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2006年第1四半期版Intelの開発コード名

元麻布春男
2006/01/14

 Intelは、2006年1月5日に創業当時から使用してきたロゴ(ドロップ -eロゴ)を刷新、新たな企業ロゴを発表した。これにあわせて、「Leap ahead(さあ、その先へ。)」という企業スローガンとともに、プロセッサ・カンパニーからプラットフォーム・カンパニーへの移行を宣言した。

Intelの新しい企業ロゴ

 2005年のIntelは、90nmプロセスの消費電力が予想よりも大きかったために動作クロックが引き上げられなかったり、デュアルコア・プロセッサでAMDの先行を許したりと、苦悩の1年であった。2005年5月18日にポール・オッテリーニ(Paul Otellini)氏がCEOに就任し、プラットフォーム・カンパニーに向けて組織変更を行うなど、体制の建て直しに費やしたように見える。

 こうした不安定さは、プロセッサのロードマップにも現れており、製品のキャンセルや延期、仕様の変更などが続いている。それに伴い、開発コード名にも変更が加えられている。「2004年版まる分かり開発コード名」「IDF Spring 2004で明らかになった新たな開発コード名」「IDF 2004 Fallで明らかになった開発コード名」と一部重複しているが、読み比べることで、プロセッサ・ロードマップの変更点が分かるだろう。

Itaniumプロセッサ・ファミリ(IPF)
Montecito(モンテシト) Montvale(モントベール) Tukwila(ツクウィラ) Bayshore(ベイショア)
Rosehill(ローズヒル) Foxton(フォックストン)テクノロジ
サーバ/ワークステーション向けプロセッサ
Irwindale(アーウィンデール) Dempsey(デンプシー) Sossaman(ソッサマン) Potomac(ポトマック)
Cranford(クランフォード) Paxville(パックスピル) Tulsa(タルサ) Whitefield(ホワイトフィールド)
サーバ/ワークステーション向けプラットフォーム
Twin Castle(ツインキャッスル) Truland(トゥルーランド) Reidland(レイドランド) Bensley(ベンスレイ)
新マイクロアーキテクチャ採用プロセッサ
Merom(メロム) Conroe(コンロー) Woodcrest(ウッドクレスト) Tigerton(タイガートン)
Dunnington(ダニングトン) Caneland(カネランド) High Speed Interconnect Next Generation Interconnect
 

Itaniumプロセッサ・ファミリ(IPF)

 
■Montecito(モンテシト)
 90nmプロセス製造による第4世代IPF。当初は2005年夏のリリースを予定していたが、2006年半ばまで延期された。マルチプロセッサ対応のMontecitoに対し、同世代のデュアルプロセッサ対応のプロセッサはMillington(ミリントン)と呼ばれる。デュアルコアに加え、マルチスレッディング技術を採用するため、1つの物理プロセッサが4つの論理プロセッサとしてOSには扱われる。以前は2005年リリース予定のデュアルコア・プロセッサの開発コード名はChivano(チバーノ)とされていた。

 コア当たり1.2Mbytesの2次キャッシュ(命令1Mbytes+データ256Kbytes)と、12Mbytesの3次キャッシュを内蔵する(デュアルコアなので、プロセッサ単位でのキャッシュ容量は、それぞれ2倍となる)。ソケット・レベルの互換性はMadison(マディソン)から維持される予定だ。延期に伴い、FSBの667MHzへの引き上げがキャンセルされ、最大動作周波数も1.6GHz程度になる見込み。Foxtonテクノロジも有効化されない。
 
■Montvale(モントベール)
 Montecito(モンテシト)の次世代のマルチプロセッサ対応のIPF。デュアルコアを含めアーキテクチャ的な変更はそれほど多くなく、65nmプロセス製造への移行が大きな目的と考えられている。デュアルプロセッサ対応版のDP Montvaleや低電圧版も予定されている。Foxtonテクノロジが有効化される可能性もある。
 
