Interop Tokyo 2009開催直前インタビュー

Interopに見る
ネットワークの未来、セキュリティのいま


宮田 健
@IT編集部
2009/6/4


 2009年6月8日より、千葉・幕張メッセで「Interop Tokyo 2009」が開催される。RSA Conference Japan 2009と同時開催となり、ネットワークとセキュリティの両面からのテーマが1つのイベントで見られるようになった。

 これらのイベントで、新しい製品、サービスを発表する2つの企業にインタビューを行った。製品開発に深く携わる“エンジニア”が、どのような考えで新製品を作り出したのかを追う。

 コードを40行、それだけで実現できるテレビ電話

 Master of IP networkフォーラムで「5分で絶対に分かるSIP」を執筆したソフトフロントは、NGNを活用したSIPテクノロジーを追求する企業だ。今回、そのソフトフロントが開発したのは、NGNのテクノロジーとエンジニアの距離を縮めるミドルウェアだ。

 NGN、具体的にはNTT東西が提供する「フレッツ 光ネクスト」では、ひかり電話というサービス名でSIPサービスを提供している。通常このSIPデバイスやSIPクライアントを作るためには、SIPに対する固有のノウハウが必要なだけでなく、NTTから提供される仕様への準拠、さらには検証作業を通過したものだけがNGNに接続できるという「ハードルの高さ」がある。そのハードルを超える作業を一手に引き受けよう、というのが、ソフトフロントが今回Interop Tokyo 2009でデモ展示を予定している、NGN対応SIP SDKの「SUPREE Vision Premier」である。

 このSUPREE Vision PremierはWindows向けのNGN端末開発キットで、ActiveXコントロールとして提供される。そのため、C#、Visual Basic、.NETアプリケーションなどから利用できるだけでなく、HTMLに書かれたJavaScriptから機能を利用することもできる。15個のAPIからなるが、基本となる4つのAPIだけで基本的な発信、着信などのSIPクライアントが実現できる。検証作業やSIP固有のノウハウはすべてSDK側で吸収する。

デモで佐藤氏が作成したHTMLコード全文。これで最低限のテレビ電話機能が実現できる(クリックで拡大します)

Windows Vistaのサイドバーガジェット化されたテレビ電話機能

 ソフトフロント 取締役 研究開発担当兼NGN-SDK事業推進プロジェクト長の佐藤和紀氏は、今回の取材で自らコードを書きながらこのSDKの解説をしてくれた。APIの初期化や着呼処理、発信のためのHTML/JavaScriptは全部でわずか40行程度。それだけのコーディングで基本的なテレビ電話としての機能が実装できる。クライアントはブラウザとヘッドセット、そしてNGN回線とひかり電話に対応するルータのみだ。

 さらに佐藤氏は、デモで作ったHTMLコードに改良を加え、Windows Vista/7に搭載されているサイドバーガジェットにも対応させた。ここまでにかかった時間はわずか十数分。サイドバーに収められたテレビ電話ガジェットを使って、ソフトフロントに用意されたテレビ電話デモ端末への接続もまったく問題なく表示され、ノイズのない高品質な音が聞こえてきた。

●SIPの機能をどのソフトウェアにも

 このSDKの狙いは何か。従来は「テレビ電話」は単独のシステムであり、テレビ電話が必要な顧客がシステムとして導入を行っていた。それはテレビ電話やSIPなどのIP電話導入、構築に独自のノウハウが必要だったからだ。このSUPREE Vision Premierを利用することで、テレビ電話はシステムではなく、コンポーネントとして扱うことができる。例えば社内SNSなどのイントラネットツールに、テレビ電話の機能を追加することも可能になる。

 SDKのライセンスは最初の6カ月間は無償であり、ロイヤリティも1インストールあたり「数百円」というレベルに押さえるという。従来であればテレビ電話という大きな仕組みを気軽に追加できないという認識だったかもしれないが、この手軽さであればさまざまなシステムに「テレビ電話を組み込む」という選択肢ができる。ソフトフロントは、自治体のコールセンターやオンラインショッピングのカスタマーセンターなどでこのSDKが活用されることを狙う。

 現時点においては、NGNで実現できるアプリケーションは電話とテレビ電話程度であるが、佐藤氏はいずれ1対1のデータ通信サービスが提供されるだろうと述べる。佐藤氏は「クライアントとクライアントをつなぐようなエンド・トゥ・エンドのサービスのほとんどは中央にサーバが何らかの形で存在している。ここのサーバ維持費を考えると、過去のものと思われている『3分いくらの従量制』も、システムによっては選択肢の1つとしてあり得る」と述べる。

 SUPREE Vision Premierは2009年5月29日から提供開始。Interop Tokyo 2009のNGNパビリオン内にてデモを行う予定だ。

ソフトフロント 取締役 研究開発担当兼NGN-SDK事業推進プロジェクト長
佐藤和紀氏

【参考】
NGN対応SIP-SDK、「SUPREE Vision Premier」提供開始
http://www.softfront.co.jp/news/hotnews.html

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Index
Interop Tokyo 2009開催直前インタビュー
Interopに見るネットワークの未来、セキュリティのいま
Page1
コードを40行、それだけで実現できるテレビ電話
  Page2
「新しいプロトコルが登場したら止めるべし」という責任感

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