第3回 OさんはいかにしてRFIDプロフェッショナルとなったのか
西村 泰洋
富士通株式会社
ビジネスインキュベーション本部
開発部
RFIDビジネス
担当課長
2007年4月9日
現在、急激に成長を続けているRFIDシステム構築。本連載はRFIDシステムエンジニアと名乗れるプロフェッショナルになるためのバイブルである(編集部)
本連載では、RFIDプロフェッショナルになるために必要な2つのトレーニング―「RFIDシステムの基礎トレーニング」と「業務分析・利用シーン想定のトレーニング」―について解説してきました。
今回は、1人の業務システムエンジニアがRFIDプロフェッショナルになるまでの道のりを紹介したいと思います。読者の皆さんにも、より身近に、より具体的にそのステップが理解いただけるものと考えています。
Oさんは、2006年11月にRFIDビジネスの拡大に向けて私のチームに配属になりました。もともとは業務システムエンジニアであり、SEとしてさまざまなシステム構築の経験をしていました。しかし、配属された段階では、RFIDについて単語レベルで認識しているだけでシステムの詳細を理解していませんでした。
配属から約4カ月(本稿執筆時)、Oさんは大手企業のRFID導入支援を担当するなど、お客さまから見てもRFIDシステムプロフェッショナルとして活躍しています。
第3のキーファクター:現場対応力
本連載の第1回でRFIDシステムについてのトレーニングを、第2回では業務分析・利用シーン想定についてのトレーニングについて解説しました。現実には、いうまでもないことですが、これらに加えて「現場対応力」というものが必要になります。
SEや営業マンであれば、日常何げなくお客さまとコミュニケーションを持っています。現場対応力とは、お客さまと会話をし、業務/システムのインタビュー、プレゼンテーション、現場見学、コメント、実作業といったコミュニケーションの際に、RFIDシステムを意識したコミュニケーションができるということです。
例えば、コミュニケーションにおいて、あまりにRFIDシステムに特化してはいけません。逆に、全く意識させないのも良い印象を得ることは困難となるでしょう。“適度に”RFIDシステムの話を踏まえるためには経験が必要なのです。
先の連載である「RFIDシステム導入バイブル」の第4回「導入現場で気を付けたい『BPOE』の視点」で解説しましたが、業務(Business Process)、対象物(Object)、利用環境(Environment)という視点でお客さまと討議ができるか、あるいは、対象物や利用環境によって性能の変動があり得ることを説明できるかなど、ポイントを押さえた会話をしなければなりません。
現場対応力は、RFIDシステムの基礎トレーニングと業務分析・利用シーン想定のトレーニングを進めながら、並行してお客さまと会話をしていくことで徐々に身に付いていきます。
Oさんの最初の2週間
Oさんの経歴から、業務分析・利用シーン想定についてのトレーニングは不要と判断しました。できるだけ早期にRFIDプロフェッショナルになってほしいことから、現場対応力の養成を先行させながら、その裏でRFIDシステムの基礎トレーニングを行っていくという手法を選択しました。
最初の2日間は、
1日目:基礎知識の習得、ハードウェア/ソフトウェアに触れる
2日目:通信範囲を体験する、対象物の影響の有無を確認する
ということをしてもらいました。
また、当初から分かっていたことですが、Oさんの配属3日目に大手顧客でのプレゼンテーションの計画があったので、本人にそれを話しました。いきなりではありますが、1日目、2日目でRFIDシステムの基本をつかみ、3日目にはRFIDシステムのプレゼンテーションならびにデモンストレーションを実施させたのです。
そこでお客さまの視点を理解したOさんは、その後も何回かの顧客訪問をこなしながら、
- 設置位置、貼付位置の違いによる性能の変動
- 一括読み取り
- ユーティリティソフト、API、ドライバ、プログラミングの理解
- さまざまな周波数帯の機器評価
などのRFIDシステムの基礎を1カ月程度で習得しました。
ある鉄鋼関連企業での実証実験
Oさんの配属にやや遅れて、鉄鋼関連の大手企業で、薄い鋼板にRFIDタグを貼付して管理をしたいという実証実験のプロジェクトがありました。
こちらの現場では、会議室の床くらいの大きさの薄い鋼板(5〜10メートル四方、厚さ5〜20ミリ程度)が、人の背丈くらいに積み上げられています。その鋼板の側面にRFIDタグを貼付して、リーダ/ライタを側面からかざして、積み上げられた山から欲しい鋼板を認識して、間違いなくピッキングしたいという要件でした。
それまでは、側面にシールを貼付して、それを目で追って確認する方法を取っていました。しかし、鋼板は200枚程度は積んであり、どのように探してもお目当てのシールまたは鋼板を探すのに、かなりの時間がかかっていました。また、鋼板の重なり具合によってはシールも見えないことからバーコード利用も断念していました。
このお客さまは、RFIDタグであれば通信距離も確保できるし、回り込みなどでデータの読み取りも可能であることから、RFIDシステムを活用して業務効率化を図りたいと考えていました。
私が経験した鉄鋼関連が対象物となるRFIDシステムには、人の背丈くらいある大きなコイルや本件に比べると大きさや厚みが均等に近い鋼板の管理がありました。しかし、本件のように屋外で、貼付すべき側面の厚みが薄く、しかもバラバラで無造作に重ねられている業務は初めてであり、適用自体がかなり厳しいのではと思いました。
また、先行して進めていたベンダが断念したという話も聞き及びましたので、現実的には苦しいのではと思いましたが引き受けることにしました。
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Index | |
OさんはいかにしてRFIDプロフェッショナルとなったのか | |
Page1 第3のキーファクター:現場対応力 Oさんの最初の2週間 ある鉄鋼関連企業での実証実験 |
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Page2 難問にOさんを実戦投入 お客さまへの報告から改善へ Oさんが実証実験を成功させた要因 |
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