連載 PCメンテナンス&リペア・ガイド第6回 意外に故障の多いパーツ「電源ユニット」の基礎2. 電源ユニット規格の歴史と種類 林田純将 |
前ページまでで、どんな場合に電源ユニットの故障を疑えばいいのか、理解していただけたと思う。そこで電源ユニットを交換するとして、次の問題はどんな電源ユニットを購入すればいいのか、ということが問題となる。しかし、プロセッサやメモリの規格などについて調べたことのある人でも、電源ユニットの規格を調べたことのある人は、そういないのではないだろうか? PC雑誌などを見ても、「総出力が何ワット(W)でATX 2.01対応だったら大丈夫」程度のことしか書いていないことが多い。しかし、ATXのバージョンを気にするだけでは、安定した電源ユニットを購入する目安にはならないのだ。
ここでは、そもそも「ATX2.01」などの規格の解説と、安定した環境を手に入れるための、電源ユニットのスペックについて述べてみたい。
■デスクトップPC用電源ユニットの歴史
デスクトップPC用の電源ユニット規格には、現在の標準であるATX電源、ATXが策定される前に使われていたAT電源、省スペース・デスクトップPC用であるSFX電源の大きく分けて3種類がある(実際の製品では、これらの規格と物理形状などが異なる独自タイプの電源ユニットも存在する)。ATX電源はATXフォームファクタ、SFX電源はmicroATXフォームファクタで規定されている(SFXは、microATXより小型のFlexATXフォームファクタにも用いられる)。ATXやmicroATXといえばPCのマザーボードに関する規格として捉えられることが多いが、同時に電源ユニットについても規定されているのだ。
3種類の電源ユニット |
左からAT電源、ATX電源、SFX電源。AT電源とATX電源はほとんど大きさが変わらないように見えるが、AT電源にはもっとサイズが大きいタイプも存在する。省スペースPC向けのSFX電源はATX電源をベースに小型化したもので、4種類の形状・サイズが規定されている。 |
AT電源は1980年代前半〜1990年代前半までPCに搭載されてきたもので、厳密には規格化されたものではなく、メーカー間でその形状やサイズ、出力電圧に関する仕様などが微妙に異なるなど問題も多かった。その後1995年に初めてIntelによって策定されたATXでは、こうした曖昧な電源ユニットの仕様を規格化し、出力電圧やサイズ・形状など基本仕様を規定するのはもちろん、マザーボード上の接続端子の位置など細かいところも設計ガイドで指示している。これによりマザーボードはもとより電源ユニットについても、各メーカー間の互換性が飛躍的に向上した。その後、AT電源は姿を消していき、現在では省スペース型を除いたデスクトップPCの電源ユニットの多くがATX電源になっている。また、SFX電源も物理形状こそ異なるものの電気的特性は基本的にATX電源と同じ部分が多いので、ここでは、現在市場でも多く見られるATXのVer.2.0xに対応した電源ユニットを中心に解説していく。
規格名称 | 特徴 | サイズ |
ATX 2.03 | もっとも基本的な電源ユニットの規格。そのほかの電源ユニットの規格は、このATX2.03から派生している | 150×140×86mm |
ATX12V | ATX 2.03電源に+12V専用の電源ケーブル/コネクタを加えたもの | 同上 |
SFX | ATX電源のサイズをmicroATX向けに小型化したもの。-5V電源が省略されている | 100×125×63.5mmほか |
SFX12V | SFX電源に+12V専用の電源ケーブル/コネクタを加えたもの | 同上 |
現在のデスクトップPC向け電源ユニットの規格 | ||
省スペース型で見られる独自形状の電源ユニットも、電気的特性はSFXやSFX12Vなどに従っているようだ。 |
■写真や図で見るATX電源
ATX電源とはどんなものなのか、まずはPCから取り出した電源ユニット単体の写真から見ていこう。
ATX電源の電源ケーブル/コネクタ | ||||||||||||
接続先のデバイスによって、電源コネクタの形状や電圧の種類などが異なる。 | ||||||||||||
|
ATX電源のサイズの規定 |
これは設計ガイドに記されていたものの1つを抜粋したもの。空冷ファンや通気口、ラベルの位置などが細かく指示されているのが分かる。 |
関連リンク | |
デスクトップPC「Dimension」シリーズの製品情報ページ |
INDEX | ||
[連載]PCメンテナンス&リペア・ガイド | ||
第6回 意外に故障の多いパーツ「電源ユニット」の基礎 | ||
1. 電源ユニットが故障しているときの症状 | ||
2. 電源ユニット規格の歴史と種類 | ||
3. ATX対応電源ユニットの注意点 | ||
「連載:PCメンテナンス&リペア・ガイド」 |
- Intelと互換プロセッサとの戦いの歴史を振り返る (2017/6/28)
Intelのx86が誕生して約40年たつという。x86プロセッサは、互換プロセッサとの戦いでもあった。その歴史を簡単に振り返ってみよう - 第204回 人工知能がFPGAに恋する理由 (2017/5/25)
最近、人工知能(AI)のアクセラレータとしてFPGAを活用する動きがある。なぜCPUやGPUに加えて、FPGAが人工知能に活用されるのだろうか。その理由は? - IoT実用化への号砲は鳴った (2017/4/27)
スタートの号砲が鳴ったようだ。多くのベンダーからIoTを使った実証実験の発表が相次いでいる。あと半年もすれば、実用化へのゴールも見えてくるのだろうか? - スパコンの新しい潮流は人工知能にあり? (2017/3/29)
スパコン関連の発表が続いている。多くが「人工知能」をターゲットにしているようだ。人工知能向けのスパコンとはどのようなものなのか、最近の発表から見ていこう
|
|