業務用モバイルRIA開発の“課題”とは?
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一方で、モバイルでのユーザー分析をするには業務用RIA開発におけるモバイルならではの“課題”を考える必要もある。まずは、業務用途での携帯端末の利用シーンからだ。
□ 業務における携帯端末の利用シーン
受発注や入出庫、オーダリングなどで従来利用されているHTや、メールやスケジュールなどの用途は別として、携帯端末は以下のような営業支援や顧客管理のシーンで使われる。
- 機器に対する保安、点検での入力
- 企業内システムの情報閲覧
- 外部勤務の勤怠管理
- 電子決済、認証
- 運行管理
- トレーサビリティ
- モバイル印刷(契約書、注文書、作業報告書……)
それ以外にもさまざまな業務で利用が可能である。
□ 携帯端末はスペックが低い
モバイルならではの“課題”を考えるうえで、考慮すべきはスペックだ。デスクトップPCと比べてモバイルはスペックが低いため、端末側での処理は考慮が必要だ。XMLを解析してメモリ展開するなどは、データ量によっては耐え切れない。そのため、サーバ側データがWebサービス化されていても、デスクトップPCと同様には利用できない。モバイル側でCPU負荷が掛かるような処理も禁物である。
□ 携帯端末の通信環境
回線が細かったり、つながらない場合があったりしても業務が中断することは許されない。プアな回線でもさくさく動作するためには、通信量を減らす仕組みが製品側で必要であるし、アプリケーションとサーバ側でのやりとりも考慮が必要だ。アプリケーション機能の用途に合わせて適切な通信データで送受信しなければいけない。
また、つながらない場合はいかに速く通信が遮断されているかをアプリケーション側にフィードバックし、ローカル動作で対応できなければいけない。この際には、ローカルファイルに対するセキュリティ機能も必要となる。
端末やプラットフォームの進化だけでなく、LTE(Long Term Evolution)やHSPA+(HSPA(High Speed Packet Access) Evolved)など通信技術も進化してゆく。これはデータ・トラフィック改善でもあるからシステム構築にも良い影響を与えるだろう。
なお、2008年にインテルが、「Intel Developer Forum Shanghai 2008」においてモバイルデバイスでの「Wireless I/O」構想を発表していたが、モバイルPCや「Mobile Companion」のようなデバイスのみでなく「ワイヤレス」の技術は期待するものがあり、モバイルWiMaxも日本で試験運用が始まっている。
□ モバイルアプリアプリケーションの開発生産性
アプリケーション開発時には、最低限の台数しかモバイル端末(実機)を調達できないことも多いだろう。実機での開発(“検証”ではない)ではなく、デスクトップPCにて開発やデバッグが可能なことが重要だ。
□ 携帯端末と外部デバイス
バーコードリーダやサーマル(感熱)プリンタ、そのほかモバイルプリンタなど、その際の制御(ドライバ)はデバイスメーカー個別になることが多い。RIAベンダやデバイスメーカーからの提供と品質保証がされていることが開発側にとって必要である。
なお、外部デバイスに関しては新たな利用アイデアが事例増加によって出てくるだろう。写真を撮り、その上にタッチペンで文字を書くなどのAR(拡張現実)のような技術も利用されるかもしれない。
モバイルは多種だからこそ人間に合わせた進化が可能
繰り返すが、やはり一番大切なのは「人間中心」であることだ。前述のコラムは、RIA技術提供者・アプリケーション開発者にとって、まさに反面教師になる話である。
モバイルは多種の端末がある。これらの選択もコストなどそのほかのニーズを無視し「ユーザビリティ」の観点だけで考えれば、すべて「ユーザープロファイル」で決定すればよい。デスクトップPCと異なり「端末」は一律でないから、人間に合わせた進化がかえって可能かもしれない。
なお、RIA技術に対して「一番はこれだ」とはいえない。ただいえるのは、業務システムの稼働期間は長く、技術の進歩はそれより速い。その中で利用企業として重要なのは「業務で求めた機能が必要な期間だけ安定して確実に動作し、業務に支障を与えないこと」である。それには、その責任を持つ提供企業が必要だ。
コンピュータシステムにおいては、SaaSやクラウド・コンピューティングといった、端末よりもWebサービスを重視するモデルが今後広まっていくとされている。
しかし、それはサーバ側を「保証」している企業があるから成り立つモデルであり、「端末」においても「保証」は重要だ。環境対応や品質保証、開発に対するサポート、恒久的な保守など、利用企業が「安心」できる技術を選ぶことが何より重要だ。
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プロフィール:永井 一美(ナガイ カズミ) アクシスソフトにて、RIA/リッチクライアント製品である「Biz/Browser」、プリント製品である「PrintStream CORE」の開発、販売に入社当初より深くかかわり、大手企業への導入を推進してきた。2006年より代表取締役社長に就任。「エンドユーザーの生産性を高めることが企業の生産性向上に寄与する」と、フロントに対する思いは強い。 |
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特集:新時代の業務用モバイルRIAを考える(後篇) UIとユーザビリティから考える小さい画面でのRIA |
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Page2 コラム 「老齢社会となる日本の課題とUI」 モバイルでのRIAとUI コラム 「Androidがもたらすオープン性は日本をどう変える?」 |
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