SOHO事業継続計画虎の巻
小規模事業者のオフィス避難大作戦(前編)

夏川和一
2011/4/28

 ステップ2:ハードウェアを整える


インターネット接続の確保

 インターネットを使える物件であれば、メール、Webなど主要なサービスは利用できると考えられます。しかしVPNなど、一般的でないサービスを使う予定がある場合は、それらのプロトコルを通さない可能性が考えられます。その場合は、物件契約に先だって、実際にコンピュータを接続して動作確認をさせてもらえないか、交渉してみましょう。

 また、インターネット利用者が多い割に回線が細かったり、突出したヘビーユーザーがいるようなケースでは、特定の時間帯にスピードが出ないなどの支障が生じることも考えられます。これは事前の調査が難しいため、物件を管理する業者にそのような苦情がないかを確認しておくとよいでしょう。

 インターネットが使える物件でも、携帯データカードなど「第二の通信手段」を用意するのは鉄則です。物件のインターネットサービスで何らかの支障が生じた場合も、代替手段があれば、インターネットがまったく使えなくなるという状況を避けることができます。第二の通信手段については、拠点の使用を開始する前に、必要なサービスがすべて利用可能かどうかを確認しておきます。

図5 第二の通信手段を用意しておきたい

 インターネットが使えない物件の場合は、携帯データカードなど代替の通信手段を2種類用意しておきたいものです。その際は、「安いがサービスエリアは狭い事業者のもの」と「高いがサービスエリアの広い事業者のもの」といった具合に、特性が異なるものを用意しておきます。

モバイルルータの利用

 使用するPCが複数台あったり、iPhoneなどのスマートフォンも併用する場合は、モバイルルータの使用も検討するとよいでしょう。モバイルルータには大きく2種類あります。1つは有線インターネットを無線LANから利用可能にするもので、もう1つは携帯ネットワークを使ったデータ通信機能を無線LANから利用可能にするものです。

図6 モバイルルータの種類

 前者はネットワーク製品を扱う各社が販売しており、価格も数千円程度からあります。後者では、SIMカードを挿す「Pocket WiFi」が代表的な製品の1つですが、他にもUSBタイプやPCカードタイプのデータカードを接続する製品が携帯事業者やサードパーティから販売されています。

 例えば、物件の有線LANの他に携帯データカードを用意しておき、それぞれを異なるSSIDを持つ2つのモバイルルータに接続しておけば、PCやスマートフォンで接続先SSIDを変更するだけで、簡単に使用回線を切り替えられる環境も構築できます。

図7 SSID切り替えで回線を切り替えるイメージ

音声通信の確保

 物件備え付けの電話は一般的に通話料が高い上、外部から直接ダイヤル着信できないケースも多いことから、多くの場合、当面の電話連絡は携帯電話で行うことになると思われます。しかし携帯の通話料は一般に安くないため、何らかの手立てを取ることが求められます。

 手軽なのは、無料インターネット電話サービスを利用する方法です。代表的なサービスの1つであるSkypeの場合、PC同士はもちろん、PCとスマートフォンの組み合わせでも無料で通話ができ、ビデオ通話や電話会議も可能です。有料サービスを使えば、日本国内の固定電話や携帯電話との通話、国際電話もできます。

関連リンク:
Skype
http://www.skype.com/intl/ja/welcomeback/

図8 Skypeのサービスイメージ

 なお、SkypeはP2P技術を使用していますが、第三者のPCが音声やビデオの中継を行うことがあります。通話データは暗号化されますが、念のため機密性の高い通話はしない方が安心かもしれません。

 また、少し毛色が違いますが、ウィルコムが提供する「だれとでも定額」も通話料を安く抑えるのに役立つ可能性があります。相手が固定でも携帯でも、10分間までの通話なら、毎月500回まで定額(基本料含め月額2430円、端末代は別)で使えるというサービスです。携帯ほど電波が強くないPHSの特性を理解する必要はありますが、うまく使えばコスト削減の武器の1つになるでしょう。

関連リンク:
だれとでも定額
http://www.willcom-inc.com/ja/plan/option/all_call/

図9 誰とでも定額のサービスイメージ


小規模事業者のオフィス避難大作戦(前編)
  SOHO事業者がサテライト拠点を構築するには
ステップ1:まずは拠点を探す
ステップ2:ハードウェアを整える
  ステップ2:ハードウェアを整える(続き)
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