特集:Voice over Wireless LANの実現
無線IP電話の音質を左右する機器の選び方
小宮 博美アルバ・ネットワークス
2004/11/20
無線IP電話をサポートする新製品が多く見られるようになってきた。Voice over Wireless
LAN(VoWLAN)をの実現には、どのような社内ネットワークが必要なのだろうか。「無線IP電話の思わぬ落とし穴」と題した前編では、VoWLANを実現するための注意点を説明した。 |
無線QoS |
無線IP電話が送受信する音声パケットは、遅延が大きくなると音声品質が悪くなる。データと混在するような環境では、遅延が音声品質に影響しないようQoS制御を行う必要がある。先進の無線LANシステムでは、アクセス・ポイントが無線側のプライオリティ制御を行い、有線側にはTOS、 802.1pを使いほかの機器と協調してプライオリティ制御を行う。
図4にVoWLANとデータの混在環境におけるQoS効果のテストの結果を示す。
図4 VoWLANの環境例 QoS効果テスト……2台の無線IP電話のうち1台にのみQoSを設定、同時に同一の有線IP電話へ電話をかける。この状態でトラフィック・サーバ、クライアント間でデータを送受信し負荷を発生させる。QoSが設定されている無線IP電話では負荷の影響を受けないが、QoSが設定されていない無線IP電話では負荷の影響を受け相手の音声が聞こえなくなる |
図中のグラフを見て分かるとおり、QoS設定を行うとデータ・トラフィックに影響されることなくVoWLAN通信が行える。QoS設定なしの無線IP電話では、データ・トラフィックの負荷に影響され、負荷発生中では相手の音声が聞こえなくなってしまう。ただし、電波は届いているため、接続が切断さえたわけではなく、負荷がなくなれば相手の音声が聞こえるようになる。
QoSあり(トラフィック:AP→クライアント) |
QoSなし(トラフィック:AP→クライアント) |
図4 VoWLAN QoS効果テスト |
現時点では、各無線LANシステムで独自の機能によりQoS制御を行っているが、802.11eが標準化されれば標準ベースでQoS制御が可能になる。
無線IP電話の接続制御 |
無線IP電話では、遅延でも音声品質は悪化するが、1台のアクセス・ポイントに許容量を超える無線IP電話が同時に通話を行っても品質は悪くなる。一般的な数値として、1台のアクセス・ポイントで同時に12台(通話)までは品質の良い通話ができるが、この台数を超えると音声品質が劣化し、ぷつぷつと音声が途切れてしまう。
しかも12台を超えた無線IP電話の音声品質が劣化するだけではなく、同じアクセス・ポイントに接続しているすべての無線IP電話の音声品質が劣化する。無線LANシステムでは、このような事態にならないよう、無線IP電話の接続を分散させるAPロードバランス機能(図5)や、最大接続数の制限などを設定できるようになっている。
図5 無線IP電話の接続制御……無線LANシステムが無線IP電話を自動分散 |
さらに上記の機能に加え、無線IP電話の発呼/着呼で制御するコール・アドミッション制御機能の実装を予定している無線LANシステムもある。このような機能が実装されれば、会議室のような限られたスペースに多くのユーザーが集まる場所でも音声品質を劣化させることなく無線IP電話を利用することができる。
RF管理/シームレスなローミング |
目次:Voice over Wireless LANの実現 | |
IP電話実現のための最低必須条件とは? | |
RF管理/シームレスなローミング | |
無線QoS/無線IP電話の接続制御 | |
無線IP電話の選択/無線LANシステムの選択 |
「Master of IP Network総合インデックス」 |
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