元麻布春男の視点Windows XPのアップグレード・インストールを試してみたら |
2001年11月16日、ついに日本語版のWindows XPが正式に発売になった。Windows XPのプリインストール・マシンの出荷や、OEM版の出荷がなし崩し的に行われてしまったため、正式発売の感慨に乏しいが、それでも都内のターミナル駅にある大型量販店や秋葉原の一部では、深夜のカウントダウン販売が行われ、少なくともニュースのネタにはなったようだ。
さすがに筆者は深夜のカウントダウン販売には出かけなかったが、16日の午後に早速「特別アップグレード版」のパッケージを1本買ってきた。手元には、まだアクティベーションを行っていないOEM版があるし、今のところわが家のPCのOSをWindows XPに更新すると決めたわけでもないのだが、とりあえず実験用に1本買ってみた、というわけだ。ちなみに筆者が購入したのは新宿西口にある有名量販店だが、発売初日ということもあって、ソフトウェア売り場はかなりの賑わいを見せていたし、Windows XP搭載PCのコーナーもそれなりにお客さんが増えているようであった。「Windows XPの出荷も低迷するPC販売を回復させる起爆剤にはならない」という悲観論が主流を占めているようだし、あくまでも初日にすぎないから楽観するのは禁物だが、Office XPよりは集客効果があったのは間違いない。
アップグレード・パッケージを購入した理由
さて、こうして買ってきたWindows XPの特別アップグレード・パッケージだが、これはマイクロソフトによるサポートが受けられる以外に、OEM版にはない特徴を持っている。それは、既存のOSを置き換えるアップグレード・インストールができる、ということだ(通常のアップグレード版と違い、今回購入した特別アップグレード版は、Windows 2000からのアップグレードに限定されるが)。基本的に筆者は、すでにインストールされているOSに対して、アップグレード・インストールすることを好まない。新しいOSがリリースされた場合、ハードウェア(マシン)の更新時にクリーン・インストールするのが常だ。
にもかかわらず、今回アップグレード・インストールする気になったのは、手元にまだほとんど使ってないノートPCがあったからだ。今年の夏、IDF Fall 2001(Intelの開発者向けのカンファレンス)で米国カリフォルニア州サンノゼ(San Jose)に出かけた際に、東芝のノートPC(Satellite 3005-S303)を購入した。日本に戻ってきて、とりあえず日本語版のWindows 2000をインストールし、一通りのデバイス・ドライバやアプリケーションをインストールしたものの、普段ノートPCを持ち歩く習慣のない筆者は、このノートPCで何も仕事をしていない(おそらく筆者が仕事に使うのは、次回のIDFになるだろう)。つまり、Satellite 3005-S303は、まだ状態がクリーンに近く、なおかつ万が一使えなくなっても、すぐに困ることはない、という2つの点で、アップグレード・インストールを試してみる絶好のテスト・ベッドなのである。
ノートPCでWindows XPのアップグレード・インストールを試す
早速、Satelliteに対してWindows XPのアップグレード・インストールを試みてみた。いくら使えなくなっても困らないとはいえ、使えなくなって嬉しいハズがない。幸い(?)、Windows XPのインストーラには「システムの互換性を確認する」というメニューが用意されている。一応、これを実行してみたところ、インストールしてあったCD-Rライティング・ソフトウェアのEasy CD Creator 5が問題を起こす可能性があるという。製造元であるロキシオ・ジャパンのWebサイトには、アンインストールしなくてもこの問題を回避するパッチが用意されているのだが、今回はアンインストールすることにした(ロキシオ・ジャパンの「Easy CD Creator 5のWindows XP対応パッチ」)。
「システムの互換性を確認する」の画面 | |||
アップグレード・インストールを実行すると、画面のようなメニューが現れる。「Windows XPをインストールする」を選択すれば、このままインストール作業が開始される。 | |||
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この状態で、もう1度システムの互換性を確認したところ、Windows XPは問題はないという。そこでいよいよ、アップグレード・インストールの開始だ。これまで筆者は、何度かOEM版でデスクトップPCにクリーン・インストールしたことがあるのだが、ノートPCにインストールすることも、アップグレード・インストールするのもこれが初めてのこと。デスクトップPCに対するクリーン・インストールに比べて、「何と時間のかかることか」と思いつつも、辛抱強く作業が終わるのを待った。もちろん、アップグレードに時間がかかったと感じたのは、これまでWindows XPのテストに使用していたPCがPentium 4-2GHzを搭載したデスクトップPCであり、モバイルPentium III-850MHzを搭載するSatellite 3005-S303と大幅に性能差があることに加え、デスクトップPCとノートPCでハードディスクの性能差が大きいことが響いているのだろう。
