第5回
テーブルを介したコミュニケーションデザイン
株式会社内田洋行
次世代ソリューション開発センター
UCDチーム
2008年7月23日
ユビキタス空間において求められるユーザーインターフェイスの形とは何か。若手技術者と若手クリエイターが、ユーザー中心の視点に立った空間デザイン論を考える(編集部)
連載第1回では、これからの「場づくり」に求められる全体像を、第2回、第3回では、私たちの開発したプロダクトをUCD(User-Centered Design:利用者の行動を中心に置いたデザイン)的な観点から、第4回では「商業空間での場づくり」について紹介しました。
今回は、TUI(タンジブルユーザーインターフェイス)を用いて、テーブルを介したコミュニケーションデザインを実現した「場づくり」を取り上げます。
コミュニケーションをデザインするテーブル「TangibleTable」
人と人とのコミュニケーションと、テーブルのある「場」には、深い関係があると私たちは考えています。
テーブル上に飲み物を置いたり、本を置いたり、また、テーブルクロスをひいて料理を置いたりと、シーンに応じてテーブルトップや引き出しにあるマテリアルを変えることで、テーブルに集まる人々のコミュニケーションのあり方が変わります。
テーブルには、色々なマテリアルが存在しますが、そこにサイバーな情報が存在する「場」というのは、これまであまり見受けられませんでした。「テーブルのある『場』にITの要素が入ると、どのようなコミュニケーションが生まれるのか」。これを探るために、今回の開発プロジェクトは始まりました。
皆さんは「タンジブル(もしくはタンジブルビット)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
タンジブルとは、石井裕氏(マサチューセッツ工科大学教授、2008年6月現在)が提唱する新しいユーザーインターフェイスの概念です。
タンジブルには、「実体のある・触れることができる」という意味があります。特にコンピュータシステムにおいて、実態のある・触れることができるユーザーインターフェイスのことをタンジブルインターフェイスといいます。
「TangibleTable」は、タンジブルインターフェイスを指向したテーブル型のファニチャー(家具)です。引き出しの中にあるさまざまなモノを使って、そのモノにまつわる“情報”を引き出したり、操作したりできます。引き出された情報は、天板上のディスプレイに表示されたり、音楽となったり、照明の光度を変化させたりという形で表出されます。
ただ“情報を見せる”だけではなく、それを操作する方法を与えることによって、人と人、人とシステムの間にインタラクションが発生し、そこにコミュニケーションが活性化する「場」をTangibleTableは提供しています。
タンジブルの思想は、「デジタルの世界とリアルの世界を実物でつなぎ合わせる」ことにあります。誰にとっても分かりやすく、使いやすく、かつ「楽しい」システムを用意し、皆でわいわいと集えるような、そんな空間を提供する。システムと人の間とのやりとりだけでなく、これを媒介として、人と人、フェイストゥーフェイスのコミュニケーションがいっそう進む「場」をつくり出す。TangibleTableの狙いはそこにあります。
コミュニケーションからクリエイションへ
かつて、日本の企業の競争力の中心は高い技術力や品質でした。しかし、近年企業に求められるものは「人間のクリエイティビティ(創造性)」だといわれています。クリエイティビティを発揮するためには、いくつかの段階があると私たちは考えます。
図1 クリエイティビティを発揮するためのステップ |
組織でクリエイティブな活動を行うためには、コラボレーションが必要です。コラボレーションとは、それぞれ異なった専門性や文化を持った人や組織が、対等な関係で新たな価値を築くことです。
また、コラボレーションを行うためには、複数間で相互の意思疎通を図るためのコミュニケーションが円滑に行われていることが前提となります。このように、すべての活動のベースとなる「コミュニケーション」を促進させる目的でTangibleTableは制作されました。
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Index | |
テーブルを介したコミュニケーションデザイン | |
Page1 コミュニケーションをデザインするテーブル「TangibleTable」 コミュニケーションからクリエイションへ |
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Page2 テーブルを介した「コミュニケーションデザイン」 展示品を置かないミュージアム(博物館) |
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Page3 「触れる」コンテンツで人とモノ、人と人のインタラクションを発生させる コミュニケーションを生む要素を盛り込むことの重要性 ニーズを実現するための技術と、「場」を演出する仕組み |
モノ/ヒトをつなぐこれからの「場」のデザイン |
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