特集 Athlonプラットフォームの可能性を広げるAMD-760チップセット 澤谷琢磨/デジタルアドバンテージ |
AMDは1999年、最初のAthlonプロセッサと同時に、自社製チップセットAMD-750をリリースした。それまでAMDは、CPUバスもIntelと互換のプロセッサを開発してきたため、独自にチップセットを開発する必要はなかった。例えば、AMD-K5/K6では、Pentium/MMX Pentiumと互換性のあるCPUバスを使っており、Pentiumと同じチップセットが利用できたからだ。ところがAthlonでは、独自のCPUバスを採用したため、自社でチップセットを開発するか、VIA TechnologiesやSiSといったサードパーティに開発を依頼するしかなかった。
AMD純正チップセットの存在理由
サードパーティが開発を行う場合、AMDは開発を直接コントロールすることができないため、プロセッサの出荷時期にチップセットの開発・生産が間に合わない可能性がある。そうなると、Athlon自体の市場の立ち上げに失敗する可能性もある。そこで、AMDは自社でもチップセットを開発し、そのチップセットをリファレンスとすることで、サードパーティのチップセット開発を促進することにした。こうした努力(?)のおかげか、AMD-750搭載マザーボードはAthlonプロセッサとほぼ同時にリリースされ、Athlonの市場をスムーズに立ち上げることに貢献した。
2000年にAthlonのパッケージは、Slot A(カートリッジ型)からSocket A(PGAパッケージ型)に移行した。AMDはこのときもAMD-750によるリファレンス・デザインを準備して、万一の場合に備えていた。実際には、Socket Aに最適化されたVIA Technologies製Apollo KT133チップセットが順調に供給されたため、より古いAMD-750を採用したSocket A対応マザーボードはほとんど出荷されなかった。
AMD純正のDDR SDRAM対応チップセット「AMD-760」
AMDはライバルのIntelとは異なり、チップセットについては、サードパーティを重視する姿勢を保っている。にもかかわらず、AMDが新チップセットを投入するということは、上記のように自社のプラットフォームに大きな変更を加えることを意味する。つまり、本稿で解説する新型チップセット「AMD-760」にも、Athlonプラットフォームを大きく変える「何か」が存在するはずなのだ。
AMD-760チップセットは、AMDがAthlon/Duronプロセッサ向けに新たに投入するチップセットである。2000年末現在、一部ではすでにリテール・マーケットに流通しており、2001年初めにはAMD-760を採用した製品が広く流通することが予想される。AMD-760の機能を探ることは、AMDがAthlon採用プラットフォームを今後どの方向へ導こうとしているのかを知ることにつながる。そこで、AMD-760について、新機能を中心に解説しよう。
AMD-760を構成するAMD-761(左)/AMD-766(右) |
|
AMD-760は、ノースブリッジのAMD-761とサウスブリッジのAMD-766という2チップ構成のチップセットである。AMD-761はCPUバス(FSB:フロントサイド・バス)とメモリ・バス、そしてAGP機能を提供し、AMD-766はIDEやUSBのコントローラなど、I/O関連の機能を提供する役割を担う。なお、写真は試作品を撮影したため、AMD-766の型番がAMD-757と印刷されている。 |
関連記事(PC INSIDER内) | |
技術解説:次世代標準メモリの最有力候補「DDR SDRAM」の実像 | |
ニュース解説:AMDのDDR SDRAM対応プラットフォームの発表で次世代メモリの標準化が決着!? | |
ニュース解説:Intelに競合するチップセット・ベンダの動向 |
INDEX |
||
[特集]Athlonプラットフォームの可能性を広げるAMD-760チップセット | ||
1.AMD-760の新機能を探る | ||
2.DDR SDRAM+AMD-760の性能 | ||
3.AMD-760による性能向上のヘッドルームの確保 | ||
「PC Insiderの特集」 |
- Intelと互換プロセッサとの戦いの歴史を振り返る (2017/6/28)
Intelのx86が誕生して約40年たつという。x86プロセッサは、互換プロセッサとの戦いでもあった。その歴史を簡単に振り返ってみよう - 第204回 人工知能がFPGAに恋する理由 (2017/5/25)
最近、人工知能(AI)のアクセラレータとしてFPGAを活用する動きがある。なぜCPUやGPUに加えて、FPGAが人工知能に活用されるのだろうか。その理由は? - IoT実用化への号砲は鳴った (2017/4/27)
スタートの号砲が鳴ったようだ。多くのベンダーからIoTを使った実証実験の発表が相次いでいる。あと半年もすれば、実用化へのゴールも見えてくるのだろうか? - スパコンの新しい潮流は人工知能にあり? (2017/3/29)
スパコン関連の発表が続いている。多くが「人工知能」をターゲットにしているようだ。人工知能向けのスパコンとはどのようなものなのか、最近の発表から見ていこう
|
|