第11回 読者調査結果〜無線LAN/ギガビット・イーサネットの導入状況は?〜 小柴 豊 |
2003年もIPネットワークをめぐるさまざまな動きがメディアをにぎわした。しかしこうした“トレンド”は、実際どの程度企業ネットワークに定着しているのだろうか? @IT Master of IP Networkフォーラムが実施した第11回読者調査から、無線LANとギガビット・イーサネットの導入状況を検証してみよう。
■無線LANの企業内導入率:43%
初めに読者のかかわるネットワークにおける、無線LANの導入状況から見ていこう。現在無線LANを導入しているのは、「全社的に導入している」および「特定部門や事業所単位で導入している」を合わせて、回答者全体の43%となった(図1)。“イーサネット並みの伝送速度を持つ実用的な規格”としてIEEE
802.11bが策定されてから4年、無線LANは企業内にも急速に普及してきたことが分かる。ただし非導入者の新規導入予定/検討率は17%にとどまっていることから、今後の市場成長率は緩やかなものとなりそうだ。
図1 無線LANの導入状況(n=411) |
■無線LAN規格の使用状況は?
無線LAN市場における2003年のトピックスといえば、まず6月に標準化が完了した「IEEE 802.11g」規格の登場が挙げられる。そこで読者に無線LAN規格の使用状況/使用予定を聞いた結果、現在は「IEEE
802.11b」の使用率が圧倒的に高いものの、今後使用を予定/検討している規格では、「11g」の支持率が他を大きく上回った(図2)。11gは、先行した11aと同様に最大54Mbpsの伝送速度を持ちながら、現在最も普及している11bとの互換性を持つ点が魅力となっており、高速無線LAN時代の主役として期待されているようだ。
図2 無線LAN規格の使用状況/使用予定(複数回答) |
■無線LAN規格/機器選定時の重視点は?
ところでこれから無線LANの規格や機器を選定する際、読者はどのようなポイントを重視するのだろうか? 複数回答で尋ねたところ、「セキュリティ強度」の重視率が69%に達した(図3)。無線LANのセキュリティについては、ここ数年官公庁や企業の脆弱な運営体制が報道されたことから、大きく注目を集めている。今後無線LAN市場がさらなる成長を遂げられるかどうかは、コストや速度よりも、セキュリティ技術の確立に懸かっているようだ。
図3 無線LAN規格/機器選定時の重視点(無線LAN使用者/予定者 n=245 複数回答) |
■無線LANのセキュリティ対策状況は?
では実際に無線LANを使用している企業では、どのようなセキュリティ対策を実施しているのだろうか? 無線LAN使用者の回答を見ると、現在は「WEPによる通信の暗号化」「SSID(ESS-ID)の隠ぺいやANY接続の拒否」「MACアドレスによるアクセス制限」の3点が、上位に挙げられた(図4)。ただしこれらはIPAが『無線LANのセキュリティに関する注意』で推奨している最低限の対策であり、それすら実施していない“危険な”無線LAN環境も、まだ相当数存在しているようだ。
またこれら現在主流のセキュリティ対策についても、すでに暗号解読などの脆弱性が指摘されている。企業で無線LANを安全に使用するためには、今後IEEE
802.1xプロトコル/RADIUSサーバによる認証や、WEPの進化形であるWPA/IEEE 802.11iといった、より高度なセキュリティ環境の導入を検討すべきだろう。
図4 無線LANのセキュリティ対策状況(無線LAN使用者 n=174 複数回答) |
■関連記事
- トレンド解説:IEEE 802.11iとWPA
- 無線LAN構築のABC (System Insider)
- 「危険なのは無線LANを使う人」、ラック三輪氏がセキュリティ対策指南(NewsInsight)
■ギガビット・イーサネットの企業内導入率:23%
さて後半では、ギガビット・イーサネットに関する調査結果を紹介していこう。回答者全体の中でギガビット・イーサネットを導入しているのは、「全社的に導入している」「特定部門や事業所単位で導入している」を合わせた23%であった(図5)。図1で見た無線LAN導入状況に比べると、現在の普及率は低い半面、導入予定/検討率は33%に上っており、今後高い成長が期待できる分野といえそうだ。
図5 ギガビット・イーサネットの導入状況(n=411) |
■ギガビット・イーサネットの適用個所は?
では現在、ネットワークのどのような個所がギガビット化されているのだろうか? 利用者に聞いたところ、過半数が「LANのバックボーン」を挙げており、以下「LAN間接続/WANに使用」「LAN内のスイッチ間接続に使用」「サーバとスイッチ間接続に使用」の3つがほぼ同率で続いている(図6)。ギガビット化の動きは成長初期段階にあるだけに、末端のPCまで届くには、まだ多少時間が必要なようだ。
図6 ギガビット・イーサネットの適用個所(Gbit利用者 n=94 複数回答) |
■ギガビット・イーサネットの導入目的は?
最後に、読者が今後期待するギガビット・イーサネットの導入効果/目的を見ると、「全体的なネットワークの高速化」を挙げる回答者が全体の8割を占めた(図7)。いまはバックボーンへの適用を進めている段階であり、ギガビット・イーサネットの導入契機は、当面インフラ拡充を主軸に進んでいく模様だ。そこで強化されたインフラが、「ネットワークストレージによるデータ管理/バックアップ」や「大規模データベース/データマイニングシステム」「サーバ・ベース・コンピューティング」といった、新たなシステム構築の土壌となっていくだろう。
図7 ギガビット・イーサネットの導入目的(Gbit使用者/予定者 n=226 複数回答) |
■調査概要■
- 調査方法:Master of IP NetworkフォーラムからリンクしたWebアンケート
- 調査期間:2003年11月4日〜11月28日
- 回答件数:411件
■関連記事
- 特集:10ギガビット・イーサネット大解剖
- 1000BASE-Tへの移行で気になるコストと性能 (System Insider)
「Master of IP Network総合インデックス」 |
- 完全HTTPS化のメリットと極意を大規模Webサービス――ピクシブ、クックパッド、ヤフーの事例から探る (2017/7/13)
2017年6月21日、ピクシブのオフィスで、同社主催の「大規模HTTPS導入Night」が開催された。大規模Webサービスで完全HTTPS化を行うに当たっての技術的、および非技術的な悩みや成果をテーマに、ヤフー、クックパッド、ピクシブの3社が、それぞれの事例について語り合った - ソラコムは、あなたの気が付かないうちに、少しずつ「次」へ進んでいる (2017/7/6)
ソラコムは、「トランスポート技術への非依存」度を高めている。当初はIoT用格安SIMというイメージもあったが、徐々に脱皮しようとしている。パブリッククラウドと同様、付加サービスでユーザーをつかんでいるからだ - Cisco SystemsのIntent-based Networkingは、どうネットワークエンジニアの仕事を変えるか (2017/7/4)
Cisco Systemsは2017年6月、同社イベントCisco Live 2017で、「THE NETWORK. INTUITIVE.」あるいは「Intent-based Networking」といった言葉を使い、ネットワークの構築・運用、そしてネットワークエンジニアの仕事を変えていくと説明した。これはどういうことなのだろうか - ifconfig 〜(IP)ネットワーク環境の確認/設定を行う (2017/7/3)
ifconfigは、LinuxやmacOSなど、主にUNIX系OSで用いるネットワーク環境の状態確認、設定のためのコマンドだ。IPアドレスやサブネットマスク、ブロードキャストアドレスなどの基本的な設定ができる他、イーサネットフレームの最大転送サイズ(MTU)の変更や、VLAN疑似デバイスの作成も可能だ。
|
|