ロードマップ
AMDのプロセッサ ロードマップ(2000年11月版) |
AMDは、2000年11月9日に米国で開催した「Annual Analyst Meeting」において2002年上半期までの新たなプロセッサ・ロードマップを公開した(AMDの「Annual Analyst Meeting」に関するページ)。ここでは、このミーティングで配布されたプレゼンテーション資料を元に、AMDの2002年上半期までのプロセッサ・ロードマップを紹介する。AMDは、動作クロックとアーキテクチャの変更により、18カ月で2倍以上の性能向上を実現するとしており、これまでにないアグレッシブな計画を立てている。なお、2000年6月時点のロードマップは、「ロードマップ:AMDのプロセッサ ロードマップ」を参照していただきたい。
AMDの2002年上半期までのロードマップ(「Annual Analyst Meeting」のプレゼンテーション資料から) |
図中のAthlonおよびDuronのキャッシュ容量は、128Kbytesの1次キャッシュに2次キャッシュを合計したもの。 |
Athlonはさらに高クロック対応に
2001年上半期に入ると、Athlonに2度目の設計変更が加わり、開発コード名「Palomino(パロミノ)」になる。ちなみに1度目は、現在のAthlonである開発コード名「Thunderbird(サンダーバード)」で呼ばれていたもので、2次キャッシュをプロセッサ・ダイに同梱した。Palominoでは、デュアル・プロセッサ対応や1.5GHz以上の高い動作クロックのサポート(2001年第2四半期以降)、0.13μmプロセスによる製造(2001年第4半期)が行われる。Palominoでは、2次キャッシュ増量や大幅な設計変更は行われていないようだ(以前のロードマップにあった、2次キャッシュ増量版の開発コード名「Mustang(ムスタング)」はキャンセルされた)。
一部報道によると、今回のCOMDEX/Fall 2000で報道関係者に動作クロック1.5GHzで動作するPalominoを公開したようだ。実際の製品は、2001年の第1四半期に1.2GHz版から出荷する予定となっている。
なおAMDでは、Palominoの発表に併せ、デュアル・プロセッサをサポートするチップセットとして、AMD-760MPをリリースする。AMD-760MPは、2000年10月30日に正式発表されたAMD-760チップセットをベースにデュアル・プロセッサ対応としたもの(「AMD-760チップセット」に関するニュースリリース)。AMD-760は、200MHzおよび266MHzのFSB(フロンド・サイド・バス)やDDR SDRAM、4x AGPのサポートといった特徴を持っており、これらの特徴はAMD-760MPにも引き継がれる。AMDは、PalominoとAMD-760MPのシステムを主にワークステーションならびにサーバ向けに提供することを計画している。これまで、AMDはクライアントPC向けのプロセッサを主体としてきたが、PalominoとAMD-760MPによってハイエンド市場にも進出を考えているようだ。ただ、この市場は性能だけでなく、信頼性や安定性も重視される。これまでのAthlonの実績が有効に働くかどうかが成功の鍵を握ることになるだろう。
Palominoには、デスクトップPC向けと同時に、省電力機能「PowerNow!」をサポートしたノートPC向けも用意されている。2001年内に動作クロックが1GHz以上バージョンを提供する予定だ。これまでAMDは、IntelのMobile Pentium IIIに対抗するプロセッサを持っていなかった。PalominoのノートPC向けの登場によって、ハイエンドのノートPCでもIntel対AMDの競争が起きることになる。
Duronにも設計変更が加わる
バリューPC(低価格PC)向けのDuronにも変更が加えられる。開発コード名「Morgan(モーガン)」で呼ばれるDuronの改訂版は、Palominoと同様の設計変更が行われる予定だ。ただし、Morganではデュアル・プロセッサの対応は行われないだろう。Morganは、2001年第2四半期に動作クロック800MHz以上で出荷される予定だ(サンプル出荷は第1四半期から)。またMorganには、ノートPC用もラインアップされる。それまで低価格ノートPC向けに販売してきたAMD-K6-2+/III+は、この時点でDuronに置き換わり、AMDのプロセッサはすべてAthlonファミリとなる。
