解説 Intel Xeon搭載サーバの工夫を検証する――「Express5800/120Me」に見る最新ワークグループ・サーバのハードウェア―― 4. Intel Xeonサーバか、Pentium III-Sサーバか? デジタルアドバンテージ |
SCSI RAIDコントローラ・カードの実体
RAIDコントローラは、ワークグループ・クラス以上のサーバでは、まず間違いなくオプションとしてラインアップされている(標準装備の製品もあるくらいだ)。Express5800/120Meにも、3種類の内蔵RAIDコントローラ(RAIDカード)がオプションとしてラインアップされている。いずれもUltra160 SCSI対応で、下位機種から1/2/4チャネルのSCSIを実装している。
本稿で試用した評価機には、Mylex製の2チャネルSCSI RAIDコントローラ「N8103-53A(日本電気における型番)」が搭載されていた。MylexのRAIDコントローラのラインアップでは、「Entry Level PCI RAID」に位置付けられている製品だ。これを例として、SCSI RAIDカードとはどのようなハードウェアなのか、簡単に紹介しよう。
評価機に装備されていたRAIDコントローラ (拡大表示:68Kbytes) | ||||||
これはMylex製のAcceleRAID 352という製品に相当するもので、2チャネルのUltra160 SCSIに対応している(日本電気における型番はN8103-53A)。RAIDレベルとしては、0/1/3/5/10/30/50/0+1/JBODをサポートし、ハードディスク追加時の動的な容量の拡張や、バッファ・メモリのバッテリ・バックアップなどの機能も持っている。カード上に見えるDIMMはRAIDの各種制御用バッファ・メモリとして利用される。 | ||||||
|
RAIDコントローラの中核回路 (拡大表示:66Kbytes) | |||||||||||||||
通常、PCIカード型のSCSI RAIDコントローラは、SCSIハードディスクを直接接続して制御するSCSIコントローラ()と、RAIDのアルゴリズムを具現化するプロセッサ、メモリなどから構成される。 | |||||||||||||||
|
バッファ・メモリを保護するバッテリ |
赤い線で囲われている水色の部品は、充電可能なバックアップ用バッテリだ。本カード(N8103-53A)は標準でバッテリ・バックアップをサポートしている。カード上のメモリ(64Mbytes)をライトバック・キャッシュとして利用する場合、停電などで電力供給が突然停まると、メモリ内のデータがディスクへ書き込まれる前にハードディスクが停止するため、そのままではメモリ内のデータが失われてしまう。しかし本カードでは約80時間、メモリ内のデータをバッテリで保持できるよう設計されている。電力が復活したら、メモリ内のデータはハードディスクへ書き込まれ、正常な状態に戻るわけだ。 |
標準装備のリモート管理機能でOS非稼働時でも管理可能に
本機のハードウェアをここまで見たところで、サーバにとって重要な機能の1つである「リモート管理」に注目してみよう。従来のワークグループ・サーバでも、イーサネットやシリアル・ポートを介してリモート環境からサーバのハードウェアの状態をチェックしたり、各種操作を行ったり、といった機能は実現されていた。しかし、Windows 2000 ServerなどのOSが非稼働のとき、リモート管理機能のほとんどが利用できない、ということが多かった。例えばPOST(Power-n Self Test)時やBIOSセットアップ時でもリモート管理を実現するには、専用のリモート管理用カードを増設しなければならない(上位機種では、このリモート管理用カードが標準で装備されている場合もあったが)。
しかし本機では、オンボード実装、つまり標準装備のハードウェアとファームウェアで、OS非稼働時のリモート管理を実現している。リモート接続回線としては、イーサネット(10/100BASE-TX)のほか、シリアル・ポートによるモデム接続とダイレクト接続が利用できる。ただし、管理を行うには、管理用のリモート環境のPCに日本電気が提供するMWA(Management Workstation Application)というソフトウェアをインストールし、またサーバ側でも適切な設定をしておく必要がある。こうした環境設定さえしておけば、サーバに直結されたコンソール(キーボード/マウス/ディスプレイ)を使わなくてとも、リモート環境でサーバを管理できるようになる。こうした機能は、ホスティングやサーバ・ファーム、あるいは企業の管理部門から物理的に離れた営業所などにサーバを置いて管理するような場合に便利だろう。
MWAによるリモート・コンソール機能 (拡大表示:56Kbytes) |
