連載 PCメンテナンス&リペア・ガイド 第7回 電源ユニット選びと実際の交換作業
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前回の「第6回 意外に故障の多いパーツ『電源ユニット』の基礎」では、電源ユニットの規格など、故障した電源ユニットの交換に必要な基礎知識を解説した。今回は、交換用電源ユニットを購入するときに気を付けるべきポイントと、実際に電源ユニットを交換する作業について解説する。
電源ユニットのスペックを把握する
電源ユニットを購入する前に、まずしなければならないことは、PCに搭載されている元の電源ユニットのスペックを確認することだ。前回解説したように、電源ユニットにはさまざまなスペック項目がある。たとえATX規格に準拠した電源ユニット同士でも、電源容量などのスペックが異なるのは、いわば当たり前のことだ。従って、元の電源ユニットのスペックを調べ、それに合致した(あるいはそれを上回る)新しい電源ユニットを選ぶ必要がある。
しかし、PCのカタログやマニュアルのスペック表などに掲載されているのは、電源ユニットの総出力容量程度で、そのほかのスペックは実際に搭載されている電源ユニットを見て調べないと分からない。交換作業の前に、チェックすべき電源ユニットのスペック項目とその調べ方、新しい電源ユニットのスペックの決定方法を解説する。
電源ユニットの対応規格を調べるには
まず最初に、元の電源ユニットの対応規格(ATXなど)を確認しよう。現在市販されている電源ユニットは、原則としてATXかSFX(マイクロタワーなど小型PC向けの電源ユニットの規格)に対応している汎用品なので、このいずれかの規格にも対応していない独自仕様の電源ユニットだと、市販品とは交換できない可能性が高い。
しかし、電源ユニット自体には対応規格に関する記述はない場合がほとんどだ。電源ユニット単体で購入する場合などには、「ATX 2.03対応」などと電源ユニットのスペック表に表記してあるので確認できるが、PCに組み込まれている電源ユニットが、どの規格に対応しているかを正確に調べることは難しい。
だが電源ユニットの外形寸法を調べると、ATXかSFXか、それとも独自仕様なのかというおおざっぱな判断は可能である。各規格の外形寸法は以下のとおりだ。
規格の名称 | 外形寸法 |
ATX 2.0x | 幅150×奥行き140×高さ86mm |
SFX(A) | 幅100×奥行き125×高さ50mm |
SFX(B) | 幅100×奥行き125×高さ63.5mm(ファンの厚み17.1mm)*1 |
SFX(C) | 幅125×奥行き100×高さ63.5mm(ファンの厚み17.1mm) |
SFX(D) | 幅100×奥行き125×高さ63.5mm |
PS3 | 幅150×奥行き100×高さ86mm |
電源ユニットの各規格における外形寸法 | |
各寸法は、外部電源コネクタのある面を横長に配置したときに、(幅)×(奥行き)×(高さ)として表記している(突起部は除く)。ATX 2.0xでは単一だが、SFX 2.xでは4種類の外形寸法が規定されている。「PS3」とはATX 2.0x対応電源ユニットの奥行きを100mmに縮めたもので、一部のマイクロタワー型ケースで使われている。市販品も存在するが製品の数は多くはない。 | |
*1 (B)と(D)は外形寸法が同じだが、この(B)の電源ユニットでは、空冷ファンが下側に出っ張っている点が異なる((C)も同じ)。実質的な高さは、63.5mm+ファンの厚み17.1mm =80.6mmになる。 |
元の電源ユニットの外形寸法が上記のうちどれかと同等なら、その規格に対応した電源ユニットである可能性が高い。逆に外形寸法がどれとも大幅に異なるようなら、その電源ユニットはそのPCベンダの独自仕様と思われるので、市販製品との交換はあきらめ、PCベンダに修理を依頼したり、交換用電源ユニットをPCベンダから取り寄せたりするしかない。ちなみに、本連載で使用しているデルコンピュータのデスクトップPC「Dimension 4100」は、ATX 2.0xと同じ寸法の電源ユニットを装備していた。
特に省スペースPCの場合は、小型ケースにすべてのパーツを収めるため、ベンダごとに独自形状の電源を採用していることが多い。自分で判断するより、PCベンダに問い合わせた方が無難だ。
ATX/SFX非対応の電源ユニットの例 |
これはブックシェルフ型の省スペースPCに内蔵されていた電源ユニット。左がCeleron搭載PCのもので、右がPentium 4搭載PCのものだ。外形寸法はATXにもSFXにも合致しない(電源容量など電気的特性は規格に従っていることが多いが)。 |
電源ケーブルのコネクタの種類も要チェック
市販品で電源ユニットを交換できるかどうかを見極めるには、電源ケーブルのコネクタのうち、ATX/SFX規格に含まれない独自のものがないかどうかも確認する必要もある。PCによっては、マザーボードへの電力供給を安定させるなどの目的のため、規格に含まれない電源コネクタをマザーボードと電源ユニットに追加していることが、たまにある(下の写真参照)。このような独自の電源コネクタも、汎用品である市販の電源ユニットではカバーしきれないため、電源ユニットの交換はPCベンダに頼ることになる。
独自の電源コネクタ/ケーブルの例 |
これはDimension 4100の電源ユニットから延びている電源ケーブル。電源ユニット自体はATX 2.0xと同じ寸法だが、のコネクタは独自の電源ケーブルである。ATX 2.0xで規定されている予備電源コネクタ(AUX Power Connector)と形状は同じだが、各ピンの出力電圧が異なるため、これと互換性のある市販品を見つけるのは難しいだろう。以外の電源コネクタはATX電源ユニット標準のものだ。 |
関連記事 | |
第6回 意外に故障の多いパーツ『電源ユニット』の基礎 | |
資料
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ケーブル&コネクタ図鑑 |
関連リンク | |
デスクトップPC「Dimension」シリーズの製品情報ページ |
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[連載]PCメンテナンス&リペア・ガイド | ||
第7回 電源ユニット選びと実際の交換作業 | ||
1. 電源ユニットのスペックを把握する(1) | ||
2. 電源ユニットのスペックを把握する(2) | ||
3. 電源ユニットを交換する | ||
4. 電源ユニット交換後のトラブルシューティング | ||
「連載:PCメンテナンス&リペア・ガイド」 |
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