■Tukwila(ツクウィラ)
 Montvale(モントベール)の次の世代のIPF。買収した旧Alphaプロセッサの開発チームが開発に加わったといわれる。65nmプロセス製造により量産されるマルチコアプロセッサで、4つのプロセッサ・コアを内蔵する。以前はTanglewood(タングルウッド)という開発コード名で呼ばれていたが、商標の問題を回避するため改められた。性能面での強化に加え、一定の自己診断、自己修復機能が実装される見込みだ。デュアルプロセッサ対応版はDimona(ディモナ)と呼ばれ、低電圧版も用意される。最大の変更は、バスがNext Generation Interconnectに改められることで、IA-32系プロセッサとの将来のプラットフォーム統合を見据えたものとなる。対応プラットフォームは、当初のRichford(リッチフォード)に代わりRosehill(ローズヒル)が提供される。
 
■Bayshore(ベイショア)
 2005年に登場し、Montecito(モンテシト)と組み合わせられる予定であったIPF対応のチップセット。DDR2メモリやPCI ExpressといったIA-32で先行導入されている技術を取り込むものとされていた。Pellston(ペルストン)やFoxton(フォックストン)といった技術も実装される見込みだったが、2004年5月にキャンセルされた。
 
■Rosehill(ローズヒル)
 Tukwila(ツクウィラ)向けに提供される次世代IPFプラットフォーム。Next Generation Interconnectに対応するほか、PCI ExpressやFB-DIMMといった新しい技術をサポートするものになると見られる。
 
■Foxton(フォックストン)テクノロジ
 Montecito(モンテシト)で導入が予定されていた性能向上技術。プロセッサの消費電力(温度)と動作クロックを動的に変更することで、性能の向上を可能にする。消費電力に余裕がある場合、プロセッサの動作周波数を定格以上に高める一方で、一定の消費電力枠内で最大の性能となるよう最適化することもできる。Montecitoのダイには残っているとされているが有効化されない。
 

サーバ/ワークステーション向けプロセッサ

 
■Irwindale(アーウィンデール)
 2005年2月に登場したデュアルプロセッサ対応のIntel Xeon。Nocona(ノコナ)の後継として2倍に当たる2Mbytesの2次キャッシュを搭載している。キャンセルとなったJayhawk(ジェイホーク)とデュアルコア・プロセッサの狭間を埋める存在だと考えられる。
 
■Dempsey(デンプシー)
 65nmプロセスで製造される第2世代のデュアルプロセッサ対応サーバ向けのデュアルコア・プロセッサ。第1世代のPaxville DP(パックスビル・ディピー)と異なり、パッケージ内部にシングルコア・ダイを2個封入する。デスクトップPC向けのPresler(プレスラー)と同等の構成だが、デスクトップPC向けにあるシングルダイ・バージョンのCedar Mill(セダー・ミル)に相当するプロセッサは存在しない。また、Hyper-Threadingテクノロジが標準的にサポートされる。FSBクロックは1066MHzで、対応するBlackford(ブラックフォード)チップセットとBensley(ベンスレイ)プラットフォームを構成する。2006年第1四半期にリリースされる見込み。
 
■Sossaman(ソッサマン)
 モバイル向けのデュアルコア・プロセッサ「Yonah(ヨナ)」をベースにした省電力サーバ向けプロセッサ。ECCサポートとデュアルプロセッサ対応がYonahとの違い。チップセットにはLindenhurst(リンデンハースト)を用いる。
 
■Potomac(ポトマック)
 Gallatin(ギャラティン)の後継となるIntel Xeon MP。マルチプロセッサ対応のサーバ向けIA-32プロセッサとしては初の90nmプロセス製造による製品として2005年3月リリースされた。FSBが667MHzに引き上げられたほか、最大8Mbytesの3次キャッシュを持つ。EM64Tのサポートに加え物理アドレス空間が40bit(1Tbytes)に拡張されている。新たに用意されたIntel E8500(Twin Castle)チップセット・ベースのTruland(トゥルーランド)プラットフォームを利用する。
 
