ニュース解説
―IDF Spring 2001 Japanレポート― デジタルアドバンテージ |
Windows XPとIntelのチップセット・サポートがカギとなる「USB 2.0」
4月に入ってから、いろいろなベンダからUSB 2.0に対応した周辺機器が発表されている。例えば、アダプテックはPCIカードのホスト・アダプタを、ラトックシステムはCardBusとPCIカードそれぞれのインターフェイスに対応したホスト・アダプタを発表している(アダプテックとラトックシステムのニュースリリース)。2001年前半のうちに35社以上のベンダが、USB 2.0に対応した製品を発表する予定だという。
こうした状況の中で気になるのが、USB 2.0のOSサポートだ。最近、Windows XPがUSB 2.0をサポートしないという報道があったためか、USB 2.0のセミナー中に、マイクロソフトの担当者である斉藤 満氏より、WindowsファミリのUSB 2.0サポートについて説明が行われた。その概要をお伝えしよう。
まず、Windows XPに関しては、OSのリリースCD-ROMには間に合わず、USB 2.0に対応したドライバ・スタックは収録されない。しかし、リリースとほぼ同時に、Dynamic Setup(Windows Updateと同様、インターネットなどに接続し、必要なモジュールをダウンロード、セットアップを行う仕組み)を利用して、インターネット経由でUSB 2.0のドライバをインストール可能にするとのことであった。
それ以外のOSに関しては、Windows 2000でのサポートが、Windows XPとほぼ同時期に行われる。それより遅れて、Windows Meについてもサポートが行なわれる。しかし、それ以前のWindows 9x系OS(Windows 95/Windows 98/Windows 98 SE)でのサポートは行われない。つまり、USB 2.0の480Mbits/sの転送モード(ハイスピード・モード)を利用するには、Windows MeもしくはWindows 2000/XPが必要になるというわけだ。
さて、そのWindows XP用USB 2.0のドライバの開発状況だが、USB 1.1ベースのデバイスをUSB 2.0のハブに接続した場合については、すべてのサポートが完了している。一方、USB 2.0デバイスについては、ハイスピード・モード時でのアイソクロナス転送(遅延を抑えた一定の転送レートを保証する転送方式)だけが、まだ開発中とのことだ。ほかのコントロール/バルク/インタラプト転送(いずれもUSBで規定されている転送モード)はサポートを完了している。つまり、USB 2.0のハイスピード・モードにおけるアイソクロナス転送のサポートについてのみ、ドライバがWindows XPの出荷時に間に合わない可能性があると示唆したわけだ。なお、プリンタについては、製品レベルでのテストが不足している状態だという。「USB 2.0に対応した機器があったらテストさせてほしい」という要望が、マイクロソフト側から参加者に対して投げかけられたほどだ。
もう1つ気になるのは、Intel側のチップセット対応だ。USB 1.1の場合、IntelのチップセットにUSBインターフェイスが内蔵され、PCにUSBが標準装備されるようになった結果、ハードウェア面での追加コストなしでUSBデバイスを接続できるようになったことが、USBの普及を大きく促進したからだ。インテルによれば、USB 2.0のホスト・コントローラを統合したチップセットは、2002年初頭にリリースするということだ。それまでは、マザーボード上かあるいはPCIカードに単体のホスト・コントローラ・チップを搭載することでカバーすることになる。当初は2000年末にも製品登場が期待されていたUSB 2.0の普及は、もうしばらく先になりそうだ。
次期Pentium 4は新パッケージ
プレスルームの隣には、Intelのパッケージ技術やIntel Lab.が開発している製品などの展示室が設けられていた。そこには、現在開発中の線幅 0.1 μm以下の回路の焼き付けを実現するためのEUV露光技術で使用する露光マスクと集光用の鏡なども展示されていた(Intelの「EUV露光技術開発に関するニュースリリース」)。
プレス・ルームの隣に展示されていたIXA対応のカード | EUV露光装置の鏡とマスク |
ARMが内蔵されたキガビット・イーサネット・コントローラを使った交換機。ハードウェア部分とソフトウェア部分の分離が可能となり、新しいサービスの開発が容易になるということだ。 | 後ろ側の円筒形のものがEUV露光装置で使われる鏡、、手前の左側がマスク。右側は現在の露光装置で使われているマスクが比較のために置かれていた。 |
0.13μmプロセスで製造される次期Pentium 4(開発コード名「Northwood:ノースウッド」)で採用されるパッケージも展示されていた。このパッケージは、既存のPentium 4に比べてピン間隔が狭くなり、パッケージ・サイズが大幅に縮小されていた(ピン数は既存の423ピンから478ピンへと増えている)。ちょうど、既存のPentium 4のパッケージで、ピンの内側部分に相当するサイズである。ただ、プロセッサ上部に乗せられている金属製のカバー部分(ヒートスプレッダ)のサイズは変更されない。これは、0.13μmプロセスの採用によってプロセッサのダイ・サイズは縮小され、全体の消費電力は低くなっているものの、単位面積あたりの発熱量がそれほど変わらないので、放熱のために小さくできないということであった。また、既存のPentium 4では、μBGA状の基板にプロセッサ・コアを載せ、それをピンが付いた基板上に載せるという2段重ねになっていた。新たなパッケージでは、直接ピンが付いた基板上にプロセッサ・コアを載せるため、製造コストも削減できるということであった。なお今回は、ソケットについては明らかにされなかったが、既存のPentium 4と同様にユーザーがプロセッサを交換可能なものになるらしい。