これはMWAマネージャをインストールした管理用デスクトップPCの画面。フォアグラウンドのウィンドウには、MWAによって本機のBIOSセットアップ画面が表示されている。MWAを利用すると、このようにPOST時のサーバのコンソールをリモート環境から操作できる。例えば、この画面のようにBIOSセットアップの設定を変更したり、リモート環境のフロッピードライブに挿入されたフロッピーディスクからサーバをブートしたりすることも可能だ。OS上ではターミナル・サービスなどのツールを利用し、またOS起動前はMWAを利用することで、ほとんどの操作をリモート環境から実行できるわけだ。 |
また1つ、従来はオプション扱いだった機能が、マザーボードに統合されて標準装備に加わったことになる。マザーボードへの実装コストが下がるにつれて、下位機種にも次第にこの機能が浸透していくだろう。
■
Pentium III系プロセッサからIntel Xeonプロセッサへの移行は、メモリや拡張バス、イーサネットといったI/Oの速度向上も促した。クライアントPCあるいはサーバ同士で通信しながら処理を行うサーバにとって、プロセッサ性能が向上しただけでは総合的な処理性能は高められず、I/Oの高速化も必須だからである。本機の場合、主要なI/OのうちSCSIだけは従来と同じUltra160 SCSIだったが、これは後継であるUltra320 SCSIの製品出荷タイミングがIntel Xeonの登場とずれたことが影響している。とはいえ、2002年後半からUltra320 SCSI対応製品が順次、量産出荷されるはずだ。Ultra320 SCSI対応のRAIDコントローラが本機のオプションにラインアップされるのも、そう遠くない先のことかもしれない。
もう1つ、Intel Xeonへの移行で重要なのは、増加した発熱量への対策だ。一般的に同じ製造プロセスで製造されたプロセッサは、動作クロックが高まるほど、発熱量が多くなる。特に本稿で紹介した評価機のように、2.40GHzという高い動作クロックとなると、発熱量も増える。それに対して本機は、ダクト・カバーを装着して冷却効率の向上を図るなど、工夫が行われていた。
現在、ワークグループ・クラスのIAサーバは、おおざっぱにいってIntel Xeon搭載の上位機とPentium III-S搭載の下位機種で二分されている(日本電気のペデスタル型サーバでは、前者がExpress5800/120Meで、後者がExpress5800/120Lfに相当する)。特に、経済が下降傾向にある現在の日本市場においては、絶対的な価格が安いPentium III-S搭載サーバの需要は、決して小さくないだろう。とはいえ、スケーラビリティはIntel Xeon搭載サーバの方に余裕があるため、より長期間使えるのはIntel Xeon搭載サーバの方だと思われる。特にサーバ・アプリケーションの実行性能を重視するなら、総合的な性能に優れるIntel Xeonサーバを採用する方が、長いスパンで見るとコスト安な選択なのかもしれない。2002年度中は、この選択に悩まされることになりそうだ。
関連リンク | |
Express5800/120Meの製品情報ページ | |
AcceleRAID 352の製品情報ページ | |
Express5800/120Lfの製品情報ページ | |
IAサーバ「Express5800/100」シリーズのインデックス・ページ |
INDEX | ||
Intel Xeon搭載サーバの工夫を検証する | ||
1.やや大きめだがメンテナンスのしやすいケース | ||
2.工夫が見られる冷却ファンでの排熱の仕組み | ||
3.高密度実装で標準規格対応のマザーボード | ||
4.Intel Xeonサーバか、Pentium III-Sサーバか? | ||
「System Insiderの解説」 |
- Intelと互換プロセッサとの戦いの歴史を振り返る (2017/6/28)
Intelのx86が誕生して約40年たつという。x86プロセッサは、互換プロセッサとの戦いでもあった。その歴史を簡単に振り返ってみよう - 第204回 人工知能がFPGAに恋する理由 (2017/5/25)
最近、人工知能(AI)のアクセラレータとしてFPGAを活用する動きがある。なぜCPUやGPUに加えて、FPGAが人工知能に活用されるのだろうか。その理由は? - IoT実用化への号砲は鳴った (2017/4/27)
スタートの号砲が鳴ったようだ。多くのベンダーからIoTを使った実証実験の発表が相次いでいる。あと半年もすれば、実用化へのゴールも見えてくるのだろうか? - スパコンの新しい潮流は人工知能にあり? (2017/3/29)
スパコン関連の発表が続いている。多くが「人工知能」をターゲットにしているようだ。人工知能向けのスパコンとはどのようなものなのか、最近の発表から見ていこう
|
|