■Cranford(クランフォード)
 Potomac(ポトマック)と同じ世代のIntel Xeon MP。3次キャッシュを持たないことを除けば、Potomacと同等。チップセット側が仮想キャッシュ機能を持つXA-64eチップセット(ハリケーン)を持つIBMの求めに応じて用意したプロセッサという印象が強く、ほかのサーバ・ベンダでの採用は見当たらない。
 
■Paxville(パックスピル)
 90nmプロセス世代のNetBurstコアを2つ持つサーバ向けのデュアルコア・プロセッサ。当初はマルチプロセッサ対応版のみ(2005年11月リリース)の予定だったが、急遽デュアルプロセッサ対応版もリリース(2005年10月)されることになった。Irwindale(アーウィンデール)に相当する2個のコアを1つのダイに張り合わせたような構成だが、バス・ロードを軽減するためバス・インターフェイスは1つに統合されている。デュアルプロセッサ対応版はFSBが800MHzでLindenhurst(リンデンハースト)チップセット、マルチプロセッサ対応版はFSBが667MHzでTwin Castle(ツインキャッスル)チップセット(Trulandプラットフォーム)をそれぞれ利用する。
 
■Tulsa(タルサ)
 Paxville(パックスビル)の後継となる、2世代目のマルチプロセッサ対応サーバ向けデュアルコア・プロセッサ。65nmプロセスで量産され、16Mbytesという大容量3次キャッシュを2個のコアで共有するアーキテクチャを採用する。2006年半ばから後半にかけてリリースされる見込み。プラットフォームはPotomac(ポトマック)Paxville(パックスビル)と同じTruland(トゥルーランド)プラットフォームを用いる。
 
■Whitefield(ホワイトフィールド)
 65nmプロセスで量産されるクアドコアのIntel Xeon MPとして、2007年にリリースされる予定だったが、2005年10月によりよい性能を持つTigerton(タイガートン)の提供が可能になったという理由でキャンセルされた。同時に、対応プラットフォームであるReidland(レイドランド)もキャンセルとなっている。2個ずつのコアで2次キャッシュを共有し、3次キャッシュを持たないキャッシュ・アーキテクチャが発表されていた。
 

サーバ/ワークステーション向けプラットフォーム

 
■Twin Castle(ツインキャッスル)
 Truland(トゥルーランド)プラットフォームの中核となる4ウェイ・サーバ対応のチップセットで、正式名称はIntel E8500。Potomac(ポトマック)Cranford(クランフォード)と同時に2005年3月にリリースされた。PCI ExpressやDDR2メモリといった新しい技術をサポートする。2本のFSB(667MHz)を持ち、それぞれにCPUを2個ずつ接続できる。
 
■Truland(トゥルーランド)
 Twin Castle(ツインキャッスル)チップセットを中核とするIntel Xeon MP向けのプラットフォーム。Potomac(ポトマック)Cranford(クランフォード)Paxville(パックスビル)Tulsa(タルサ)と3世代のプロセッサをサポートすることになっている。
 
■Reidland(レイドランド)
 Whitefield(ホワイトフィード)向けに提供される予定だったマルチプロセッサ対応のサーバ・プラットフォーム。2005年10月にWhitefieldとともにキャンセルされた。当初は、Intel Xeon MPとItaniumの共通プラットフォームとなるともいわれたが、この構想は2005年夏の段階でなくなっていたもようだ。
 
■Bensley(ベンスレイ)
 FB-DIMMと1066MHzのFSBをサポートしたデュアルプロセッサ対応サーバ向けのプラットフォーム。Dempsey(デンプシー)と同時に導入され、Woodcrest(ウッドクレスト)、さらにもう1世代先のプロセッサまで3世代に渡って利用される予定だ。2本のFSBにそれぞれ1個ずつのプロセッサ・ソケット(新たにLGA771を採用)を接続する。I/OAT、iAMT、EM64T、VTといったプラットフォーム技術(*Ts)をサポートする。
 

