構築するためのキーとなるプログラミング言語であるように思われる。もちろんコンソール・アプリケーションを作成することも、Windowsアプリケーションを作成することもできる、もっとも応用範囲の広いプログラミング言語だといえる。
終わりに
今回紹介したTech Preview版では、次期バージョンのVisual Studioの操作性や機能の概要と,.NETプラットフォームが実現する具体的なサービスの概要について知ることができた。
.NETフレームワーク(CLR)という共通のプラットフォームを提供することで、あらゆるプログラミング言語による、あらゆるアプリケーションの作成からデバッグまでが1つの開発環境で行えるというのはすばらしいことであるといえる。また.NETフレームワークでは、クラス・ライブラリやユーザーの作成したコードのバージョン管理、セキュリティの管理などを厳格に行うことで、従来からあった、いわゆるDLL地獄(DLLのバージョンの不整合や競合などによって引き起こされる数々の不具合)をなくすことができるという。MFCのバージョンによってアプリケーションの動作が不安定になるといったことは起こらないことになっている。
ただ、ひとつ気になるのは、システム・レベルのクラス・ライブラリの提供のタイミングである。Windows 2000がリリースされてからすでにずいぶん時間が経つが、いまだにMFCがバージョンアップされず、Windows 2000の新機能を利用したければ、Win32 APIを直接呼び出す以外に方法がない。.NETフレームワークのクラス・ライブラリがこのようにならないことを願うばかりである。だからといって、バージョンアップを待ちきれずにUnmanagedなコードを書き始めてしまうと、.NETの意味が半減してしまうだろうから、悩ましいところだ。
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