喜ばしいことに、時間はかかったものの、アップグレード・インストール作業そのものは順調で、つつがなく作業は完了した。リブートしてログオンしたのだが、順調だったのはここまで。ハードディスクにアクセスした瞬間、そのアクセス・ランプが点灯しっ放しの状態でフリーズしてしまう。果たして、Easy CD Creator 5のアンインストールがまずかったのか、ほかの組み込み済みソフトウェアに問題があるのか、はたまたハードウェアとの互換性問題なのか、理由は分からない。東芝アメリカ(Toshiba America Information Systems)のホームページには、11月末までにWindows XP対応のドライバなどをリリースするという告知があることを考えると、何らかの対応が必要なのかもしれない(東芝アメリカの「Windows XPへの対応についてのお知らせ」)。とはいえ、ハードディスクにアクセスしたとたんにフリーズするのでは、パッチをあてるのも困難だ。ハードウェアに問題があるのかどうか(このSatellite 3005-S303は、一応Designed For Windows 2000ロゴもあるのだが)は、クリーン・インストールしてみれば分かるのだが、とりあえずこのままの状態で11月末まで待ってみることにした。何にしても、やはりアップグレード・インストールよりクリーン・インストールの方が手堅そうだ、という印象を強くしたことは確かである。
テレビ録画用PCにWindows XPをインストールしたら
そんなわけで、手元にはまだアクティベーションしていない特別アップグレード版のWindows XPが残ってしまった。せっかく買ったのだから何とか有効利用しようと考えて、別のマシンにまたまたアップグレード・インストールすることにした(ノートPC用は別途もう1コピー購入する必要があるが)。今度はデスクトップPC、それも筆者がテレビ録画用に使っているマシンだ。
このマシンは、基本的にはインテル純正のマザーボード「D850GB」にPentium 4-1.8GHzを組み合わせたもの。グラフィックス・カードのGeForce2 GTS、サウンドカードのSound Blaster Live! Valueに加え、テレビ・チューナー・カードとしてカノープスのMTV1000がインストールされている。光ストレージがDVD系ではなく、CD-R/RWなのは、30分番組ならハーフD1解像度のMPEG2(帯域は3Mbits/s)、1時間番組ならビデオCD互換と、最高画質にこだわっていないからだ。これらのフォーマットなら、1枚40円で買える700MbytesのCD-Rメディアに収まる。前者のフォーマットの場合、再生できる環境はPCに限られるが、それもあまり気にしていない。よほどのことがない限り、1枚700円〜800円もするDVD-Rになど記録していられない、というのが正直なところだ。
このマシンで困るのは、ときどき予約録画に失敗すること。筆者は、利用しないときは静かにしていてほしい、ということから、このマシンのサスペンドをACPIのS3(Suspend To RAM)に設定している。この状態で電源ファンを含めすべてのファンが止まるため、非常に静かになる。予約録画時は、S3から復帰して録画が行われるのだが、たまにS3ステートからの復帰に失敗することがある。これを解消するべく、BIOSのアップデート、各デバイス・ドライバを最新版にすること、電源ユニットの交換など、考えられる限りの手を打ったが、どうしても100%完全に働くようにはならなかった。S3からの復帰をマウスやキーボードで行った場合にも失敗することから、原因はMTV1000ではないと思われる。
復帰に成功するときは、パワーLEDに続きハードディスクのアクセス・ランプが点灯するのに対し、失敗するときはハードディスクのアクセス・ランプが点灯しないようなのだが(ただしディスクにアクセスする音はする)、原因を解消できず、困っていた。ひょっとすると、この問題がWindows XPにアップグレードすることで解消するかもしれない、というのが試してみる気になった最大の理由だ。また、このマシンには比較的インストールされているデバイスが多く、ビデオ編集ソフトウェア(といっても、CD-Rメディアに合わせて、どうしてもコマーシャルをカットしたいときくらいしか使わないのだが)などソフトウェアのインストール量も多めなことが、クリーン・インストールよりアップグレード・インストールを試してみたくなった理由でもある。仕事マシンは、どんなに面倒でもクリーン・インストールするが、テレビ録画マシンならアップグレードでもいいか、と思ったことも否定できない。
そのアップグレード・インストールだが、ノートPCに比べれば、かなり短い時間で完了した。もちろん、今回はフリーズすることもなく、今のところ動作に問題はない。唯一気になるのは、インストールしてあるWinDVD 3.0に対して、下の画面のような警告が出ることだ。「今すぐアップグレードする」を選ぶと、WinDVD 2000をWinDVD 3.0以降にアップグレードするようWindows XPによって求められるのだが、上記のとおり筆者がインストールしてあるのはWinDVD 3.0なのである。このメッセージは、カノープスのサイトから入手したアップデート・パッチを当てても、ときどき表示される。実害はないものの、うざったいヤツである。どうも全般にコンシューマ系ソフトウェアに問題が多いような気がするのは、Windows XPのベータ・テスタが企業ユーザーに偏っていることが原因ではないかと感じている。
Windows XPが表示するメッセージ |
「今すぐアップグレードする」()を選択しても、要求されるのはWinDVD 3.0以降にアップグレードすること。しかし、筆者のDVDデコーダはすでにWinDVD 3.0であり、これ以上アップグレードできない。 |
さて、最大の懸案であるS3ステータスからの復帰だが、とりあえず現時点では一回も失敗はしていない。ただ、まだアップグレードしてから日が浅いため、本当に大丈夫かといわれると、ちょっと困ってしまう。Windows 2000のときは、S3ステータスからの復帰が1週間以上維持されることはまれだったことからすると、あと1週間もすればハッキリと答えが出るのではないかと思っている。
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