第1回 RFIDエンジニアが抱える課題から生まれてきたもの


吉田 光伸
日本オラクル株式会社
システム製品統括本部
アドバンストソリューション本部
RFIDビジネス推進部
部長
2006年8月1日
RFIDの技術的な理解は進んだ。これからは、RFIDを使ってどのようなシステムを構築していくべきかが問われる。RFIDシステム構築エンジニアに必要なスキルと知識を解説する(編集部)

 さまざまな企業で着実に進んでいるRFIDシステムの導入。すでに実験の段階は終わったといってよいのではないでしょうか。

 以前は、「RFIDとは一体どういった技術なのか?」「どういった特徴を持っているのか?」「何ができて、何ができないのか?」といった、RFIDというテクノロジ自体が一体何物なのかといった質問が飛び交っていました。しかし、ここ数年における官主導の実証実験や企業自体の実証実験の結果がさまざまなメディアによって公にされ、今日ではナレッジが業界全体に蓄積されてきております。

 RFIDの技術自体の理解は進みました。では、この技術を活用してどうシステムを構築していくべきか(システムインテグレーション)、企業活動においてどのようにROI(投資対効果)を出していくか(ビジネスコンサルティング)、RFIDシステムと既存システム、新規アプリケーションをどう連携させていくか(SOA:サービス指向アーキテクチャ)を真剣に検討する段階になってきております。

 本連載では、これからRFIDのシステムを構築していくシステム構築担当者、システムエンジニアに対して、上記の視点で有益な情報を提供していきたいと思います。

 実用段階に入りつつあるRFIDのいま

 おさらいになるかとは思いますが、RFIDとは「Radio Frequency IDentification」の略語で日本では一般的に無線ICタグと呼ばれています。微小な無線チップ(RFIDチップ)によりヒトやモノを非接触で識別・管理する仕組みの総称です。

 数ミリ四方程度の大きさのチップにデータを記憶し、電波や電磁波を介してリーダ/ライタと呼ばれるRFID専用の読み取り機器と無線で交信をすることでRFIDチップ内のデータをセンターシステム側に送信することが可能になります。RFIDタグとリーダ/ライタの通信距離はベンダによって数ミリ程度のものから数メートルのものまであり、用途に応じて使い分けを行うことが一般的です。

 近年の技術革新によるチップ価格の低減化、リーダ/ライタの性能の飛躍的な向上、電波法改正などの規制緩和、また電子マネーや電車の改札機での入出場で利用されている非接触ICカードやETC(自動料金収受システム)の普及により、企業ユースだけではなく、コンシューマレベルにも利用・認知されてきているこの技術に、ユビキタス社会の切り札としての期待が大いに寄せられています。

 近年では企業での活用においても官主導でさまざまな業界においてRFIDを活用した業界内、また業界横断的な本格的実証実験が実施されてきております。こういった官主導での実証実験の結果は、詳細レポートが簡単にWebサイトからダウンロードできます。

【参考リンク】
経済産業省平成17年度 電子タグ実証実験結果報告資料一覧

 こうした資料を活用することにより、業界ごと、ユースケースごとのRFID自体の使い勝手(通信距離、読み取り率など)の勘所はこれらのレポートからも大まかにつかむことはできるかと思います。

 現段階では企業内に閉じた利用が多いRFIDシステムですが、将来的には、ワールドワイドでオープンサプライチェーン(例えば、中国で生産したものを日本に輸出して、日本経由で最終的にアメリカへ出荷するといった業務イメージ)において、RFID技術の活用が期待されています。

 そのため、国際的なRFIDの標準化機関であるEPCglobalが技術面・ビジネス面での世界標準化活動として、各種仕様の標準化を積極的に進めております。ここ数年でいくつかの標準仕様が確定され、ISOにも認可されてきており、かなり現実味を帯びたものになってきている状況です。

 海外ではウォルマート(Wal*Mart)やベストバイ(Best Buy)など国際的にも有名な大手流通業者が本採用を決めるなど本格的な利活用が促進されてきている状況です。日本においても現段階では製造業・物流業を中心に本格運用の兆しが見えてきております。

 
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Index
RFIDエンジニアが抱える課題から生まれてきたもの
Page1
実用段階に入りつつあるRFIDのいま
  Page2
RFIDエンジニアに求められるものは何か
RFIDシステム構築の課題
  Page3
RFIDミドルウェアに対するニーズ


RFIDシステム構築エンジニアへの道 連載インデックス


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