Visual Studio.NETファースト・インプレッション

6.Webアプリケーション開発環境として見たVS.NETとC#

槙邑 恭介
2000/11/15

Page1 Page2 Page3 Page4 Page5 Page6 Page7

 すでに説明したように、Visual InterDevという開発ツールは(少なくとも今回のTech Preview版には)存在しない。これはWebアプリケーションが、プログラミング言語を使って実現するソリューションの1つとしての位置づけに変化していることを表わしている。VS.NET上でC#やVBでWebアプリケーションを作成すると、ASP+によるWebアプリケーションのひな形(テンプレート)が生成される。これをベースにWebアプリケーションを作成していくわけだが、従来のASPベースの開発をどのようにフォローしていくのかについては、今回のTech Preview版ではまだ明らかではない。

 ASP+によるアプリケーション作成については、ビジネス・ロジック以降の層がCLRに移されることで、ロジックの記述やデータベース接続などはこれまでよりも容易に実装できるようになっている。ビジネス・ロジックの中からWeb Serviceを利用することで、多階層の分散処理が容易に実現できるようになる。

C#でのアプリケーション作成

 C#については、今後、本フォーラムでも詳しく解説する予定なので、ここであらためて詳細を説明することはしない。ただ、C#はCLR上で動作するアプリケーションを記述するためのプログラミング言語のリファレンス的な存在であることには間違いない。そしてVS.NETによって、CLR上で動作するさまざまなアプリケーションの形態が示されたことで、C#を使うべき状況(理由)が鮮明になったように思われる。コンソール・アプリケーションとして“Hello World”と表示するプログラムも、C#というプログラミング言語を紹介する上では重要だが、C#は分散アプリケーションを構築するためのキーとなるプログラミング言語であるように思われる。もちろんコンソール・アプリケーションを作成することも、Windowsアプリケーションを作成することもできる、もっとも応用範囲の広いプログラミング言語だといえる。

終わりに

今回紹介したTech Preview版では、次期バージョンのVisual Studioの操作性や機能の概要と,.NETプラットフォームが実現する具体的なサービスの概要について知ることができた。

 .NETフレームワーク(CLR)という共通のプラットフォームを提供することで、あらゆるプログラミング言語による、あらゆるアプリケーションの作成からデバッグまでが1つの開発環境で行えるというのはすばらしいことであるといえる。また.NETフレームワークでは、クラス・ライブラリやユーザーの作成したコードのバージョン管理、セキュリティの管理などを厳格に行うことで、従来からあった、いわゆるDLL地獄(DLLのバージョンの不整合や競合などによって引き起こされる数々の不具合)をなくすことができるという。MFCのバージョンによってアプリケーションの動作が不安定になるといったことは起こらないことになっている。

 ただ、ひとつ気になるのは、システム・レベルのクラス・ライブラリの提供のタイミングである。Windows 2000がリリースされてからすでにずいぶん時間が経つが、いまだにMFCがバージョンアップされず、Windows 2000の新機能を利用したければ、Win32 APIを直接呼び出す以外に方法がない。.NETフレームワークのクラス・ライブラリがこのようにならないことを願うばかりである。だからといって、バージョンアップを待ちきれずにUnmanagedなコードを書き始めてしまうと、.NETの意味が半減してしまうだろうから、悩ましいところだ。

 

 INDEX
  [特集]Visual Studio .NETファースト・インプレッション
     1.Visual Studio .NETの概要
     2.次バージョンの統合開発環境の概要
     3.Win FormsとWeb Forms
     4.Visual C++でのアプリケーション作成の変化Win FormsとWeb Forms
     5.Visual Basicでのアプリケーション作成の変化
   6.Webアプリケーション開発環境として見たVS.NETとC#


Insider.NET フォーラム 新着記事
  • 第2回 簡潔なコーディングのために (2017/7/26)
     ラムダ式で記述できるメンバの増加、throw式、out変数、タプルなど、C# 7には以前よりもコードを簡潔に記述できるような機能が導入されている
  • 第1回 Visual Studio Codeデバッグの基礎知識 (2017/7/21)
     Node.jsプログラムをデバッグしながら、Visual Studio Codeに統合されているデバッグ機能の基本の「キ」をマスターしよう
  • 第1回 明瞭なコーディングのために (2017/7/19)
     C# 7で追加された新機能の中から、「数値リテラル構文の改善」と「ローカル関数」を紹介する。これらは分かりやすいコードを記述するのに使える
  • Presentation Translator (2017/7/18)
     Presentation TranslatorはPowerPoint用のアドイン。プレゼンテーション時の字幕の付加や、多言語での質疑応答、スライドの翻訳を行える
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)

注目のテーマ

Insider.NET 記事ランキング

本日 月間