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たとえばサーバ システムを構築する仕事で、サーバ本体やネットワーク機器などのハードウェア選びなどに関わると、ハードウェア関連の参考文献が非常に少ないことに気付く。OSやアプリケーションといったソフトウェア関連の文献が数多く出版されており、入手にも事欠かないのに比べると対照的だ。それでも、PCに実装されているハードウェアを規格のレベルから解説したり、PCの自作を支援したりするような書籍ならば、まだ見かけることがある。問題は、ビジネス分野でシステム構築や管理・運用に直接役立つような情報を載せた本が、非常に少ないということだ。 その点で、本書は貴重な一冊といえる。本書は、サーバやワークステーションのディスク サブシステムに用いられる重要な技術のRAIDについて、基礎から応用まで広範囲に解説している。RAIDを正面から取り扱っている書籍というだけでも、日本国内では非常に珍しい(少なくとも筆者は、書籍で見たことがない)。さらに本書は、Webサーバやデータベース サーバなど各種システムのハードウェア仕様を決める方法(いわゆるサイジング)にまで踏み込んで解説している。しかもこれらの解説ではRAIDだけではなく、それ以外のプロセッサやメモリ、ネットワークなどのハードウェア コンポーネントについても言及されており、システム構築に関わるユーザーにとって、より現実的な指南となっている。 RAIDに関する解説は、RAIDの各レベルの動作原理やメリット/デメリットといった基礎知識から始まり、ソフトウェアRAIDについても詳細に解説されている。特徴的なのは4章のRAIDコントローラだ(本書ではアレイ コントローラと表記されている)。ここでは、RAIDコントローラというハードウェアがどのようなパーツで構成されているか、またそれぞれのパーツがどのような働きをするのか、といった点が分かりやすく解説されている。 そのほか、ハードディスクの基本構造や、高い稼働率を誇る高可用性システムのしくみや技術についても、本書は1章ずつ割いて解説している。また付録では、サーバ システムなどのパフォーマンスをチューニングするための基礎知識が紹介されている。 ちなみに本書の著者である宇野 俊夫氏は、本サイトの特集「最適ネットワーク機器選択術」にて「4.ハブ/スイッチ選択の極意」も執筆した方である。その宇野氏がPCベンダでRAIDを取り扱いながら蓄えてきた知識と経験は、本書でいかんなく披露されている。もしRAIDを必要とするようなシステムを構築しなければならないなら、まず本書でRAIDの基礎から応用まで学ぶことをお勧めしたい。後半の4〜6章にあるRAIDコントローラや、システムのサイジング、高可用性システムに関する記述は、初心者にとって敷居が高いかもしれないが、頑張って読み進める価値はあると思う。
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