第1回 RFIDを利用した業務システム開発の心得
西村 泰洋
富士通株式会社
ユビキタスシステム事業本部
ビジネス推進統括部
ユビキタスビジネス推進部
担当課長
2006年4月18日
RFIDシステム本導入までの流れを把握する
RFIDシステムを本番運用のシステムとして導入するためには、図2のようなフェーズ分けをして進めていきます。意外に思われるかもしれませんが、業種・業務が異なっていてもおおむねこのような進め方になります。筆者の経験からも、システム導入の結果からも、このような工程が正しいステップです。
また、導入に至るまでのステップには、さまざまなノウハウがあります。実際のプロジェクトでは、全体の進め方とノウハウを合わせたものがコンサルティングとして提供されます。
図2 RFIDシステム導入までの流れ(画像をクリックすると拡大します) |
第1フェーズでは、さまざまなテストを実施し、実測値を収集して評価分析を行います。テストは実際の業務環境ではなく、疑似環境を構築して実施する場合もあります。ここでの目的は、業務・対象物・利用環境に適したハードウェアの選定です。
第2フェーズでは、パイロットシステムを開発して実際の業務の一部をテストします。業務プロセスの中で、RFIDシステムがどのように使われるのかを確認し、最適なソフトウェア処理を見いだすという点で重要なフェーズです。
第3フェーズでは、第1、第2フェーズにおける活動で得られた評価分析を基に、RFIDシステムを実際の業務システムとして利用します(一部導入)。例えば、製造業であれば工場の1ラインを対象に、流通業であれば先行店舗や限られた商品を対象にする形で導入を進めていきます。ただし、ICタグに入っているデータが上位の基幹システムと連携して処理がされるのであれば、この時点で本導入と定義することができます。
第3フェーズ以降はこのシステムを横展開していくということになります。なお、第1フェーズに関しては明確に独立したフェーズとして切ることができますが、第2フェーズと第3フェーズは一緒に進める場合が多いです。
コンサルティングの観点から見ると、RFIDシステム導入のコンサルティングのポイントは、経営や業務コンサルティングというよりも純然たるIT(技術)コンサルティングです。コンサルティングファームがこの分野への着手に遅れている理由はここにあります。
システム開発の全体工程のおけるRFIDシステム導入作業
前段で説明したRFIDシステム導入までのステップを、業務システム開発と合わせて行っていく場合においてどこに位置付けるべきかを見ていきたいと思います。
実際の業務での導入の場合には、RFIDが対象企業の業務環境で使えるようならば使うという場合(第1フェーズを業務システム開発と切り離して実施し、その結果が良ければ導入に向けて進めていく)と、使えるという前提に立ち、RFIDシステムの導入作業を業務システムの開発工程と並行して進めるという場合があります。
後者の場合、通常のシステム開発の工程に加えてRFIDシステムの導入に必要な作業が発生します。例えば、図3のようなフェーズ分けで業務システムの開発を進めていく場合を考えてみます。
図3 システム開発の全体工程におけるRFIDシステム導入作業 |
この場合、概要設計と詳細設計の前半辺りまでに、RFIDシステム導入のための各作業を進めます。基本的には、フィージビリティスタディ、ハードウェア選定、外部・内部設計の順番で進めていきますが、業務によっては最初にICタグに入れて読み書きしたいデータのレイアウトを固めるところから始めて逆向きにさかのぼっていく方法もあります。
開発・製造フェーズでは、RFIDシステムに特有のリーダ/ライタにかかわる開発作業が発生します。テストフェーズでは再びフィージビリティスタディが必要となります。ほかのシステムと比較してRFID部分は運用テストの比重が大きくなることに注意が必要です。
開発以降の各フェーズでは、開発・テスト・設定変更・内部設計といった小さいサイクルをスパイラルに繰り返しながら業務への最適化を図っていきます。開発・製造フェーズでは開発担当者の机上で、終盤は現場で小さなサイクルを回していくことになります。
次回はRFIDシステム導入に特有な作業を紹介します。
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Index | |
RFIDを利用した業務システム開発の心得 | |
Page1 縁遠いRFIDシステムを身近なものにするために RFIDシステムを成功させるキーファクター RFIDの基本中の基本を確認する |
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Page2 RFIDシステム本導入までの流れを把握する システム開発の全体工程のおけるRFIDシステム導入作業 |
Profile |
西村 泰洋(にしむら やすひろ) 富士通株式会社 ユビキタスシステム事業本部 ビジネス推進統括部 ユビキタスビジネス推進部 担当課長 物流システムコンサルタント、新ビジネス企画、マーケティングを経て2004年度よりRFIDビジネスに従事。 RFIDシステム導入のコンサルティングサービスを立ち上げ、自動車製造業、流通業、電力会社など数々のプロジェクトを担当する。 著書に「RFID+ICタグシステム導入構築標準講座(翔泳社)」がある。 |
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