連載:アニメーションで見るパケット君が住む町(5)
「インターネットに接続する」ってどういうこと? PPPの仕組み
Roads to Node
2009/8/12
世界最大のネットワーク、インターネットはどのようになっていて「インターネットに接続する」というのはどういうことなのか。また、WANはどのように作られているのか、WANで使われるPPPの仕組みについて説明します
今回はインターネットの構造と、WAN(Wide Area Network)の仕組みについて説明します。世界最大のネットワーク、インターネットはどのようになっていて「インターネットに接続する」というのはどういうことなのか。また、WANはどのように作られているのか、WANで使われるPPPの仕組みについて説明します。
5 都市間交通事情
連載第3回「トラックに積む運送票から『アドレス解決』を学ぼう」、第4回「スイッチ登場! 市内ジャンクションの交通整理」ではトラックで荷物を運ぶ「市内」での配送について説明しました。市内ではイーサ配送君、スイッチ君らが「ビル名」による場所の特定、トラックの衝突事故を防ぐルールなどを設けて荷物を運んでいました。今回は、これらの「市」をつなぎ、インターネット世界で荷物をやりとりする方法についてお伝えします。
5-1 「市」と「地域」でインターネット世界
パケット君「どうもね、勘違いしている人が多いみたいなんだよね」
いきなりですね。何がでしょうか?
パケット君「このインターネット世界に世界すべてをつないだ交通網があって、それで荷物が運ばれているっていう勘違い」
ああ、それは確かに間違いではないですが、合ってもないですね。 インターネット世界は、「市」の集合体である「地域」の連合体ですよね。
パケット君「そうそう、その地域が共通のルールで相互に荷物をやりとりしているだけなんだよね。」
そういうことです。
インターネット世界すべてをつなぐ道路や線路があるわけでなく、地域間の交通によって運ばれているわけです。 なので、「市」の集合体である「地域」の連合体、というわけです。 ただし、これらの市はすべて共通の「荷物運輸」のルールで動いていないとダメですよ。
図5-1 インターネット世界の構造 |
皆さんの家も、このインターネット世界のどこかの地域の中にある市に属しています。つまり、インターネット世界の一員ってことですね。
パケット君「インターネット世界のどこかに荷物を送りたいなら、自分もインターネット世界の中にいないと駄目ってこと」
インターネットに接続と聞いて、どのようなものを想像しますか?
世界のどこかに世界中を結んだネットワークがあり、プロバイダに頼むとそこへ接続してくれる、というイメージでしょうか。
それは一部は正しいですが、誤りでもあります。
インターネットは世界中のネットワークの集合体です。世界中のさまざまなネットワークをつなぎ、相互に(inter)ネットワーク(network)間でのデータのやりとりを可能とします。
このインターネットを形成するネットワークですが、企業や研究所、大学、政府機関などのネットワークなどが当てはまります。これらのネットワークは、いくつかのコンピュータのグループから成り立っています。ちなみにこのグループもネットワークと呼ばれます。
ややこしい話ですが、最小単位のネットワーク(コンピュータのグループ)をまとめて、ネットワークのグループが作られます。このグループは1つの組織において管理運営されています。この組織が、企業、研究所、大学、政府機関などです。この組織単位でのネットワーク(のグループ)は、AS(Autonomous System:自律システム)と呼ばれます。
なお、これらのネットワーク、そしてASはTCP/IPプロトコルでデータのやりとりをしています。
つまり、個々のコンピュータのグループの集合体がASです。そして、このASの連合体がインターネット(the Internet / INTERNET)です。
インターネットとは、「インターネットというネットワークがある」わけではなく、「ネットワークの集合体がインターネットと呼ばれている」ということになります。
ASはAS同士、またはIX(Internet eXchange)と呼ばれる接続点を使って接続しています。
図5-2 インターネットとAS |
ASには番号(AS番号)が割り振られています。このASの番号でASを識別します。AS番号を使ってインターネット内のルーティング(経路の選択)を行い、さらにAS内部でもルーティングを行います。これにより、パケットはあて先まで届くことになります。イメージでいえば、まずあて先の国までの道筋を決めてその国まで運び、さらに国内であて先までの道筋を決める、という感じです。
では「インターネットに接続する」というのはどういうことなのでしょうか?
「インターネットに接続する」ということは、自分のパソコンから、インターネット上のどこかにあるサーバとパケットをやりとりする、ということです。インターネットはASの集合体ですから、パソコンやサーバはこのASの中のコンピュータのグループの中の1台でなければいけません。
皆さんが「インターネットに接続する」ためにはプロバイダ(Internet Service Provider:ISP)を利用しますが、プロバイダはASです。つまり、「プロバイダに接続してインターネットに接続してもらう」といいますが、これは「プロバイダのコンピュータのグループの一員になる」ことなのです。
これにより、AS内のコンピュータとなったあなたのパソコンは、ほかのASのコンピュータとやりとりができるようになります。
これが「インターネットへ接続する」ということなのです。「インターネットへ接続」といっていますが、実際は「インターネットを構成するASを構成するネットワークを構成するコンピュータグループの一員になる」こと、というわけですね。
図5-3 インターネットに接続する |
5 インターネット世界の都市間交通事情 | |
5-1 「市」と「地域」でインターネット世界 | |
5-2 都市間をつなぐステーション | |
5-3 PPP駅員のお仕事 5-4 おさらい 〜 実際のネットワークに当てはめると |
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