連載:IEEE無線規格を整理する(2)
〜ワイヤレスネットワークの最新技術と将来展望〜
標準化が進むRFIDと日本発ucode
千葉大学大学院 阪田史郎
2005/9/15
5.RFID |
(2)RFIDの仕様概要
RFIDを用いた既存のシステムは、
・ RFID: 人や車だけでなく荷物、商品などのあらゆるモノに搭載 ・ RFIDリーダ/ライタ: RFIDタグとの無線通信による、タグ情報の書込み、読み取り。スキャナ、コントローラ、インテロゲータなどとも呼ばれている。 ・ コンピュータ: リーダ/ライタをコントロール ・ データベース: タグのIDや読み取り情報、センサ情報を管理 |
で構成される一種の無線通信システムである。図1にRFIDの構造と動作を示す。
図1 RFIDの構造と動作 |
さらに、RFIDは、情報を記憶するICチップ(メモリ)とリーダ/ライタとの無線を送受信するアンテナから構成され、RFIDリーダ/ライタはRFIDタグとの送受信を行うためのアンテナとコンピュータからの命令を処理するコントローラから構成される。
RFIDには、RFIDがリーダ/ライタから送出された搬送波に情報を載せて反射することにより通信を行う反射型RFIDと、RFID内に搬送波の発振器と電池を搭載し、自ら電波を発信するアクティブRFIDの2種類に大別される。反射型RFIDで、電池を搭載していないものを反射型パッシブRFID、電池を搭載しているものを反射型セミパッシブRFIDと呼ぶ。
RFIDタグの分類としては、
・利用する無線周波数 - 135kHz(長波帯) - 13.56MHz(NFCと同じ) - UHF(900MHz付近の帯域) - 2.45GHz(ほとんどの国で共通に使用できるISM (Industrial, Scientific and medical)バンド) ・バッテリーの有無 - アクティブ(電池あり) - パッシブ(電池なし) ・ICチップ(メモリ) - Read Only - Write Oce - Read Write ・通信方式 -電磁誘導方式 -電磁結合方式 -電波方式 -光 |
などがある。最近、電磁波ではなく光IDも注目され始めている。PLC(Power Line Communication:高速電力線通信)の規制緩和により、電力線につながる照明器具に光(近紫外線や可視光線)の変調と復調の機能を持たせ、その照明器具の下にあるモノに取り付けられた光IDと通信を行うものである。光IDは電池搭載型で通信距離は数十cmである。
周波数の分類による各特性を表6に示す。現在日本では13.56MHzが主流となっており数多く製品化されている。
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表6 RFIDの周波数別の特性 |
(3)IDとその標準化動向
RFIDには、UID(Unique Item identification)と呼ばれるタグを一意に識別するための読み取り専用のIDと、利用者が書き換え可能なユーザー領域(最大8KB程度)がある。このUIDに関する国際標準がEPC(Electronic
Product Code)である。EPCの標準化は、EPCグローバル(旧Auto-IDセンタ)によって推進されている。Auto-IDセンタは、1999年に自動認識技術のプロジェクトとして米国のMIT(Massachusetts
Institute of Technology)に設立された。その後Auto-IDセンタは、2003年に発展的解消を遂げて、ビジネスへの導入と研究開発の2つの役割に分かれることになり、前者のビジネスへの導入とそれに関連する標準化の活動を行う非営利組織(NPO:Non-Profit
Organization)として、EPCグローバルが設立された。
EPCグローバルによるRFIDタグのシステムはEPCネットワークと呼ばれ、 その構成と動作を図2に示す。図2の各要素の機能は以下のとおりである。
図2 EPCネットワーク(旧オートIDシステム)の構成と動作 |
・ ONS(Object Name Service): インターネットにおけるDNS(Domain Name
Service)と同様の手順でEPCをIPアドレスに変換する。Savantサーバからの問い合わせに対して、PMLファイルの格納されているアドレスを通知する。 ・ PML(Physical Markup Language): XML(eXtensible Markup Language)に基づく、製品に関する情報を記述するための言語。 ・ Savant: 分散環境で動作するEPCネットワークの基盤となるミドルウェア。EPCを基にONSサーバ、PMLサーバと通信を行う。リーダからの複数の質問に対し、IDのチェック、データのスムージング、タスクのスケジューリング・管理など、イベントマネジャーの機能を果たす。 |
図3に96ビット版EPCのフォーマット概要を示す。EPCグローバルでは、EPC256(可変)についても検討中である。
図3 96ビット版EPCのフォーマット |
なお、国内ではEPCグローバルのほかに、YRP(Yokosuka Research Park)ユビキタスネットワーキング研究所のユビキタスIDセンタにおいて提唱されている、商品に限らずあらゆるものを対象としたucodeがある。ucodeはRFID以外に、アクティブチップ、IDチップ、バーコード、ICカードなども対象としている。ucodeは128ビット長のフォーマットで、128ビット単位の拡張が可能となっている。EPCの他に、JAN(Japanese Article Number)、UPC(Universal Product Code)、EAN(European Article Number)、ISBN(International Standard Book Number)などの既存の各種IDコードを格納できるメタコードの扱いが可能としている。
表7にEPCグローバルとユビキタスIDセンタの主な仕様の相違を示す。
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表7 EPCグローバルとucodeの比較 |
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目次:IEEEを整理する(2) | |
1. 特定小電力無線/2. 微弱無線 | |
3. DSRC(専用狭域通信)/4. NFC(近距離通信)/5.RFID/(1)RFIDの特徴 | |
(2)RFIDの仕様概要/(3)IDとその標準化動向(EPCグローバルとユビキタスIDセンタの比較) |
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