第6回 自治体におけるSSFC実証実験の意味
高村 茂
株式会社日本総合研究所
総合研究部門
新社会システム創成クラスター
2008年7月9日
ICカード管理への抵抗感は使用するにつれて減少
実証実験に参加した職員から得られたSSFC機器利用に関する感想は以下のとおりです。
図1に示すように、実証実験開始当初は、いままでICカードをかざす必要がなかった機器への対応や都度ICカードをかざすというアクションが必要なことから、約7割の職員が「負担感がある」と回答しました。ちなみに、負担を感じる一番の原因は「ついICカードを自席に置き忘れてしまい、取りに戻らなければならないから」というものです。
ところが、1カ月もたちますとこの割合は逆転し、負担に感じなくなったという職員が7割を超えました。これは、SSFCの特徴でもある「現場のニーズに応じてセキュリティエリアや機器が追加されても、職員は十分に対応できること」を示していると考えられます。
図1 導入当初と実証後半の比較による機器使用の負担感の変化 |
次に、SSFC機器を利用してよかったと感じた点を図2にまとめました。「セキュリティが向上した」という職員が28%いますが、最も多かったのは「職員のセキュリティ意識が向上した」というもの(33%)でした。これは、ICカードを常に携行する、あるいは出入りともにICカードで本人認証をするといった行動が必要になることによって、都度セキュリティを意識させられることを示していると考えられます。
図2 SSFC機器を利用してよかった点 |
一般的に、各自治体ではセキュリティポリシーを策定して職員にも徹底しています。しかし、ポリシーを理解しつつも順守しないといった傾向が見られます。それに対して、全体システムとしてのセキュリティが未整備であっても、例えば親展印刷管理が導入されることによってセキュリティ意識が喚起されるのであれば、全庁職員への影響は大きいものになると考えられます。従って、このような効果が「職員のセキュリティ意識が向上した」という回答につながったものと理解しています。
一方、システム管理者としてのSSFC導入のメリットとして、
- 職員番号で各職員のセキュリティ権限を設定できるため、作業が楽である
- 職員にセキュリティ権限をあれこれ説明する必要がない(入れないところは権限がない)ので、システム導入後の職員からの問い合わせが減少した
- 全庁ログ管理が楽になりそうだ(現状ではインシデントが発生した場合にログデータを集め、突き合わせるのが膨大な作業になる)
といった点も挙げられました。
品川区におけるSSFCの実証実験は、期間も職員も限定で実施したことから職員全体の意向を把握できたわけではありません。しかし、今回の実証実験のように「一部の部署からでも導入できる」のがSSFCの大きな特徴であり、職員はその効果を実感したものと考えられます。
セキュリティ面での効果が検証されたSSFCですが、品川区の職員証は更新されずに従前のカードが継続して採用されることとなり、残念ながらSSFCフォーマットのICカードは職員証として採用されませんでした。
今後、ほかの公共関連団体にも実証実験などを働き掛け、SSFCの有効性についてアピールできればと考えています。なお、プレスリリース後、品川区へのTV取材のほか新聞4紙にも記事が掲載されました。品川区の協力を得て実施した実証実験は少なからず広報効果があったものと評価していることを最後に記しておきます。
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自治体におけるSSFC実証実験の意味 | |
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