第4回 クライアント/サーバ間のプロトコルと暗号化通信を知る


竹島 友理
NRIラーニングネットワーク株式会社

2008/12/12


 SSLによる暗号化で使用するサーバ証明書

 メール環境でSSL暗号化通信を行うには、メールサーバ側にSSLのサーバ証明書が必要です。Exchange Server 2003でSSLによる通信を行う場合は、明示的に管理者が証明機関(CA)から証明書を取得していました。しかし、Exchange Server 2007では、自動的に自己署名証明書を自分自身で発行して、自動的にインストールするので、既定でSSLを使用できます。

図10 Exchange Server 2007が発行した自己署名証明書

 この自己署名証明書は、既定で、IMAP、POP、IIS、SMTPサービスと関連付いています。このことは、以下のように[Exchange管理シェル]のコマンドレットで確認できます。

  1. [Exchange 管理シェル]を起動します。

  2. 以下のコマンドレットを実行して、現在のExchange Server 2007の証明書のサムプリントを確認します。
    Get-ExchangeCertificate

  3. 以下のコマンドレットを実行して、特定の証明書の詳細情報を表示し、Exchange Server 2007の関連サービス(Services)を確認します。サムプリント文字列には、手順2で確認したサムプリントを入力します。
    Get-ExchangeCertificate -Thumbprint <サムプリント文字列> | Format-List

    図11 既定の自己署名証明書と関連付いているサービス

 この結果、各種クライアントが使用しているPOP3、IMAP4、HTTPプロトコルのSSL通信が可能となり、POP3とIMAP4の通信ポートは995と993を使用し(SSLを使用しない場合は、110と143)、OWAアクセスの既定のアドレスは「https://クライアントアクセスサーバ名/owa/」となります。

 自己署名証明書の期限は1年、毎年更新が必要

 この自己署名証明書の有効期限は1年です。自己署名証明書の有効期限が切れても動作は継続できますが、イベントがログに記録されたり、ユーザー画面にポップアップが表示されたりするようになります。おそらく、早期にExchange Server 2007を導入した企業では、本原稿執筆時点(2008年12月)ですでに自己署名証明書の有効期限が切れている状況と更新を知らせるイベントログがイベントビューアに表示されていることと思われます。

 自己署名証明書は更新できるので、すでにイベントログが表示されている場合は早急に、まもなく1年の有効期限を迎える場合は期限が切れる前に対処するようにしてください。

 そこで、今回は最後に、自己署名証明書の更新方法をご紹介します。

 自己署名証明書は、Exchange Server 2007のクライアントアクセスサーバ、ハブトランスポートサーバ、エッジトランスポートサーバが持っていて、更新方法はサーバの役割ごとに異なります(「メールボックスサーバ」は自己署名証明書を持っていません)。

 以下は、クライアントアクセスサーバとハブトランスポートサーバの自己署名証明書の更新方法です【注3】

  1. [Exchange 管理シェル] を起動します。

  2. 以下のコマンドレットを実行して、自己署名証明書を作成します。
    New-ExchangeCertificate -DomainName 当該サーバのFQDN

    図12 自己署名証明書の作成
    実行結果に、作成した証明書のサムプリントが表示される。

  3. 以下のコマンドレットを実行して、作成した証明書のServicesに設定されている、Exchange Server 2007の関連サービスの種類を確認します。
    Get-ExchangeCertificate -Thumbprint <サムプリント文字列> | Format-List

    図13 作成した自己署名証明書の確認
    作成した自己署名証明書には、既定でSMTPサービスしか関連付いていない

  4. 以下のコマンドレットを実行して、自己署名証明書を有効にしたい、Exchange Server 2007の関連サービスを指定します(SMTPサービスは既定で有効になります)。
    Enable-ExchangeCertificate -Thumbprint <サムプリント文字列> -Service IIS,POP,IMAP

    図14 Exchange Server 2007が使用するサービスに対する証明書の有効化

 Exchange Server 2007で使用する証明書の更新は、New-ExchangeCertificateコマンドレットで作成するだけではなく、必ずEnable-ExchangeCertificateコマンドレットを実行して、Exchange Server 2007が使用するサービスと関連付けてください(Exchange Server 2007が使用するサービスに対する証明書の有効化)。

【注3】
「エッジトランスポートサーバ」の自己署名証明書の更新方法は、以下の情報を参照してください。

KB: 953354
Exchange Server 2007 で自己署名証明書期限切れのイベント ID 12015 および ID 12014 が記録される

http://support.microsoft.com/kb/953354/ja

 ところで、この自己署名証明書は、以下のような内部通信で使用されています。

  • 内部からのみアクセスされるクライアントアクセスサーバ
  • ハブトランスポートサーバ間のSMTPセッション
  • ハブトランスポートサーバとエッジトランスポートサーバ間のSMTPセッション
  • エッジトランスポートサーバとActive Directory間のエッジ同期
  • ユニファイドメッセージング通信

 つまり、自己署名証明書は、外部クライアントからのアクセスやパートナー企業間のドメインセキュリティには使用できません。また、これは信頼されている証明書ではないため、OWAアクセス時とOWAログオン後の画面に警告が表示されます。

図15 OWAアクセス時の警告画面
「https://クライアントアクセスサーバ名/owa/」アドレスに接続しようとすると、警告が表示される。[このサイトの閲覧を続行する(推奨されません)]をクリックすると、OWAログオン画面が表示される。

図16 OWAログオン後の警告
OWAログオン後も、証明書のエラーが表示されている。

 Exchange Server 2007の自己署名証明書を使用している限り、1年ごとに証明書の更新作業が発生します。しかし、証明機関(CA)が発行した証明書であれば、外部クライアントからのアクセスができるようになり、OWAアクセス時の警告が表示されなくなり、有効期限が1年より長く設定されます。


 次回は、今回の続きとして、CA から証明書を取得する方法と、Exchange Server 2007組織のサーバ同士の暗号化通信についてまとめていきます。

3/3

Index
クライアント/サーバ間のプロトコルと暗号化通信を知る
  Page1
メールボックスにアクセスする6つのクライアント
Outlook:社内ネットワークからのアクセス
OWA:インターネットからWebブラウザでアクセス
  Page2
Outlook Anywhere:自分のPCで、自宅や出張先からアクセス
Windows Mobileマシンでパソコンがなくてもアクセスできる
POP3とIMAP4もきっちり用意
6つのクライアントとExchange Server 2007間の暗号化通信
Page3
SSLによる暗号化で使用するサーバ証明書
自己署名証明書の期限は1年、毎年更新が必要


新・Exchangeで作るセキュアなメッセージ環境
連載インデックス


Security&Trust フォーラム 新着記事
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)

注目のテーマ

Security & Trust 記事ランキング

本日 月間