ピア・ツー・ピアの壮大なる実験への呼びかけ
米国時間4月3日にIntelが全米癌学会など欧米の科学研究団体と共同で発表した「インテル フィランソロピック・ピア・ツー・ピア・プログラム(Intel Philanthropic Peer-to-Peer Program)」に関して、IDF Japanでもパトリック・ゲルシンガー氏などから参加が呼びかけられた(Intelの「フィランソロピック・ピア・ツー・ピア・プログラムに関するニュースリリース」)。このプログラムは、インターネットに接続されたPCとピア・ツー・ピア技術を応用することで、仮想的なスーパーコンピュータを実現しようというもの。基本的な仕組みとしては、インターネットに接続された多数のPCを使って地球外生命体を探すプロジェクト「SETI@home」とほぼ同じだ。
最初のアプリケーションは、白血病治療薬の最適化に関するものだ。どのような計算を行っているかについては、このプログラムに参加しているUnited Devices社のホームページに詳しく述べられているが、白血病の発病などに関係するたんぱく質のうち、4種類について調べるというものだ。
UD Agentの画面 |
フィランソロピック・ピア・ツー・ピア・プログラムのクライアント側のソフトウェア「UD Agent」と呼ばれる。現在、計算を行っている対象のたんぱく質などが表示される画面も用意されている。 |
指示に従って「UD Agent」と呼ばれるアプリケーションをインストールすると、PCの演算余力を利用し、計算を行う。計算が完了すると、United Devices社のデータ・センターに接続し、処理結果が転送される(常時接続でない場合は、インターネットに接続された時点で転送が行われる)。と同時に新しいデータのリクエストが送られ、PC上に新しいデータが転送される、という仕組みだ。このアプリケーションは、プロセスの優先度が「低」に設定されているため、PCの使い勝手には影響しない。それでいながらCPU使用率は、常にほぼ100%となる。
「UD Agent」はUnited Devices社のダウンロード・ページから入手可能だ。このプログラムが成功したならば、新たなPCの使い方として、いろいろな研究・開発に同様の仕組みが使われることになるだろう。
◆
以上、IDF Japanの一部について簡単に紹介した。多くのテクニカル・セッションは、主にインテル・プラットフォームに関連したマイクロデバイスやハードウェア製品設計/開発者に向けたものである。しかし単なるマイクロプロセッサ・ベンダからの脱却を目指して、インテルはネットワーク製品やP2P製品などを幅広く取り扱うようになっており、なかにはLANやサーバの動向に関する解説など、ネットワーク管理者が中長期的な導入計画を考えるうえでも参考になる話題が増えてきた。インテルでは、年に2回(春と秋)にIDF Japanの開催を予定しているので、読者がマイクロ・デバイス/ハードウェア・エンジニアでなかったとしても、次回は参加を検討してみてはどうだろうか。
関連リンク | |
USB2connectに関するニュースリリース | |
USB 2.0対応ホスト・アダプタの製品情報ページ | |
EUV露光技術開発に関するニュースリリース | |
フィランソロピック・ピア・ツー・ピア・プログラムに関するニュースリリース | |
SETI@homeのダウンロード・ページ | |
United Devices社のホームページ | |
United Devices社のダウンロード・ページ |
INDEX | ||
[ニュース解説]―IDF Spring 2001 Japanレポート―Intel勝利の方程式を語る | ||
1.モバイル向けプロセッサがサーバを救う? | ||
2.USB 2.0はWindows XPには間に合わない! | ||
「PC Insiderのニュース解説」 |
- Intelと互換プロセッサとの戦いの歴史を振り返る (2017/6/28)
Intelのx86が誕生して約40年たつという。x86プロセッサは、互換プロセッサとの戦いでもあった。その歴史を簡単に振り返ってみよう - 第204回 人工知能がFPGAに恋する理由 (2017/5/25)
最近、人工知能(AI)のアクセラレータとしてFPGAを活用する動きがある。なぜCPUやGPUに加えて、FPGAが人工知能に活用されるのだろうか。その理由は? - IoT実用化への号砲は鳴った (2017/4/27)
スタートの号砲が鳴ったようだ。多くのベンダーからIoTを使った実証実験の発表が相次いでいる。あと半年もすれば、実用化へのゴールも見えてくるのだろうか? - スパコンの新しい潮流は人工知能にあり? (2017/3/29)
スパコン関連の発表が続いている。多くが「人工知能」をターゲットにしているようだ。人工知能向けのスパコンとはどのようなものなのか、最近の発表から見ていこう
|
|