システムインフラベンダ ブリーフィング(10)
シスコよりオープンなデータセンター環境とは
三木 泉
@IT編集部
2009/6/26
ブレードサーバ用のイーサネットスイッチモジュールをIBMやHP、NECなどのサーバベンダに供給することで急成長してきたブレード・ネットワーク・テクノロジーズ。同社はシスコシステムズが目指しているのと同様な、データセンターにおけるコンピューティングとネットワーキングの統合を進めている。大きな違いは、IBMやジュニパー・ネットワークスなどとの協業により、マルチベンダの世界を作り上げようとしていることだという |
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ブレード・ネットワーク・テクノロジーズ(Blade Network Technologies、以下BNT)が、データセンターにおける統合コンピューティング/ネットワーキングを推進するシスコシステムズとの対決姿勢を強めている。
BNTはイーサネットスイッチベンダ。IBM、ヒューレット・パッカード(HP)、NECなどのブレードサーバ用のイーサネットスイッチ・モジュールを供給することで伸びてきた。2008年にはラックマウント用(top of rack)10Gbpsイーサネットスイッチにも進出。BNTはこれらのスイッチで、「ロスレス、低遅延、低消費電力、低コスト」を打ち出してきた。2009年5月には米国でIBMブレードサーバ用のCEE、FCoEに対応したスイッチブレードを発表した。
仮想化環境への対応はBNT製品の大きな特徴。同社のブレードサーバ用スイッチでは、「SmartConnect」と呼ぶソフトウェアの「VMReady」機能により、ポート単位ではなく、仮想マシン単位のネットワーク設定を可能にしている。仮想マシンがブレード間を移動しても、VLAN設定、ACL、QoSをこれに追随させることができる。手作業による設定変更は必要ない。ラックマウント・スイッチでもこの機能を2009年10月には提供開始の予定だ。
この機能をサーバからデータセンター・バックボーン・スイッチにまで広げ、ストレージ・ネットワーキングのイーサネットへの統合を促進するとともに、仮想化対応の一貫したネットワーク環境を構築できるようにするという。
以下に、BNTの社長兼CEOであるビクラム・メータ(Vikram Mehta)氏へのインタビューの抜粋をお届けする。同氏は、IBMやジュニパーとの関係など、興味深い発言をしている。インタビューは4月末に行った。
まずIBM、ジュニパーと協業する
シスコは「California Server」と呼ばれていた製品を発表した(注:Cisco Unified Computing Systemのこと)。彼らはNexus 1000VをVMware ESX用に提供し、Nexus 5000とNexus 7000、そしてストレージで統合システムを作り上げている。
当社の場合は、まずIBMのブレードサーバを用いる。ただし、HPやNECのサーバでも同じことは実現できる。これに、BNTのブレードサーバ用スイッチとラックマウント・スイッチを使う。さらにジュニパー・ネットワークスのバックボーンスイッチを組み合わせられる。
そしてIBMのブレード管理モジュール・ソフトウェアと「BladeCenter Open Fabric Manager」(注:IBMが提供している自社ブレードサーバ用I/O仮想化ソフトウェア)、当社のSmartConnectを用い、シスコと同じことを実現できる。大きな違いは、シスコの場合、(現在の時点では)VMware ESXしか利用できない。しかし当社の場合はVMware ESX、Xen、Hyper-V、RedHat KVM、そのほかあらゆるハイパーバイザで利用できる。
こうした環境を実現するため、Data Center Technologies(DCT)という会社を2009年4月2日に設立し、IBMのブレードサーバの管理ソフトウェアとエンジニアを引き受けた。5月1日より、IBMのブレードサーバの管理モジュールとその上のソフトウェアをDCTが提供する。
DCTで何をやろうとしているかをもう少しお教えしよう。サーバのラックには、さまざまな管理製品が適用されている。BMCモジュール(サーバ管理モジュール)があり、KVMがあり、仮想化管理があり、ネットワーク機器管理がある。こうした管理製品にはすべてコストが掛かり、(場合によっては)ラックのスペースも占有する。そこでDCTがやろうとしていることの1つは、管理モジュールのソフトウェアをはじめ、これらすべてをスイッチ上で統合できるようにすることだ。スイッチからOpenViewやTivoliなどに接続することもできる。すべてをパッケージ化してシンプルに提供できる。
管理モジュールは、ブレードサーバ上ではシャーシに搭載されている。例えばあなたが3台のブレードサーバを使う場合、この3台の管理モジュールを(ネットワーク経由で)すべて当社のスイッチに接続すれば、それぞれをばらばらに管理せずに、1つのものとしてまとめて管理できる。
また、当社のソフトウェアをジュニパーの「Stratus」(注:ジュニパーがデータセンター構想「 Stratus Project」に基づいて開発中の大型スイッチのこと)のスイッチに搭載できれば、複数のラックにまたがり、データセンター全体の管理も可能になる。
この環境では、仮想マシンに何らかのソフトウェア・エージェントを導入する必要はないのか。
その必要はない。既存の仮想スイッチをそのまま使うからだ。シスコは既存の仮想スイッチを自社のものと入れ替える方式だが、当社は仮想スイッチに何も変更を加えない。だからこそ、どのハイパーバイザでも使える。
また、シスコのサーバではシスコの独自Converged Network Adapter(CNA)を用いる。しかし当社の場合、ブロードコム、Qロジック、エミュレックス、インテル、チェルシオなど、あらゆるCNAと組み合わせられる。
アーキテクチャはシスコと非常に似ているが、顧客はサーバについても、NICやハイパーバイザ、スイッチについても、選択肢を手にすることができる。
しかし、ジュニパーだけと協業するのではないのか。例えばブロケードなどはどうするのか。
最初はジュニパーと協業する。しかし当社のSmartConnectソフトウェアはどのスイッチでも動かせられる。次には3Comやブロケードと協業できるかもしれない。
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シスコよりオープンなデータセンター環境とは | |
Page1 まずIBM、ジュニパーと協業する |
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Page2 顧客に選択肢を与えるということ |
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