連載:アニメーションで見るパケット君が住む町(5)
「インターネットに接続する」ってどういうこと? PPPの仕組み
Roads to Node
2009/8/12
5-3 PPP駅員のお仕事
さて、線路とステーションの話が出たので、出番待ちの人がいますね?
PPP駅員「はいっ、待っておりました」
じゃあ、PPP駅員君に自分の役割を語ってもらいましょう。
PPP駅員「自分の役割は、列車の運行を管理することです。具体的には線路がちゃんとつながっているか、列車がちゃんと走っているか、届いた荷物に荷崩れはないかなど、確実に次のステーションへ荷物が届くことを確認します」
なるほど。さすがにトラックで荷物を市内に運ぶのとは違い、遠くまで運ぶことが仕事なのでしっかりとしていますね。正直にいって、イーサ配送君はトラックが出発したらあとはお任せ、ですからね。まぁ、近距離がメインのトラック運輸はそれでも問題ないですが、遠距離だと問題がありますからね。
PPP駅員「ほかにも、あて先のステーションとのPPP駅員君に対し、こちらの身元を証明したりします。さらに……」
ちょっとストップ。
PPP駅員君は、あて先のステーションへ荷物を送る前に、こちらの身元を証明することを行うんだね。それにより、見知らぬ人間が荷物を送り付けるわけじゃないってことを証明しないといけないわけだ。
つまり、PPP駅員君は、次の手順で荷物を送るわけだね。
1. 線路がつながっていることを確認
2. こちらの身元を証明
3. 荷物を送る
4. 荷物の終了を伝える
PPP駅員「そうなります。ほかにも荷物の圧縮や、機密保持、線路の状態確認なども行います」
図5-6 PPP駅員君の役割 |
PPP駅員君はいろいろなことができるってことだね。
実際、PPP駅員君はもともと古いタイプの列車の運行が仕事だったんだけど、その仕事の出来っぷりから新しいタイプの列車や、そのほかの仕事などにも対応できるようになっている、優れた駅員なんだよ。
PPP駅員「照れるであります」
WANでの通信にはPPP(Point-to-Point Protocol)が主に使用されます。
PPPはもともとは、ダイヤルアップ接続と呼ばれる、電話回線による接続のために作られたプロトコルでしたが、その多機能で使いやすいところから、ほかの回線でも利用されています。
専用線による接続にも使われていますし、ADSL、FTTHで使われているPPPoE(PPP over Ethernet)、PHSによるPIAFS(Personal Handyphone System Internet Access Forum Standard)、無線LANなどで使われているIEEE 802.1X認証機能で使われているEAP(Extensible Authentication Protocol)などもPPPを利用しているPPPの仲間です。
PPPは2つのプロトコルからなります。1つがLCP(Link Control Protocol)です。これはPPPによる接続とその維持、解放を管理するプロトコルです。このLCPによるPPP接続(リンク)により、IPなどのデータを運びます。このIPなど上位レイヤのパケットを制御するのがNCP(Network Control Protocol)です。
NCPは使用する上位レイヤごとに存在します。IPの場合はIPCP(Internet Protocol Control Protocol)です。
図5-7 PPPの動作 |
PPPはLCPとNCP以外にも、オプションとして認証、圧縮、暗号化、リンク監視などの機能を持っています。この中で覚えてほしいのは、認証機能です。
認証にはPAP(Password Authentication Protocol)とCHAP(Challenge Handshake Authentication Protocol)の2種類があります。
認証により、プロバイダのルータに接続する際に、プロバイダと契約しているユーザーなのかということを確認することができます。
図5-8 PAPとCHAP |
5-4 おさらい 〜 実際のネットワークに当てはめると
今回の話、都市間の交通事情をまとめてみましょう。 まず、インターネット世界は、都市の集合体である、地域の連合体であるってこと。
そして、インターネット世界の物流のためには、都市と都市をつなぐ交通が必要であるってこと。
都市と都市は、ステーションによって結ばれていて、ステーション間は主に線路や高速道路を使ってつながっているってこと。
線路や高速道路を利用するためには、運送料を払わなければいけないということだね。
最後に、線路による列車の運行管理はPPP駅員君が行っている、ということ。 この3点だったね。
パケット君「都市内の交通、トラック輸送はイーサ配送君。都市間の交通、列車輸送はPPP駅員君ってことだね」
そういうこと。
時代の進化により、特に都市間交通は進化しているけれど、基本を忘れないでほしいな。
さて、世界最大のWAN、インターネットの仕組みから始まって、WANの仕組み、WANで使われているプロトコルであるPPPを説明してきました。
WANは現在ではかつてのような低速・低品質(エラー発生率が高い)のサービスではなく、高速・高品質のサービスに進化していっています。
また、ダイヤルアップ接続の従量制(接続時間に応じて金額が掛かる)から、ADSL、FTTHのような常時接続の定額サービスが一般的になっています。
これらのおかげで、かつてはLANでのみ行えるサービスなども、インターネットを使ったWANで受けることができるようになってきています。
さて、第3回・第4回・第5回と主にレイヤ1・2のLAN・WANでの回線がらみの説明を行ってきました。
これから先の第6回以降、つまりレイヤ3以降は、これらのLAN・WANによって運ばれるデータを使ってどのように「あて先まで届ける」か。「届いたデータをどのように扱うか」という話が中心となります。
レイヤ3以降の話でも、第3〜5回で説明した内容によってデータが運ばれている、ということを忘れないでください。
さて、次回は。
パケット君「僕が主役だよっ!! 僕の活躍ぶりにこうご期待!!」
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5 インターネット世界の都市間交通事情 | |
5-1 「市」と「地域」でインターネット世界 | |
5-2 都市間をつなぐステーション | |
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5-3 PPP駅員のお仕事 5-4 おさらい 〜 実際のネットワークに当てはめると |
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