特集 4. ホテルでインターネット接続 |
ここまでのページ(前編)では、海外出張に出るまでの準備について説明してきた。ここからは、実際に海外に到着してインターネットに接続するまでの手順とノウハウを解説していこう。
ホテルでインターネットに接続しよう
高速インターネット接続サービスが提供されていないホテルの場合、アナログ・モデムを利用してインターネットへ接続することになる。その際、まず注意すべきはPCと電話線との接続である。米国の多くのホテルの部屋に備え付けの電話機には、横に「Data(データ)」や「Data Port(データ・ポート)」と書かれたモジュラ・ジャックがある。これもホテルのWebサイトがあれば、部屋の条件として記載されていることが多い。逆にホテルのWebサイトを見て、「Data Port」という表記がなければ要注意だ。壁面にモジュラ・ジャックがあればまだよいが、そうでない場合(壁から直接電話ケーブルが出ている場合)には、通信はほとんど不可能である。
ホテルの電話のデータ・ポート |
ホテルの電話には、このようにデータ通信用の接続コネクタがあるものが多い。通常のモジュラ・ジャックと同様、ここにアナログ・モデムを接続すればよい。 |
また、実際に利用する前に電話料金についても確認しておきたい。電話料金は、電話機の横にある案内板や部屋備え付けのホテル案内に記載されているので探してみよう。料金は、地域やホテルによっても異なり、一般に都市部では高くなる傾向にある。市内通話は1回の接続当たり数セントと安価に利用できるホテルが多いが、なかには「最初の3分で1ドル50セント、それ以上は1分10セント」といったかなり高い料金のところもある。また、長時間の接続を避けるために、1時間以上は1分ごとにいくらといった料金体系となっている場合もあり、確認せずに使うと驚くような電話料金を後から請求されることになる。また、フリーダイヤル(米国では800番がフリーダイヤル番号)は無料のところが多いが、ホテルによってはフリーダイヤルでも有料になるので、これも確認が必要だ。
次に確認するのは、外線への通話のやり方である。多くのホテルでは、電話機自体に記載されているが、基本的には外線発信用番号の「0」や「9」を押した後に電話番号を入れる。このときには市外局番(AREA CODE)は入れない。市外通話は、この外線用番号に続いて長距離用番号(Long Distance Number。通常は「1」)を入れて、その後に市外局番から電話番号を入力する。つまり、
- 市内通話:[外線番号]市内局番+加入者番号
- 市外通話:[外線番号][長距離番号]市外局番+市内局番+加入者番号
- フリーダイヤル:[外線番号]+1+800局番+加入者番号
となる(フリーダイヤルは[外線番号]に続いて「1」が必要になることに注意)。
市内通話かどうかは、日本と同じく同じ市外局番があるかどうかで判断しなければならない。米国では、1つの都市が複数の市外局番に分かれていることも多い。プロバイダの案内では、「○○州××市」となっていても、ホテルの市外局番が違えば、市外通話になってしまう。ホテルの電話番号は、部屋備え付けのメモ用紙や電話機自体に記載されているので、確認してからアクセス・ポイントを選択しよう。
なお、加入しているプロバイダのローミング・サービスが、GRICやiPassなどのローミング・サービス専門のプロバイダを使う場合、専用のダイヤル・ユーティリティを使うことになる。これは、アクセス・ポイントのデータベースとダイヤル機能を統合したもので、国や都市名、市外局番などを選択するだけで候補となるアクセス・ポイントを表示し、接続が可能になるというものだ。ただし、これもデータベースが最新でないと接続ができないことがある。出発直前にインターネットを使って、電話帳データベースを更新しておこう。この場合でも、目的地のアクセス・ポイント一覧ぐらいは印刷して持っていると安心できる。何せコンピュータのソフトウェアである、うまく動かないことやデータが消えるなんてことはいつでも起こるからだ。
GRICのダイヤル・ユーティリティ「GRICdial」 |
So-netなどが利用するローミング・プロバイダ「GRIC」が提供しているダイヤル・ユーティリティ。国や都市を指定すると、近所のアクセス・ポイントが一覧表示される。 |
