交流と直流をめぐる議論
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UPSや分電盤におけるロスには配電方式も影響する。これについて、交流100Vを直流48Vに変えることで20%以上の効率改善につながると主張されることがある。
直流が交流に比べて優れているのは理屈の上では明らかだ。交流ではUPSで交流から直流へ、そして直流から交流へと2回の変換が発生し、IT機器内の電源装置で交流から直流への変換が入る。直流では整流装置で1度交流から直流に変換するだけでいいため、変換ロスが防げる。しかし、交流100Vから直流48Vへの変更で20%の効率向上が見込めるかどうかは必ずしも明らかになっていない。
グリーン・グリッドのホワイトペーパー「ローレンス・バークレイ国立研究所「DC電源によるデータセンター効率の改善(DC Power for Improved Data Center Efficiency)」に関するグリーン・グリッドの評価」(PDF)では、最も効率的であると主張されている直流380Vが北米でよく見られる交流480-208Vに比べて有利であるものの、その違いは5〜7%であるとしている。交流と直流の効率の違いが数%だとすると、配電方式の変更やIT機器における直流への対応のコストに見合う取り組みかどうかは難しい判断になる。
効率向上効果は、主に交流におけるUPSとIT機器の電源装置での変換ロスをどう見積もるかによって左右される。特に近年は、UPSやIT機器の電源装置の変換効率が高まっているため、交流が直流に比べて大幅に不利だとはいいにくくなってきているのが現状のようだ。
図2 この試算では、電源が2N構成でIT負荷が50%の場合、電力効率はAC230V配電が最高で、DC48Vが最低の値となっている。出典:APCのホワイトペーパー「データセンタにおけるAC配電とDC配電の比較」 |
日本で配電効率の向上を図るには、交流100Vで稼働しているIT機器を交流230Vで動かすことを考えたほうが早いという意見もある。ほとんどのIT機器は240Vまでに対応した電源装置を備えているため、何の変更もなしに供給電圧を上げることができる。コストゼロで多少の効率改善が見込めるというわけだ。
対策が困難な冷却効率の課題
冷却については、効率を高めるために、一般的には次のような対策が提唱されている。
- IT機器の配置の最適化によるデータセンター内温度の均等化
- コールドアイル(冷気用通路)、ホットアイル(暖気用通路)の分離
- IT機器の排気の吸気側への逆流の防止
- データセンター内の気流効率の最適化を図る
- 近接冷却(IT機器に近接するように冷却機能を配置する)
- フリー・クーリング(温度の低い外気の取り込みなど)の活用
- データセンター自体のモジュール化による無駄なスペースの排除
特に、オーバースペックな状態をできるだけ避けることは、UPSの場合と同様に冷却でも大きな課題となる。データセンターでは中長期的にIT機器が増減するため、この問題は一筋縄では解決できない。サーバ仮想化の導入によってサーバ台数およびサーバ機の消費電力を減らすことに成功したとしても、冷却設備の構成や運用を変えないかぎり、DCiEは低下してしまう。
データセンターのスペース効率は空調の効率に直結するが、データセンターのライフサイクルで考えるとオーバースペック状態が発生しやすく、時系列的な管理が難しい。無駄なスペースを排除するため、データセンターの設計時に高い電力密度(データセンターの単位面積当たりのIT機器による消費電力)を組み込むことも考えられるが、「電力密度を2倍にすれば、データセンターの建設コストも2倍になる」と米EYPミッションクリティカル・ファシリティーズのジェームズ・ワレン(James Warren)氏は話している。
冷却に関する日本特有の問題として、空冷よりも効率の高い水冷による冷却機能の導入がなかなか進まない点をAPCジャパンは指摘する。
「最近は(水を使った)チラーを設置しているビルが増えている。従ってデータセンターまでは冷却用の水が来ているが、これをラックまで引き込むということになると、日本では地震に対する懸念から、踏み切れない顧客が多い」(前出 有本氏)。同社ではラックの列に配置する近接冷却システムを販売しているが、空冷の製品と水冷の製品の販売比率は7対3。このため、同社では水冷のシステムを使いながらも、ラックレベルでは空冷を行うハイブリッド的なシステムの投入を考えているという。
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データセンター省電力化の実像 | |
Page1 DCiEは万能ではない 一般的なデータセンターのDCiEは本当に30%か UPSにおける電力損失の中身 |
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