IC CARD WORLD 2007レポート
非接触IC技術のトレンドは“マルチ”展開
岡田 大助
@IT編集部
2007年3月27日
非接触IC技術を活用したサービスが一般化してきた。ICカード関連の総合展示会「IC CARD WORLD」で見かけた最新ソリューションをレポートする(編集部)
ICカードとICタグの総合展示会「IC CARD WORLD 2007」が、3月6日から9日にかけて開催された。昨年同様、今年も会場の半分をFeliCa関連の展示を行う「FeliCa World 2007」として、にぎやかに最新サービスが展示されていた。
2006年の展示に比べると、全体的にすでにサービスを開始している、あるいは近いうちに開始が予定されている実用的なものが多くなっていた。背景には、生活の中で非接触ICカード技術を用いたサービスが一般化していることが考えられるだろう。
【関連記事】 非接触ICソリューションの最先端を追う(IC CARD WORLD 2006レポート) |
決済系サービスが一気に多様化、キーワードは「マルチ対応」
決済系サービスについては、IC CARD WORLD 2006と様子が大きく変わっていた。2006年の展示は、おサイフケータイとして利用されていたプリペイド型のEdyやSuicaが中心だったが、今年はQUICPay(モバイル決済推進協議会)やVisa Touch(VISA)、iD(NTTドコモ)、Smartplus(UFJニコス)といったクレジット型のサービスが存在をアピールしていた。
また、参考出展やサービスイメージなどのコンセプト展示が多かった去年に対し、サービスで利用する実機の展示、あるいは実際に決済を体験させる展示が多くなっており、来場者にとって身近になった非接触ICカードサービスの魅力を伝えていた。
これだけ決済系サービスの選択肢が多くなると、サービスを提供する店舗の対応が重要になってくる。店舗が「非接触IC決済に対応」という看板を出しているのであれば、消費者は自分が利用しているサービスで「ピッ」と決済を済ませてしまいたいと思うのが自然ではないだろうか。
そのためには、店舗側はシステム的に対応するだけでなく、サービスに対応したリーダ/ライタを物理的に用意しなくてはならない。上記6つのサービスすべてに対応したならば、キャッシャーはリーダ/ライタで埋め尽くされてしまうだろう。
ここまでは、IC CARD WORLD 2006でも挙げられていた課題だ。今年は、複数のサービスに対応するリーダ/ライタやレジが製品として集められていた(2006は参考出展の形で「マルチサービスリーダ/ライタ」が発表されていた)。
NECが全国のローソンに展開した「流通・サービス業向け汎用リーダライタ・システム」は1台で6種類の決済サービスに対応している。1台の携帯電話の中に複数の決済サービスを入れているユーザーに対しては、自動的に利用可能なサービス一覧を表示し、選ばせることが可能になっている。このほかにも、日立や東芝テック、グローリーなどがマルチリーダ/ライタを展示していた。
NEC製非接触IC決済対応レジの画面。自動的に決済可能なサービスを検出し、ユーザーに選ばせることができる |
複数の電子マネー/モバイルクレジット決済を実現する流通・サービス業向け汎用リーダライタ・システムの開発について(NECプレスリリース) http://www.nec.co.jp/press/ja/0609/2702.html |
タクシーも非接触ICカード決済に対応へ
「クレジットOK」という表示シールを張ったタクシーを見かけることが多くなったが、タクシー業界も非接触ICカード決済に興味を示しているようだ。
タクシー用クレジット決済端末の開発を行っているキャブカード&サービスは、3月29日から東京23区をサービスエリアにしている国際自動車と日本交通のタクシーそれぞれ100台(計200台)にSuica決済を可能にする料金メーターを導入する。タクシーのSuica対応は業界初とのことで、もちろんPASMOも相互利用可能だ。2007年の冬ごろまでには、Suica以外の決済に対応したマルチリーダの投入も検討しているという。
また、自動車用メーターを開発している矢崎総業は、QUICPayに対応したタクシーメーターを参考出展していた。ブースの担当者によれば、提供開始は2007年秋を予定しているという。また、マルチ対応については、「FeliCa上のサービスであれば、大まかな仕組みは同じなので将来的には対応できる。むしろ、タクシーという性格上、領収書の発行を求められることが多く、バックエンド側の開発が大変かもしれない」とコメントしていた。
このほか、iD陣営もタクシー用決済端末(二葉計器製)を展示していた。急いでいるときや交通量が多いところでの決済で、サイフの中の小銭と格闘してあたふたすることがなくなるかもしれない。
左)Suica決済に対応したキャブカード&サービスのシステム 右)QUICPay決済に対応した矢崎総業のシステム |
ICカード運転免許証を民間企業で活用する
NTTデータは、「ICカード運転免許証確認システム」を出展した。身分証明書として利用されることも多い運転免許証が、偽造や変造防止のために2007年1月4日から非接触IC化された。
ICチップには氏名や住所、顔写真など免許証の表面に印刷されたデータがそのまま入っている(免許証の表面の本籍欄は空欄になった)。これらのデータは所有者が設定した2種類の4けたの暗証番号(PIN)を入力すれば参照できる。
氏名や住所などのデータは暗証番号1のみで表示できるが、顔写真と本籍は暗証番号2も入力しなければ表示されない。また、チェックコード検証による正当性確認もできるようになっている。NTTデータでは、民間分野でのICカード運転免許証の利用を想定して、卓上型とハンドヘルド型の読み取り装置を開発した。
会員制サービスの申し込み時などにも活用される運転免許証だが、このシステムなら書類を書く時間が短縮できるかも |
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非接触IC技術のトレンドは“マルチ”展開 | |
Page1 決済系サービスが一気に多様化、キーワードは「マルチ対応」 タクシーも非接触ICカード決済に対応へ ICカード運転免許証を民間企業で活用する |
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