新マイクロアーキテクチャ採用プロセッサ

 
■Merom(メロム)
 Banias(バニアス)/Dothan(ドーサン)といったPentium Mに近い、14段のパイプライン構成をとるIntelの「新マイクロアーキテクチャ」を採用するモバイル向けのプロセッサ。31WのTDP(熱設計電力)が予定されている。デスクトップPC向けのConroe(コンロー)、デュアルプロセッサ対応サーバ向けのWoodcrest(ウッドクレスト)とは三つ子のような関係にある。省電力というBanias/Dothanコアの特徴に、NetBurstのプラットフォーム技術(*Ts)を組み合わせたものとされ、2006年半ばにデビューの見込み。対応するプラットフォームは、Yonah(ヨナ)と同じNapa(ナパ)を用いる。
 
■Conroe(コンロー)
 「新マイクロアーキテクチャ」を採用したデスクトップPC向けのプロセッサ。65WのTDP(熱設計電力)を予定する。モバイルPC向けのMerom(メロム)、デュアルプロセッサ対応サーバ向けのWoodcrest(ウッドクレスト)と三つ子関係にある。
 
■Woodcrest(ウッドクレスト)
 「新マイクロアーキテクチャ」を採用するデュアルプロセッサ対応サーバ向けプロセッサ。80WのTDP(熱設計電力)を予定する。モバイルPC向けのMerom(メロム)、デスクトップPC向けのConroe(コンロー)と三つ子関係にある。プラットフォームはDempsey(デンプシー)から引き続きBensley(ベンスレイ)を用いる。
 
■Tigerton(タイガートン)
 「新マイクロアーキテクチャ」を採用するマルチプロセッサ対応サーバ向けプロセッサ。クワドコアのプロセッサで、プロセッサ・インターフェイスに「High Speed Interconnect」を採用する。デュアルプロセッサ対応サーバ向けのWoodcrest(ウッドクレスト)と同じマイクロアーキテクチャだが、キャッシュの構成やFSBクロックは異なるものになると見られる。Woodcrest同様、3次キャッシュを持たないのかどうかは不明。2007年に登場の予定。
 
■Dunnington(ダニングトン)
 Tigerton(タイガートン)の次世代のマルチプロセッサ対応サーバ向けプロセッサ。プロセッサ・バスとして「High Speed Interconnect」を採用し、Caneland(カネランド)プラットフォームを継承することが明らかにされている。2008年の登場を予定。
 
■Caneland(カネランド)
 Tigerton(タイガートン)用に提供されるプラットフォーム。プロセッサ・バスとして「High Speed Interconnect」をサポートし、メモリにFB-DIMMを採用する。少なくともTigertonの次のDunnington(ダニングトン)までは使われる見込み。
 
■High Speed Interconnect
 Tigerton(タイガートン)で採用されるプロセッサ・インターフェイス(FSB)。Intelは、ポイント・ツー・ポイント接続のインターフェイスになるとしか発表していない。次世代プロセッサ・インターフェイスとしてシリアル接続技術をベースにしたNext Generation Interconnectが控えていることから考えて、既存のFSBアーキテクチャを大幅に変更したものとは考えにくい。Bensley(ベンスレイ)プラットフォーム同様、1つのFSBに1プロセッサの構成にし、バス・クロックを引き上げたものだと考えられる。
 
■Next Generation Interconnect
 2008年のTukwila(ツクウィラ)から導入される見込みの新しいプロセッサ・インターフェイス。シリアル接続技術であるPCI Expressをベースにしたものではないかといわれている。本来は2007年からTukwilaWhitefield(ホワイトフィールド)の両方に採用され、プラットフォームを共通化する計画だったが、Whitefieldはキャンセル、Tukwilaは1年延期されてしまった。2005年末時点においてNext Generation Interconnect、共通プラットフォームともにキャンセルにはなっていないものの、Tukwila以外のプロセッサは発表になっていない。
 
 
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