AMDは、Morganの登場に合わせて、グラフィックス機能を同梱したチップセットが出荷されることを期待しているようだ(AMD自身がグラフィックス機能内蔵チップセットを出荷することはないと思われる)。現在のバリューPCの主流は、Celeronにグラフィックス機能を内蔵したチップセット(Intel 810/815E、SiS 630)を組み合わせた、8万円を切るような低価格を実現したものだ。Duronでは、グラフィックス機能を内蔵したチップセットがないため、別途グラフィックス・カードが必要になり、Celeronに比べるとシステム価格が高くなりがちだ。AMDとしては、Duron向けにグラフィックス機能を内蔵したチップセットが出荷されることで、バリューPCの市場で性能だけでなく、システム価格面でもCeleronと対抗できるようになることを期待しているのだろう。
実は、Athlon/Duron向けのグラフィックス機能を同梱したチップセットとしては、すでにSiSが「SiS 730S」を、VIA Technologiesが「ProSavage KM133」をそれぞれ発表している(「ニュース解説:Intelに競合するチップセット・ベンダの動向」参照)。しかし、これらのチップセットを搭載したマザーボードは、未だに正式に出荷されていない(原因は不明)。これらのチップセットが、早急に出荷されれば、確かに現在のIntelのCeleron+i810/i815Eの市場に喰い込むことも可能かもしれない。
AMD初の64bitプロセッサ「Hammerファミリ」
「ニュース解説:64bitプロセッサで別々の道を歩き始めたIntelとAMD」で解説したように、AMDは独自に64bitアーキテクチャ「x86-64アーキテクチャ」を開発している。x86-64アーキテクチャを採用した最初のプロセッサは、開発コード名「Hammer(ハマー)ファミリ」と呼ばれる2製品となる。
まず、2002年第1四半期にデュアル・プロセッサまでをサポートした開発コード名「ClawHammer(クロー・ハマー)」が出荷される。ClawHammerは、0.13μmプロセスで製造が行われ、100平方mm以下のダイ・サイズを実現するという。残念ながら動作クロックなどは明らかになっていない。続いて、2002年第2四半期には、最大8個までのマルチプロセッサに対応した開発コード名「SledgeHammer(スレッジ・ハマー)」が出荷される。SladgeHammerでは、ClawHammerに対し、2次キャッシュ容量の拡大も行われる。Hammerファミリでは、大幅なマイクロ・アーキテクチャの変更を行い、動作クロックの大幅な向上を達成すべく開発が行われている。
Hammerファミリは、64bitプロセッサということで、IntelのItaniumに対抗するものという意見が多いが、このような開発目標を見ると、むしろPentium 4のサーバ版(Pentium 4 Xeonとなるのか不明だが)が競合製品となりそうだ。
AthlonとDuronは0.13μmプロセスに
2002年第1四半期には、デスクトップPCおよびノートPC向けのAthlonが、Palominoをベースにさらに改良を加えた、開発コード名「Thoroughbred(サラブレッド)」となる。製造には0.13μmプロセスを採用し、高速化、小型化、低消費電力化を実現する。Palominoにも0.13μmプロセス版が計画されていることから、Thoroughbredではさらに設計の変更が加わる可能性が高い。
また2002年第2四半期になると、DuronがMorganをベースに0.13μmプロセスで製造した開発コード名「Appaloosa(アパルウサ)」に変わる。これは基本的には、ThoroughbredのDuron版となる。
以上が2002年上半期までのAMDのロードマップだ。Intelは、Direct RDRAMの失速の影響から、Pentium IIIからPentium 4の移行に時間がかかりそうだ。その間隙(かんげき)を縫って、AMDがどれだけAthlonでシェアを伸ばせるのかが、2001年から2002年にかけての注目ポイントとなるだろう。また、AMDの64bitアーキテクチャ「x86-64アーキテクチャ」を採用したHammerファミリの性能も気になるところである。
関連記事(PC Insider内) | |
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Intelに競合するチップセット・ベンダの動向 | |
64bitプロセッサで別々の道を歩き始めたIntelとAMD |
関連リンク | |
AMD |
AMDのホームページ |
日本AMD |
日本AMDのホームページ |
AMDの「Annual Analyst Meeting」に関するページ | |
「AMD-760チップセット」に関するニュースリリース | |
SiS 730Sに関するニュースリリース | |
ProSavage KM133に関するニュースリリース |
「PC Insiderの資料集」 |
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