つながらない場合のチェック・ポイント
いままで何回か米国に行った経験からすると一発でつながることはかなりまれである。原因はいくつかある。最も多いのは、ホテル内の電話交換機によって外線がかけられないようになっていることだ。米国のホテルの中には、クレジット・カードを見せるか、事前に決められた金額を支払うかして初めて外線が利用できるところが多い。正しい番号をダイヤルしてもつながらないのはこれが原因である。このような場合には、フロントに行って交渉するしかない。「Please Open telephone line(電話回線を使えるようにしてください)」といって部屋番号を告げれば、だいたいはクレジット・カードを見せろといわれて、確認の後、電話(外線)を使えるようにしてくれる。
外線が利用できるようになっているなら、あとは電話番号の指定方法などが間違っていることになる。例えば、市内通話なのに市外局番を入れていると電話がかからないこともある。このようなときには、一回手でダイヤルしてみて、本当につながるかどうかを確かめよう。何かアナウンスが聞こえたのなら、それは番号間違いである。何度もPCでダイヤルし直すよりも、手でダイヤルしてみて、正しい番号かどうかを確実に調べる方が、結局のところ効率的である。また、モデムのスピーカーをオンにしておくと状況が分かりやすい(これはWindows XPの場合、コントロール パネルにある[電話とモデムのオプション]−[モデム]タブを開いて、該当のモデムのプロパティを表示させて行う)。
ダイヤルしてつながった後にキャリア音がするなら、あとはノイズなどの影響か、もしくはID/パスワードの間違いである。海外ローミングでは、国内とは違う方法でIDを指定することが多く、例えばドメイン名を含んだメール・アドレスをログイン用IDとしているところがある。これは、ローミング専門のプロバイダを使ってのサービスであるために、プロバイダを判定できるようなIDが必要となるからである。海外ローミングをサポートしているプロバイダでは、そのための接続マニュアルや、現地のサポート電話番号などをWebページで公開しているはずなので、これらを出発前に印刷して持っていくといいだろう。
なお、GRICのダイヤル・ユーティリティでは、いくつかのアクセス・ポイントが表示されるが、これらの中にはGRICと地元のプロバイダが契約したものも含まれている。こうしたアクセス・ポイントでは、認証が正しく行えない場合がある。認証でエラーになる場合には、別のアクセス・ポイントを試してみると接続できることがある。UUNetやXO Communicationsのアクセス・ポイントの場合は、全国をカバーしているためか比較的認証でのエラーが少ないようだ。どこのアクセス・ポイントなのかは、アクセス・ポイントを選んで下にある[Detail]または[詳細]のボタンを押すと表示される。
GRICdialのアクセス・ポイント表示 | |||
GRICdialでアクセス・ポイントを選んで[詳細]を表示させたところ。これで接続先のアクセス・ポイントがどこに属しているかが分かる。ローカルなISPよりもUUNetやXO Communicationsといった全米を広くカバーしているプロバイダのアクセス・ポイントの方がつながりやすいようだ。 | |||
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接続が行えれば、あとは日本国内と同様に電子メールのやり取りや、Webのブラウズが行えるはずだ。ただ、アナログ・モデムで接続している場合、いくつかの注意すべきポイントがある。それについては、次ページから解説していこう。
INDEX | ||
[特集]海外出張で役立つインターネット接続術 | ||
1.出張前の機材準備 | ||
2.日本でのインターネット接続の準備 | ||
3.飛行機とホテルの賢い選択法 | ||
4. ホテルでインターネット接続 | ||
5. 電子メールを上手に使う | ||
6. インターネット接続の緊急手段 | ||
「System Insiderの特集」 |
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