マンスリー・レポートDellはいつまで勝ち続けるのか?(2002年12月号)2. 動き始めたAMDとIntelデジタルアドバンテージ |
11月20日にAMDは、次世代のクライアントPC向けのブランドを「AMD Athlon 64」とすることを発表した。AMD Athlon 64は、AMD独自の64bitマイクロアーキテクチャである「x86-64テクノロジ」を採用したもの。サーバ/ワークステーション向けの「AMD Opteron」のクライアントPC版ともいえる。ちょうど、IntelのIntel Xeonシリーズに対するPentium 4と同じ位置付けとなる。その発表に先立つ11月8日にAMDは、プロセッサのロードマップを更新している。この更新では、90nmプロセス製造によるAMD OpteronとAMD Athlon 64の開発コード名が明らかにされたほか、開発コード名「ClawHammer DP(クローハマー・ディ・ピー)」で呼ばれていた1〜2ウェイ・サーバ向けAMD Opteronがキャンセルとなり、90nmプロセス製造への移行が2003年後半から2004年前半へと延期されている。AMDの内覧会などの情報によれば、AMD Athlon 64の性能は非常に高いようだ。2003年前半の予定どおりに出荷し、再びIntel対AMDの性能・価格競争を演じてもらいたい。
そのAMDを迎え撃つ形となるIntelは、着々とPentium 4ならびにIntel Xeonの性能を引き上げている。11月19日には、量産プロセッサとしては初の3GHzを超える3.06GHzのPentium 4の出荷を開始した。Pentium 4-3.06GHzからは、「Hyper-Threadingテクノロジ(HTテクノロジ)」と呼ぶ、1つの物理的なプロセッサをソフトウェア上からは2つの論理プロセッサに見せる技術を有効にしている(「解説:Hyper-ThreadingテクノロジはPCに革命を起こすか?」参照のこと)。Intelによれば、「HTテクノロジを有効にすることで、PCの性能が最大25%向上する」という。もし、25%の性能向上が実現するのであれば、HTテクノロジを有効にしたPentium 4-3.06GHzは、HTテクノロジを搭載しない既存のPentium 4ならば3.83GHz相当ということになる。実際にはアプリケーションや利用環境によって性能向上率は大きく異なるようだが、ユーザーにとってデメリットがない技術であることは間違いない。これまでMMX命令やストリーミングSIMD拡張命令(SSE)の登場によってマルチメディア・アプリケーションが大きく影響を受けたように、HTテクノロジによってクライアントPCの使われ方が大きく変わる可能性さえある。Intelは、HTテクノロジ搭載製品のラインアップを大きく広げる予定であり、今後の製品選択では重要なポイントになってくるだろう。
サーバ/ワークステーション向けプロセッサのIntel Xeonも大幅な性能向上を実現している。デスクトップPC向けのPentium 4では、すでにFSBが533MHzに引き上げられていたが、Intel Xeonはこれまで400MHzのままであった。11月19日にはIntel Xeonも533MHzに引き上げられ、同時に動作クロック2.80GHz版が追加された(元麻布春男の焦点:攻勢に転じたインテルのチップセット戦略」)。対応チップセットなども発表し、エントリ・サーバならびにワークステーションに対する体制を強化しているようだ。ここ2年ほどサーバ/ワークステーション向けのチップセットをサードパーティに頼ってきたIntelだが、ここに来て自社で強化する戦略に転換している。次は、Intel Xeon MP向けのチップセットとなるだろう。
2003年はオフィスがギガビット・イーサネット化する?
そのほかの11月のニュースをいくつかまとめておこう。まず、11月1日には日本HPとコンパックが合併し、新生日本HPの誕生している。すでに米国では5月に両社が合併していることや、日本国内でも8月から営業を共同で行っていたことなどから、合併にともなう混乱はなかったようだ。
メルコの1000BASE-T対応スイッチング・ハブ「LSW-GT-8W」 |
全8ポートが1000BASE-T対応に対応したスイッチング・ハブでありながら、2万3500円という思い切った価格付けとなっている。こうした低価格な1000BASE-T対応スイッチング・ハブの登場により、2003年は100BASE-TXから1000BASE-Tへの移行が急速に進むことが予想される。 |
もう1つ注目したいのは、1000BASE-T対応のスイッチング・ハブの価格である。10月29日にグリーンハウスが3万9800円で8ポート・スイッチング・ハブ「GH-EHG8X」を発表したのに続き、11月11日にはアイ・オー・データ機器が5万9800円(ETG-SH8)で、11月27日にはメルコが2万3500円(LSW-GT-8W)で次々と1000BASE-T対応スイッチング・ハブを発表している。1年ほど前まで、全ポートが1000BASE-T対応の8ポート・スイッチング・ハブというと、20万円前後していたことを考えると、急速に低価格化が実現したことが分かる。すでにサーバは、1000BASE-Tインターフェイスが標準搭載されている。また、クライアントPC向けの1000BASE-T対応インターフェイス・カードの実売価格も5000円前後である。普及の唯一の障害であった1000BASE-T対応スイッチング・ハブの価格が、ここに来て手頃になったことから、オフィス内での1000BASE-T化が急速に進むことになるだろう。
Pick Up Online Document――注目のオンライン・ドキュメント |
Microsoft Windows 2000とMicrosoft Exchange 2000によるコンパック インフラストラクチャの整理統合 Windows NT 4.0からWindows 2000への移行と、Exchange 5.5からExchange 2000への移行、それらの整理統合作業についての要旨が記載されている。自社システムの移行と整理統合作業を解説したものであり、手順など参考になる記述も多い。 |
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