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もうWebデザインしないなんていわないよ、絶対(2)

デザイナーは消費されるもんだぞ


ワンパク 宮城秀雄、吉森大介、野村政行
2009/8/17

 「スキルの相乗効果」

 その勤務先は映像関係の仕事も手掛ける会社だったので、当然Webだけではなく映像系の仕事も手伝うことになる。

 ミュージックビデオから企業用のVPと呼ばれるビデオ、小さなイベント用の映像なども制作した。

 規模の大きな撮影では、主な仕事は雑用なのだが、「Webデザイナー」がまともに撮影のことなど分かるわけもなく、体育会系の洗礼で常にずぶ濡れだった。

 それでも、徐々に慣れてゆき、必要な用語は身に付き、テープの扱いや編集機の操作や編集の進め方なども覚えることができた。先輩やクライアントへの気遣いも、厳しい叱咤とともに身になっていった。

 また、映像中に扱うグラフィックを手掛けることも増えていき、ビデオ中に出てくる3DCGを作ったこともあった。イメージと違うと「殺すぞ」といわれることもあったけれど徐々に信頼されるようになっていった。

 最近でこそWebで映像は当たり前だが、当時は特に直接結び付くようなことはなかった。それでも、自分の価値を上げるために文句をいいながらも映像スキルの習熟に邁進した。

 そうして、たくさんの種類の仕事に加え、期間内にどうにか必ず完成させるということを覚えていった。

 仕事であれば当然だと思うかもしれないが、頼りにされてチームプレーがうまくいくかどうかはこの一点にかかっていると思う。誰が終わるかどうか不安なデザイナーに仕事を頼むだろうか?

 期待を裏切らないことで、初めて良い方向へのサイクルが回り始めるのだ。

 それから「Webデザイナー」は、関係ないような知識でも生かす機会がいくらでもやって来る。

 たくさんの知識と経験を基に、さまざまな視点で考えることで、新たなモノを作り出せる、とても創造的な職業だと思っている。ちょっとぐらい自分の思う方向性じゃなくたってやっておくべきだと思う。僕も前回語ったエクセルの作業はいまでもとても役に立っているのだ。

スキルの相乗効果の相関図

 「始まる好循環」

 前項のように仕事が進むようになり、デザイナーとして一通りの仕事ができるようになったと思っていたころ、会社で配置換えがあり前述のディレクターとは別の方と仕事をするようになった。

 それまでは、直接クライアントと話をすることは少なく、ディレクターを通して制作を行っていたが、新しくパートナーになったディレクターは、まあ良い意味でも悪い意味でも自由にやらせてくれた。

 自由ゆえに、クライアントの意思は自分でくみ取らなければならないし、下手なデザインを出そうものなら、ダイレクトに酷評されるのだ。そして、デザインは自分でしっかりクライアントに説明しなければならない。

 それまでは、いわれるままデザインをし、ディレクターに文句をいうだけだったが、自分のデザインに責任を持たなければならないのだ。

 そして、いよいよ初めてのクライアントへのプレゼン。

 アパレル系の会社で、新しい事とインパクトを求めていた。2つの案を持って行き、そのうちの1つにOKが出た。しかし、それは当時まだ珍しいFlashで動画による表現を使ったものだった。

 自らデザインしたものの、自分自身で撮影を仕切ったことはなく、さらに予算の都合でカメラも自分で回さなければならなかった。

 撮影方法、オーサリング方法など、十分に吟味してデザインを作ったはずだったが、やはり実際にはピッコロ大魔王に戦いを挑む天津飯のように脇汗がびっしょりだった。

 当時持てる限りの力を注ぎ込み、なんとかサイトを完成させオープンすると、クライアントからも称賛の声をいただき、社内でも一定の評価をもらうことができた。

 社内で評価を得ると、今度はなんぞおもしろいアイデアはないかと相談されるようになり、旅行会社のFlashコンテンツやPIPなどの、骨は折れるがやりがいのある仕事にアサインをされることが多くなった。

 こうなってくると、期待を裏切ってはならないというプレッシャーが、現状維持では許してくれないのだ。現状維持では周りから見ると、相対的に退化しているのと同じことなのだ。

 そして、高評価が前向きな姿勢をサポートし、さらなる周りからの期待につながる。いうなれば仕事とスキルアップの好循環が生まれてくる。Webという仕事が楽しくなる瞬間だ。

仕事とスキルアップの好循環の図

 「OUTRO」

 昔の人はよくいったものです。

「おごる平家は久しからず」もしくは「粋がるヤムチャと栽培マン」

 今回は、個人でのスキルアップの手法と心構えによって、前向きに進んでいく様子をお話しさせていただきましたが、当然前向きに進むことばかりではないのです。

 失敗だってあるし、元々低い鼻がへし折られることだってあるのです! でも、その話はまた次回……。

2/2 次回もお楽しみに

 INDEX
もうWebデザインしないなんていわないよ、絶対(2)
デザイナーは消費されるもんだぞ
  Page1
「イントロダクション」
「デザイナーは消費されるもの」
Page2
「スキルの相乗効果」
「始まる好循環」
「OUTRO」

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