元麻布春男の焦点
徐々に明らかになってきた次世代モバイルPCプラットフォーム
2. 実用化と仕様拡張が進むシリアルATA 元麻布春男 |
FSBの高速化に対応するワークステーション向けの新チップセット
すでにHyper-Threadingを採用しているサーバ/ワークステーション向けのプロセッサ「Intel Xeon」シリーズでは、デスクトップPC向けとは逆に、現行400MHzのFSBのクロック周波数が533MHz化されることが新機能となる。プロセッサとチップセットをつなぐFSBの仕様変更は、当然ながらチップセットの更新を伴う。
そこで、ワークステーション向けには開発コード名「Placer(プレーサー)」という新しいチップセットが投入される。また、Hyper-Threadingテクノロジ対応のPentium 4を用いるシングルプロセッサ構成のエントリ・ワークステーション向けとして、開発コード名「Granite Bay(グラナイト・ベイ)」と呼ばれるチップセットも提供される。Placer、Granite Bayともに、デュアル・チャネルのPC2100 DDR SDRAMメモリとAGP 8xをサポートするという点では共通だが、前者ではデュアルプロセッサ構成のサポートや、PCIブリッジやPCI-XブリッジのサポートといったI/O機能の強化が図られている。
Intel製サーバ向けチップセットが苦戦を強いられているワケ
一方、サーバ向けには現行のIntel E7500のFSB 533MHz対応版である開発コード名「Plumas 533(プラマス533)」が提供されることになっている。すでに実績のあるチップセットをベースにしているとはいえ、現行のIntel E7500自体、あまりサーバ・ベンダの採用例が多いとはいえない状況にある。そこで、失礼を承知でこの問題を、EPGの副社長であるアブジット・Y・タルウォーカー(Abhijit Y. Talwalkar)氏にぶつけてみた。
タルウォーカー氏によると、「Intel E7500の採用数が思うように増えていない最大の理由は、Intelにおけるサーバ向けチップセットの世代が断絶してしまったことにある」という。1990年代後半、Intelはサーバ向けチップセットの戦略を誤り、デスクトップPC向けチップセットを拡張する形でサーバ向けチップセットを作ろうとした。この誤りの結果、Intelのサーバ向けチップセット・ロードマップから丸々1世代が欠落してしまい、そこをサードパーティ(主にServerWorks)が埋めてしまった。当然、そのころのサーバ・ベンダは、ServerWorksなどのサードパーティ製チップセットを採用して、サーバ製品を開発していった。
サーバに限らず、マシンの設計では同じ会社のチップセットを継続して使う方が、動作確認などの面で何かと便利なことが多い。そのため、Intelがサーバ向けチップセットを復活させた現在でも、依然としてIntelの「純正品」ではなく、これまでの主要チップセット・ベンダだったServerWorksのチップセットがよく採用されており、そのシェアが高い状態にある。Intel E7500は、サーバ向けチップセットをデスクトップPC向けとは完全に独立して開発するように戦略を改めた最初の世代の製品なので、当初はどうしても苦戦が免れない、と述べた。
また、Intel E7500は機能的に複雑で、使いこなしが難しいのではないか、ターゲットとするデュアルプロセッサ構成のサーバに対して、高級すぎるのではないか、という質問もぶつけてみた。これに対してタルウォーカー氏は、現在デュアルプロセッサ構成のサーバの市場は最も急速に拡大しており、デュアルプロセッサ構成のサーバという市場それ自体が複数の市場セグメントを抱えるようになっている。Intel E7500がターゲットにしたのは、デュアルプロセッサ構成のサーバでもハイエンドの分野であり、そのターゲットに対してIntel E7500は最適なものだと考える、ということであった。
大きな進展はなかったItaniumプロセッサ・ファミリ
サーバ/ワークステーション用のプロセッサとしては、Itanium 2の次世代となる64bitプロセッサ「Madison(開発コード名:マジソン)」がオッテリーニ社長の基調講演でデモされた。しかしその内容は、Itanium2(開発コード名「McKinley」)のプロセッサ・モジュールをMadisonのモジュールで置き換えるというもので、Madisonの詳細は不明なままだ。Itaniumプロセッサ・ファミリに関しては、McKinleyのベンチマーク・スコアの優秀性をアピールすることに主眼が置かれていた。
実際の対応製品が見えてきたシリアルATA
