解説 Intel Xeon搭載サーバの工夫を検証する――「Express5800/120Me」に見る最新ワークグループ・サーバのハードウェア―― 2. 工夫が見られる冷却ファンでの排熱の仕組み デジタルアドバンテージ |
一般的にコンピュータのパーツの中で、モーターなど可動機構を持つ部品は、半導体部品よりも故障しやすいといわれている。冷却ファンやハードディスクの故障率も、実際のところ、ほかの非可動部品より高いようだ。そのため、可用性が求められるIAサーバでは、なるべくシステムを停止させることなく故障したパーツを速やかに交換して、正常な状態に復帰させるための仕組みが必要となる。
本機の冷却ファンに注目すると、前のページで述べたとおり、バック・パネルに装備されたファンはケースを開けなくても交換可能である。またケース内部のファンも以下のような工夫が施されている。
ケース内部のファンも容易に交換可能 |
これはケース左側の側板に設けられたトビラを開けたところ。青色の部品3点が冷却ファンで、ワンタッチの操作で着脱可能だ。バック・パネルと同様、たとえケース内部でも、冷却ファンが故障したらすぐに交換できる構造は評価できる。 |
また、冷却ファンの交換だけではなく、冷却効率についても注意が払われており、ダクト・カバーによって発熱の多い部品を中心に風が流れるようになっている。ダクト・カバーがあるため、メンテナンス性は悪くなるような気もするが、このカバーは簡単に取り外しが行えるので、それほど障害にはならないだろう。
ダクト・カバーで高められている冷却能力 |
透明なダクト・カバーがプロセッサ/メモリ部分と、拡張スロット部分にそれぞれかぶせられており、その両脇に冷却ファンが設置されていることが分かる。赤い矢印線は、風が流れる道筋をおおまかに表したものだ。ダクト・カバーは、立体的に成型されており、風の流れを速めて冷却効果を高める工夫が施されている。 |
上の写真で、ドライブ・ベイと拡張スロット部分の間には2基の冷却ファンが並んでいるが、通常は両方とも稼働している。もし片方が故障して停止しても、もう一方のファンが送風し続けることで、拡張スロット部分の冷却が完全に止まるのを防いでいる。一方、ドライブ・ベイとプロセッサの間にある冷却ファンが止まった場合は、バック・パネル側の冷却ファン2基によって(完全ではないものの)ケース外部への熱の排出が継続される。またバック・パネル側の冷却ファンは、1基が止まってももう1基によって熱の排出が続けられるようになっている。このように、1基のファンが止まると風が止んでしまい、特定パーツの冷却が完全に滞るという最悪の事態を防ぐように、冷却ファンの数や設置場所などが設計されていることが分かる。
ハードディスク・ベイからプロセッサへと風を通す仕組み | |||||||||
これはハードディスク・ベイの裏側にあるバックプレーンの部分。すぐ後ろには、冷却ファンが装着され、さらにまた後ろにはマザーボードが位置する。 | |||||||||
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このようにフロント・パネルから本体後部に向かって風を通すことで、ハードディスクからマザーボード上のデバイス、拡張カードといった主要な熱源を冷却している。なお電源ブロックには専用のファン2基が装着されているが、これは簡単に交換できそうになかった(電源ブロックごと取り外して交換する必要があるようだ)。
本機のように冷却ファンが充実しているマシンの場合、気になるのはその稼働音だ。特にペデスタル型サーバはオフィスの一画に配置されることも多いので、稼働音が大きすぎると仕事に支障をきたすことも考えられる。本機の場合、電源オンの直後には冷却ファンがフル稼働して、そのままでは耐えられないほどの稼働音が発生するが、2〜3秒ほどですぐに音は小さくなる。OS稼働時でも音は小さかった。さすがに仕事机のすぐ脇に本機を置くと、稼働音が若干うるさく感じられたが、数mほど机から離せば、ほかの雑音に紛れて分からなくなった。よほど狭いオフィスでもないかぎり、稼働音がうるさく感じられることはないものと思われる。
次のページでは、サーバの中核部分といえるマザーボードに注目してみる。
関連リンク | |
Express5800/120Meの製品情報ページ |
INDEX | ||
Intel Xeon搭載サーバの工夫を検証する | ||
1.やや大きめだがメンテナンスのしやすいケース | ||
2.工夫が見られる冷却ファンでの排熱の仕組み | ||
3.高密度実装で標準規格対応のマザーボード | ||
4.Intel Xeonサーバか、Pentium III-Sサーバか? | ||
「System Insiderの解説」 |
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