ニュース解説
Pentium 4にSDRAM対応チップセット登場の噂 小林章彦 |
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2000年7月25日付けのCNETのニュース、「インテルが『Pentium 4』に『Rambus』以外の選択肢を準備」は衝撃的であった。Intel自身は公式なコメントを発表していないし、現在公表されているデスクトップPC向けプロセッサのロードマップにも、SDRAM対応のチップセットの存在はない。しかし、Pentium 4用のSDRAM対応チップセットが本当に提供されるとなれば、Pentium 4の位置付けが大きく変わる可能性がある。
SDRAMは、現在多くのPCが採用しているメモリで比較的安価である。それに対し、Pentium 4のチップセットが採用すると言われているDirect RDRAMは幅広いメモリ帯域が実現できるが、現在のところ製造しているメモリ・ベンダが少なく、高価である(構造的にも高価になる要因を持っている)。
これまでIntelは、「Pentium 4のチップセットは、Direct RDRAMに対応したもののみである」と繰り返し明言していた。実際、現在公表されている開発コード名「Tehama(テハマ)」で呼ばれるPentium 4用のチップセットは、Direct RDRAMにのみ対応したものだ。ただ、Direct RDRAMの価格は未だに高く、Pentium IIIで使われているSDRAMに比べ、同じ容量で3倍から4倍の値段が付けられている。もし、このままの状態でPentium 4が出荷されたとしても、Direct RDRAMを採用する以上、システム価格が大幅に高くなり、採用するPCベンダがほとんどないという状態を招きかねない。実際、Pentium III用のチップセットでDirect RDRAMに対応しているIntel 820は、デルコンピュータなど一部のPCベンダを除き、ほとんど採用されていないのが現状だ。Pentium IIIにおいては、Intel 820以外にもチップセットの選択が可能であるため、それほど大きな問題とはならないが、Pentium 4の場合、当初の予定どおりであれば、Direct RDRAMと心中ということにもなりかねない。もちろん、そのためIntelはDirect RDRAMの価格の引き下げを誘導し、Pentium 4の出荷がスムーズに進むように画策していると思われるが、メモリ・ベンダは乗る気ではなく、DDR SDRAMの採用を望んでいるという話も聞く。 DDR SDRAMは、現在のSDRAMの延長線上にあるともいえるメモリで、クロックの立ち上がりと立ち下り時にデータの読み書きを行うようにしたものだ。そのため、SDRAMに比べて、メモリ帯域を大幅に広げることが可能だ。
もし、Pentium 4でSDRAMが利用できれば、一気にこの問題は解決する。ただし、これまでIntelが主張していた「Pentium 4の性能を発揮するには、Direct RDRAMによる幅広いメモリ帯域が必要」という言葉を信じるならば、SDRAMの場合はメモリがボトルネックになり、Pentium 4の十分な性能が発揮できない可能性がある。Pentium IIIのハイエンドとPentium 4の性能は競合することになり、十分に魅力的な性能を発揮することだろう。また、システム価格の面では、Pentium IIIのハイエンド・マシンとの差が小さくなり、順調にPentium IIIからPentium 4への移行が進みやすくなるだろう。しかし、十分な性能が得られないのでは本末転倒にもなりかねない。
また、エントリ・サーバ向けにSDRAM対応のチップセットを用意するという可能性もある。現在、Pentium IIIを採用したエントリ・サーバ向けのチップセットはIntel 440BXが主流である。デスクトップPCでは、Intel 440BXからIntel 815/815Eへの移行が始まっているが、最大搭載メモリ容量が512Mbytesと、サーバ向けとしては少ない(Intel 440BXはレジスタードDIMMで1Gbytesまで拡張可能)。Tehamaをエントリ・サーバに使うとなると、Direct RDRAMの価格が高いため、デスクトップPCに比べて多くのメモリが必要なサーバ用途では、さらにシステム価格が高くなってしまう。そこで、多少性能が犠牲になっても、安価にシステムを組むことが可能なSDRAMを利用可能にするという手はある。
こうした動きの一方で、VIA TechnologiesがPentium 4用のチップセットを開発中であるとほのめかしていることから、Intelが影でVIA Technologiesと手を組み、Direct RDRAM以外のメモリに保険をかけているのではないかという憶測も生んでいる。IntelとVIA Technologiesは、Pentium IIIの特許とクロス・ライセンス契約の関係で係争となり、2000年7月5日に和解が成立したばかりである(IntelとVIA Technologiesの和解に関するニュース・リリース)。「この和解の内容に次世代プロセッサ(Pentium 4など)に関する契約は含まれていない」とIntelは述べているが、何らかの交渉が行われた可能性はある。 VIA Technologiesは、Intelに次ぐチップセット・ベンダであるうえ、DDR SDRAMを推進していることから、Direct RDRAMに対する保険としては十分に効力がある。
前述のようにメモリ・ベンダは、Direct RDRAMよりも次世代メモリとしてDDR SDRAMを望んでいる。SDRAMへの対応が可能ならば、DDR SDRAMへはスムースに移行できるだろう。つまり、SDRAMへの対応は、DDR SDRAMへの保険の意味もあるわけだ。実際、すでにDDR SDRAMの採用も検討しているという話も聞く。このようにIntelの戦略が次々と変更されるのは、メモリ・ベンダの抵抗が強固なのに加え、Intelの影響力が低下していることも伺える。果たして、Pentium 4をうまく離陸させるためにIntelはどのような手段を取ってくるのだろうか。
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