座談会 「グループウェアはこれからどうなる」

 3年後も、まだドミノやExchangeは存在するのか?

新野 昔からドミノもExchangeもよくいわれていたのは、「複雑な製品でインストールも大変だし、いろいろ機能もあって使いこなすのも大変」といったことでした。メーカーとしてはいろんな機能を付けたい。しかし、ユーザーとしては、できれば必要な機能だけを利用したい。そう思っているはずですよね。メーカーとして、ユーザーが求めるそうしたシンプルさをどうやって届けていけばいいと考えていますか? 例えばASPなどは1つの解だとは思いますが、どうでしょう。

ASPに対応するような製品群を着々と用意しています(斎藤)

斎藤 ASPについてですと、すでに手を打ち始めていて、米国ではもうサービスを開始しています。これから発表するQuickPlaceなどは、ユーザーからは複雑さを隠ぺいして、パソコン通信のSIG(同じ興味を持つ人たちが集まるコミュニティ)のようなものを簡単に作れるので、ASPでは特に有効な製品ではないかと思います。そういった製品群を着々と用意しています。

新野 その製品は、ドミノ的なものを見せずにやっていく、ということですか。

斎藤 そうですね。(ユーザーからは)開発環境も見えないですし。

藤縄 マイクロソフトも日本では、ASPをやります、というアナウンスだけはしていますが、まだ具体的な価格などは決定していません。また、ユーザーにシンプルさを伝える、という意味では、必要なものしか入っていないものが一番シンプルに見えるでしょうから、パートナーが加工しやすいものを用意して、パートナーがシンプルなものをエンドユーザーに提供する、そのための技術情報を積極的に出していきたい。

   これ以上巨大になったらパッケージとして成立するのか?

新野 今のASPについてはある程度予想されたお答えでした。で、この次の質問はぜひ本音をお伺いしたいのですけど、先ほど、グループウェアのサービス、つまり機能はまだまだ増えるだろう、という点ではお二人とも一致していたと思います。とすると、この先も製品はどんどん大きくなると。では、3年後を考えたときに、そんな巨大な製品をパッケージで買ってきて、システムインテグレータやVARがシステムを構築していくのが主流でありつづけるでしょうか? そうでない、もっとシンプルな方法があるのでしょうか。ソフトウェアメーカーとして、パッケージ以外の選択肢や仮説を持ってらっしゃいますか?ぜひお二人の個人的な意見としてでも結構ですので、お伺いしたい。

藤縄 例えば3年後、もしかしたらExchangeという名前はないかもしれません、でも技術は使われている。そういったプラットフォーム的なものを目指しています。3年後にはコラボレーションはごく当たり前になっていて、コラボレーションが注目されなくなるほど、当たり前になっている、といえるのではないでしょうか。そのための基盤的な技術は、もうExchangeに取り込まれていると思っています。

斎藤 3年後は確かに、ドミノもいまのものとは大きく変わっているでしょうね。ただし、オブジェクトストアという基盤は変わっていないでしょう。

 それが基盤として、インフラとして使われ、特別な存在ではなくなる、というのであれば、ドミノも同じようにオブジェクトストアとして生きていくことになるでしょう。今後も、私たちがノーツやドミノで実現しようとしていたコラボレーションというものが、形を変え、意味が広がって、ナレッジというものまでも含まれるようなものになる。それを顧客が求めるようになれば、ドミノはそのための1つの情報ソースだったり、SQL Serverなどが格納するような定型データ以外のデータを格納するストアになる。

 そうした2つのデータを結びつけるとすれば、XMLというものがあるでしょう。ドミノとXMLは非常に相性がいいし、COMやCORBAなどの標準にも対応する。そうすると、ドミノはいろんなものからアクセスして利用できる、情報を詰め込んだ宝箱のようなものになっていく。そういったものにしていく、というのを着々と進めています。この辺は、もしかしたらOSを提供しているベンダとは立場が違うのかもしれません。

藤縄 OSベンダということでいうと、以前よくユーザーから、「Exchange ServerはWindowsに組み込まれるようになるんじゃないの?」と聞かれていました。でも、「それではメッセージングシステムの押し付けになるので、そんなことはないでしょう」と、自分でもないだろうと思っていたら、いきなり「.NET戦略」ということになりまして(笑)。

 しかし「.NET戦略」自体はよくできていると思っていて、例えば米国ではMSNエクスプローラという個人向けのクライアントがありますが、あれをさわっていると、将来のExchangeはこうなるかもしれないなあ、という感じがします。使いやすいクライアントなら、裏でExchangeが動いているかどうかはまったく関係ないんですね。3年後にExchangeやドミノがあるかっていうと、本当に分からないです。技術は残ると思いますけど。ブランドとか製品名は、パッケージビジネスについては重要だったかもしれませんが、少なくとも企業とか家庭に入るものについては、これからはあまり重要ではないかもしれませんね。

斎藤 ドミノとしても、オブジェクトストアとして、NSFがなくなることはないでしょう。テクノロジ的には必ず残るでしょうね。

 例えば、Ravenはロータスが出すのでドミノがベースだと思われるでしょうが、言葉を選ばずにいえば、ドミノとは全然違うものなんです。いろんな情報がDB2やドミノなどにストアされているわけで、その情報を計算し分析しマッピングをして、マイニングをしてナレッジマネジメントを実現する。ドミノだけではできないし、逆にドミノがなくてはできない。ドミノはそういったプラットフォーム的なものになっていく可能性がある。

新野 コラボレーション製品は、パッケージから、将来はプラットフォームになると。こういうストーリーでお二人とも一致する、ということですね。

Index
座談会「3年後のグループウェアはどうなるのか」
  1. ユーザーが今のグループウェアに求めるもの
ユーザーは今、グループウェアのどんな機能にエキサイトしているのか。その答えは、モバイルとサーバーコンソリデーションのようだ
  2. 機能競争には理由がある
グループウェアのバージョンアップは、いつも追加機能にばかり目を奪われる。しかし、その裏で行われるアーキテクチャやスケーラビリティの変更も重要だという
3. 3年後も、まだドミノやExchangeは存在するのか?
XMLアプリケーションを開発する際に、定番の見本や方法論はまだほとんど存在していない


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