Master of IP Network
第5回 読者調査結果発表
〜IP時代の広域ネットワークサービスとIPv6導入状況を探る〜
小柴豊
アットマーク・アイティ マーケティングサービス担当
2002/1/18
企業のLAN/WANネットワークでは、従来さまざまなプロトコルが使用されてきた。しかし、インターネット基盤が確立され、今後は“プロトコルのIP統一化”が進むといわれている。では実際、IPベースの広域ネットワークサービスなどの導入は進んでいるのだろうか?
その状況を検証するため、Master of IP Networkフォーラムでは、フォーラム読者アンケートを実施した。本稿では、その概要を紹介する。
■IP-VPN vs. MAN、次世代広域ネットワークの主役は?
企業で拠点間の広域ネットワークを構築する方法としては、これまで専用線やフレーム・リレーを利用するのが一般的だった。そこに近年登場して注目されているのが、IPに特化した「IP-VPN」だ。では読者のIP-VPN導入状況について、こちらも最近話題を集めている広域イーサネット(LAN)サービスの「MAN(Metropolitan Area Network)」と比較した結果を見てみよう(図1)。まず現時点でこれらのサービスを「すでに導入している」読者は、MANが7%に対してIP-VPNは2倍の14%に上った。また今後の導入意向でも、「6カ月以内の導入予定」〜「検討中」までを合計した導入見込み率がMANの20%に対して、IP-VPNは36%となった。次世代広域ネットワークの主役争いは、いまのところIP-VPNが一歩リードしているようだ。
図1 IP-VPN/MAN導入状況(N=259) |
■広域ネットワークサービスの選択要因:セキュリティを最重視
では上記のような広域ネットワークサービスを導入する際、読者はどのような点を重視しているのだろうか? いくつかのキーワードを提示して選択してもらった結果、ほかを引き離してトップに挙げられたのは「セキュリティの強度」だった(図2)。広域ネットワークによる利便性向上は、盗聴/なりすましなどの脅威と表裏一体の関係にある。IP-VPNに注目が集まるのも、そのコスト・メリットに加え、MPLS(Multi Protocol Label Switching)技術による高いサービス品質やセキュリティの提供が効いているものと思われる。
図2 広域ネットワークサービス導入時の重視点(3つまでの複数回答 N=259) |
続いて、IP-VPNやMANに関する読者の情報ニーズを紹介しよう(図3)。6つの選択肢から「現在知りたい/興味があること」を聞いた結果、「公衆網によるインターネットVPNなど、類似サービスの概要比較」「各種サービス導入/運用事例やコスト削減効果」「IP-VPN導入時のプロトコル統一(カプセル化)やアドレス割り当ての実際」の3点が、過半数の興味を引いている。図1で見たとおり、これら新サービスの市場はいまだ導入期にあり、現在のところは基本的な情報についてのニーズが高いようだ。
図3 IP-VPNやMANについて知りたいこと(3つまでの複数回答 N=259) |
■IPv6導入〜具体化は未定ながらも、実務面での興味高まる
さて後半では、IPネットワークの基盤改革である「IPv6」について、読者が関与するネットワークにおける取り組み状況を見ていこう。まずIPv6の導入状況/予定を聞いたところ、「すでにIPv6の導入が始まっている」のは全体の2%、6カ月〜1年以内の導入予定者も同3%にとどまった(図4)。通信事業者による商用接続サービス開始、シスコシステムズによるIOSのIPv6対応発表、Windows XPによるIPv6スタック標準実装など、ベンダ側のIPv6環境整備は2001年に入って進展を見せているが、ユーザー側の受け入れ態勢はまだ本格化に遠い状況のようだ。
図4 IPv6導入状況(N=259) |
最後に、読者が現在IPv6関連で「知りたいこと/興味がある内容」を紹介しておこう。図5でご覧いただけるとおり、最も興味が集まったのは「IPv4とIPv6の統合/拡張/移行方法」であった。IPv4の課題など基本的な内容については既知の読者が多いためか、「現行環境からのマイグレーション」という実務的な情報ニーズが高い点が興味深い。前項で「読者が関与するネットワークでのIPv6導入は本格化していない」と述べたが、エンジニア個人としては、来るべき移行に備えた知識の必要性が実感され始めているようだ。
図5 IPv6について知りたいこと(3つまでの複数回答 N=259) |
■調査概要
- 調査方法:Master of IP Network サイトからリンクした Webアンケート
- 調査期間:2001年10月19日〜11月9日
- 有効回答数:259件
関連記事 | |
書評:VPNの最新ソリューションを学ぼう! | |
イベントレポート:Global
IPv6 Summit in Japan 2001 「企業ネットワークのIPv6移行への課題」 |
|
連載:IPv6ネットワークへの招待 |
「Master of IP Network総合インデックス」 |
- 完全HTTPS化のメリットと極意を大規模Webサービス――ピクシブ、クックパッド、ヤフーの事例から探る (2017/7/13)
2017年6月21日、ピクシブのオフィスで、同社主催の「大規模HTTPS導入Night」が開催された。大規模Webサービスで完全HTTPS化を行うに当たっての技術的、および非技術的な悩みや成果をテーマに、ヤフー、クックパッド、ピクシブの3社が、それぞれの事例について語り合った - ソラコムは、あなたの気が付かないうちに、少しずつ「次」へ進んでいる (2017/7/6)
ソラコムは、「トランスポート技術への非依存」度を高めている。当初はIoT用格安SIMというイメージもあったが、徐々に脱皮しようとしている。パブリッククラウドと同様、付加サービスでユーザーをつかんでいるからだ - Cisco SystemsのIntent-based Networkingは、どうネットワークエンジニアの仕事を変えるか (2017/7/4)
Cisco Systemsは2017年6月、同社イベントCisco Live 2017で、「THE NETWORK. INTUITIVE.」あるいは「Intent-based Networking」といった言葉を使い、ネットワークの構築・運用、そしてネットワークエンジニアの仕事を変えていくと説明した。これはどういうことなのだろうか - ifconfig 〜(IP)ネットワーク環境の確認/設定を行う (2017/7/3)
ifconfigは、LinuxやmacOSなど、主にUNIX系OSで用いるネットワーク環境の状態確認、設定のためのコマンドだ。IPアドレスやサブネットマスク、ブロードキャストアドレスなどの基本的な設定ができる他、イーサネットフレームの最大転送サイズ(MTU)の変更や、VLAN疑似デバイスの作成も可能だ。
|
|