連載:IEEE無線規格を整理する(2)
〜ワイヤレスネットワークの最新技術と将来展望〜
標準化が進むRFIDと日本発ucode
千葉大学大学院 阪田史郎
2005/9/15
3. DSRC(専用狭域通信) |
DSRC(Dedicated Short Range Communication)は、1990年代半ば以降標準化が進展した双方向無線通信技術で、ARIBSTD-T75として標準化されている。国内では2001年にITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)におけるETC(Electronic Toll Collection system:ノンストップ自動料金支払いシステム)のための通信手段として利用が開始された。現在は電波が利用されているが、光を用いる方式も開発されており、これが実用化されると、伝送容量が飛躍的に向上し、例えば車の中で観る動画などもリアルタイムに通信することが可能になり、多彩なサービスが展開されるものと期待されている。
DSRCの応用としては、ETCによる自動料金徴収やAHS(Advanced cruise-assist Highway Systems:走行支援システム)と呼ばれる運行管理だけでなく、インターネット接続、音楽や動画のダウンロード、IP電話、駐車場の入出庫管理、ガソリンスタンドやコンビニでの代金支払い、物流管理など自動車が出入りする場所での利用が考えられる。同一スポット内で4〜8台の端末を同時に運用できる。すでに利用事例も多くなっている。
例えばガソリンスタンドにおける応用では、自動車がガソリンスタンドに入ると同時に、ガソリンの残量、タイヤの空気圧、エンジンオイルの状態などの情報を、ガソリンスタンドのDSRC無線機に無線で伝えることが可能となる。DSRCは通信速度が速いため、給油中にカーオーディオに音楽をダウンロードしたり、料金決済も自動的に済ませることができるようになる。
現在のETCは、DSRCアクティブ方式(トランシーバ方式)を採用し、車載器にも発振器が内蔵され、車載器と路側機が対等に電波を発射し合うことができる。このため発振器を車載器に内蔵しないパッシブ方式に比べ、高速かつ大量の情報の授受、高い信頼性の確保が実現され、多様なITSサービスでの利用が可能となっている。
なお、2004年末に無線LANの標準化を行っているIEEE 802.11に、新しいタスクグループIEEE 802.11pが発足し、DSRCの利用を前提とした無線LANベースのITS向け仕様の検討を開始した。
DSRCの国内での主要諸元を表3に示す。
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表3 DSRC(日本)の主要諸元 |
4. NFC(近距離通信) |
NFC(Near Field Communication)は、ソニーとフィリップスが開発し2002年に発表した非接触ICカードと同じ、13.56MHz帯を使う近距離通信技術である。2002年にECMA International(European Computer Manufacturers Association: 欧州コンピュータ工業会)に提案され、ECMA-340として認められた後、2003年にISO/IEC IS 18092として国際標準化された。NFCチップが搭載された機器を双方が特定できる距離に近づけることで、相互に認識し合い情報交換ができる。NFCには、ソニーのFeliCaとフィリップスのMifareの通信方式が含まれており、両者との通信互換性が保証されている。NFCの通信規格を表4に示す。
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表4 NFCの主要な諸元 |
現在の代表的な利用例として、JR東日本のSuica、JR西日本のICOCAにおける、乗車券/定期券の非接触読み取りがある。今後、非接触ICカードだけでなく携帯電話やPDA(Personal Digital Assistants)を、PCやインターネット端末などにかざすだけで個人情報にアクセスできるような応用として、公共交通機関でのプリペイドカードとしての利用に加え、電子マネー(決済の承認)、社員証・学生証、建物・部屋の入退管理、デジタルカメラやオーディオ機器の制御などが考えられている。
非接触ICカードの標準としては、ISO/IEC 18092以外にもISO/IEC 14443、 ISO/IEC 15693もあるが、近年これらはRF-IDで用いられるUHF帯(900MHz)や2.45GHzに比べると生体への影響が少ないことや、10cm程度の通信距離はプライバシー保護に適している観点から、「人の識別」用として注目されている。
5.RF-ID |
RF-ID(Radio Frequency-Identification:無線移動識別)またはRF-IDタグは、電子化された一方の情報をもう一方に正確に電子データを引き出したり、引き渡したりする手段で、ICタグや無線タグ、電子タグなどと呼ばれることもある。RF-IDの技術は、第2次世界大戦中に米国で敵と味方の戦闘機の識別用に開発されたレーダ技術の応用といわれている。その後、基本技術が1970年代に民間に開放され、1980年代以降国内においても工場内での部品管理の自動化ツールとして活用されてきた。現在のRF-IDは、2001年以降、インターフェイスの標準化、機器の小型軽量化、低価格化に伴い、ユビキタスネットワークのキーデバイスとなって急速に注目を集め、ユビキタスネットワーク技術の象徴として実用化が進展している。
(1)RF-IDの特徴
さまざまな商品(農作物・畜産物の食品、衣料、薬品、家具、文具、玩具、書籍など)や動物(家畜など)、人に装着して利用されている。RF-IDは、繰り返しの読み込みと書込みが可能で、悪条件での耐久性を持つため、商品を追跡する技術(トレーサビリティと呼ばれる)が注目されている。トレーサビリティは、商品の生産地から流通機構を通して消費者に届き実際に消費されるまでのライフサイクルを管理することを可能にし、盗難発見や食品衛生、環境リサイクルなど、人々の生活にも多くの利便性を提供する。
RF-IDタグの特徴を表5に示す。
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表5 RF-IDの特徴 |
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目次:IEEEを整理する(2) | |
1. 特定小電力無線/2. 微弱無線 | |
3. DSRC(専用狭域通信)/4. NFC(近距離通信)/5.RF-ID/(1)RF-IDの特徴 | |
(2)RF-IDの仕様概要/(3)IDとその標準化動向(EPCグローバルとユビキタスIDセンタの比較) |
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