WIRELESS JAPAN 2007 レポート

センサーネットワークやUWB高精度測位システムに現実味


岡田 大助
@IT編集部
2007年8月7日
近距離無線技術やセンサーネットワーク技術の登場によって、RFIDはどのように変化するのか。WIRELESS JAPAN 2007をレポートする(編集部)

 2007年7月18日から20日にかけて「WIRELESS JAPAN 2007」開催された。出展の中心は無線LANやWiMAXなどの無線通信技術とモバイルコンテンツであったが、RFIDや非接触ICカード技術も散見されていたので、いくつかを紹介する。

 FeliCaの製造番号で顧客サービスの向上を目指す

 ソリトンシステムズでは、FeliCa通信機能付きのブロードバンドルータ「AmiTouch-01」が出展された。AmiTouch-01には一般的なFeliCaリーダ/ライタが接続可能で、手軽に非接触ICカード技術を活用したクーポン発行サービスなどを構築できる。

 AmiTouch-01は、LinuxベースのOSが搭載され、CPUにはAMD Au1500(400MHz)が採用されている。10/100base-TXポートが2口用意されているほか、無線LANカード、PHS通信カード、FOMA通信カードなどにも対応しており、さまざまなアクセス回線を利用できる。

 想定されているソリューションとしては、ポスターや看板などにシステムを組み込み、電子クーポンの発行や顧客の誘導などが挙げられる。実際に、映画館を運営している東京テアトルが構築したシステムでは、ポスターにFeliCaカードをかざしたユーザーに対して、映画館でポップコーンをプレゼントしている。

 このシステムでは、FeliCaチップがユニークに持っている「IDm」を利用している点がキモだ。IDmは、あくまでもFeliCa機器を特定する情報なので、センシティブな個人情報を取得する必要がない。

 もし、店舗側が顧客サービスの向上のために顧客情報の管理を望めば、システムの運用でカバーすればよい。例えば、同じIDmを5回読み取ったときにシステム側で「来店者はリピーターである」という表示を行うとか、来店者に対して通常の会員登録と同じ方法で個人情報を登録してもらうといったやり方が考えられる。

 現在、MIFARE(ISO/IEC 14443 TypeA)対応版やBluetooth接続の対応プリンタも開発中とのことだ。

FeliCa対応ブロードバンドルータ「AmiTouch-01」

 アンテナにフィーダー線を使う発想

 沖電気が出展したのは、センサー用インターフェイスを持った3ミリ角のRFIDチップ「ML7216」(利用周波数は13.56MHz)だ。

 想定されるセンサーとして、温度センサーや感圧センサーなどが挙げられるが、沖電気が定めたのはセンサー用インターフェイスであり、それに準拠していればどのような種類のセンサーでも対応できるという。

 例えば、コンクリート製の建築構造物の中にひずみセンサー付きRFIDタグを埋め込んでおき、ひび割れの発生や進行を検知するシステムを太平洋セメントが実現している。

 WIRELESS JAPAN 2007では、アンテナとしてTVの接続などで使われていたフィーダー線を利用したデモが行われた。フィーダー線上に直径8ミリ程度の温度センサ付きRFIDチップを複数配置し、制御用PCに接続する。フィーダー線はアンテナ兼通信経路になっている。

 担当者は、「非常に安価なフィーダー線を利用することで、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの冷蔵陳列棚に温度センサーシステムを手軽に設置できるのではないか」と説明した。

フィーダー線上に配置されたセンサー付きRFIDタグ


 インパルス型UWBで精度30センチの測位システム

 YRPユビキタス・ネットワーキング研究所では、2007年5月31日に発表したUWB通信方式を採用した双方向通信可能な小型アクティブタグ「UWBアクティブタグII」を出展した。チップや無線部、アンテナを含めて1センチ角のサイコロ形状を実現している。

 また、UWBアクティブタグIIは、インパルス型UWB方式を採用している。2ナノ秒での超短パルス列を伝送するインパルス型の特徴を利用することで、三辺測量の要領で測位精度30センチという位置検知システムを構築できる。担当者によれば、「ユビキタスIDセンターが推進するコンテキスト・アウェアネスの実現に大きく寄与する技術」とのことだ。

 一般的にUWBといえば、OFDM方式を利用した高速無線通信(10メートルの通信範囲で110Mbps)を指すが、インパルス型では、通信速度が低速になるものの低消費電力、広い通信範囲による高精度測位が実現できる。

 また、OFDM方式のUWBは、ほかの近接無線技術との兼ね合いから標準化(IEEE802.15.4b)が見送られたが、インパルス型のIEEE802.15.4aとして2007年3月に標準化された。

 一方、法制度面では、OFDM方式のUWBは干渉軽減技術の実装が義務付けられているなど、さまざまな制約があるものの日本の電波法でも利用が認められている。しかし、インパルス型のUWBについては「制定中」というステータスである。

世界最小を実現したという「UWBアクティブタグII」

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