さて、I/Oの分野で最も目立ったのは、いよいよ実用化が間近いシリアルATAだ。すでに秋葉原のPCショップなどでも関連機器の発売が始まっているが、IDFの展示会ではシリアルATAに対応したIntel純正マザーボードをそこかしこで見かけた(写真2、写真3)。Hyper-Threadingテクノロジ対応のPentium 4と同じタイミングで市場に投入されるものと思われる。
写真2 IntelのシリアルATA対応マザーボード「D845PEBT2」 (拡大写真:74Kbytes) |
これは、DDR-333に対応した未発表のIntel 845PEチップセットをベースにしたもので、Silicon Images製のシリアルATAホスト・コントローラを搭載し、シリアルATAによるRAID 0/1に対応する。このマザーボード自体は、IEEE 1394やマルチ・チャネルのサウンド出力(S/PDIFを含む)のサポートもある「ハイエンド・コンシューマ・ユーザー向け」の製品である。現在、これより1世代前のマザーボード「D845EBT」が、Micron PCなど一部のPCベンダ向けに出荷されているが、D845PEBT2もリテール製品として出荷されるかどうかは不明だ。 |
写真3 Silicon Image製のシリアルATAコントローラ |
これはD845PEBT2マザーボードに搭載されているもの。2ポートのシリアルATAホスト・インターフェイスをサポートする。2002年内にリリースされるこのマザーボードには、チップセット(ICH)内蔵のシリアルATAはまだ間に合わない。 |
もともとシリアルATAは、クライアントPCを主眼にしたものだが、現在シリアルATAの開発は、サーバ/ネットワーク・ストレージ用途も視野に入れた「シリアルATA II」に移行している(IntelのシリアルATA IIに関するニュース・リリース)。シリアルATA IIは2段階に分かれており、最初のフェイズ1では現在のシリアルATA 1.0にサーバ向けの機能がいくつか追加される。またフェイズ2ではデータ転送能力の引き上げが予定されている。フェイズ1に準拠した製品の普及は2003年半ばから、フェイズ2に準拠した製品の普及は2004年後半と、それぞれ見込まれている。シリアルATA IIフェイズ1で新たに加えられるのは、ホットプラグ・サポートの強化、管理機能の強化、コマンド・キューイングのサポート、といったところだ。コマンド・キューイングのサポートにより、RAIDコントローラを構成した際の性能が10〜15%改善されるという。
ラインアップが拡充されたRAIDコントローラ
このシリアルATA対応品を含むRAIDコントローラ4種を、Intelが発表した(Intelのストレージ関連のビルディング・ブロックに関するニュース・リリース)。いずれもPCIカード・タイプのもので、カード上にはメモリとIntel製のI/Oプロセッサ「IOP303」が搭載されている。各製品の概要は以下のとおりである。
- SRCS14L: シリアルATA対応の4チャネルRAIDコントローラ
- SRCU42L: Ultra320 SCSI対応の2チャネルRAIDコントローラ
- SRCZCR: マザーボード上のSCSIあるいはシリアルATAコントローラにRAID機能を付加するゼロ・チャネルRAIDコントローラ
- SRCFC22/M/C: 2Gbits/sのファイバ・チャネル(FC-AL2)に準拠した2チャネルRAIDコントローラ
SRCFC22/M/Cを除いた3機種はロー・プロファイルPCI仕様となっており、1Uや2Uといった高密度型のサーバに組み込めるようになっている。
なお、このRAIDコントローラを発表した事業部は前述のICGだが、同事業部はITバブルの崩壊で最も打撃を受けた通信業界を顧客に持つ。現在、サーバ以上に市場が成長しているストレージ分野の強化や、ローエンドのブレード・サーバの移管など、打撃を補う努力を必死に行っているようだ。
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このほか、I/O関連のトピックとしては、PCI ExpressやPCI-Xに関するものもあったが、これらについてはまた機会をあらためて紹介することにしたい。
関連リンク | |
シリアルATA IIに関するニュース・リリース | |
ストレージ関連のビルディング・ブロックに関するニュース・リリース |
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「System Insiderの連載」 |
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